1)プロローグ
9月11日の総選挙へ向けて、公示前だが各党の選挙戦が本格化している。自民党分裂、新党の旗揚げ、“刺客”候補者の擁立など、話題に事欠かない戦いが続いている。 今のところ、郵政民営化の是非を前面に打ち出した「小泉自民党」が、選挙戦を有利に推し進めているようだ。
各マスコミの世論調査では小泉内閣の支持率が急上昇し、自民党の支持率も高まって、このままいけば自民党が圧勝(?)するかのような勢いを見せている。 事実上、“郵政”一本に絞った政府・自民党の戦略が功を奏しているのか、マスコミも“郵政”に踊らされている感じだ。
“踊る選挙戦”の序盤は、自民党優勢のうちに推移している。 これに対して、自民党分裂で漁夫の利を得るのかと見られていた民主党は、「郵政解散」のあおりを食う形で影が薄くなり、苦戦を強いられているような気がしてならない。
選挙戦も中盤に差しかかって、選挙の争点は郵政だけではない、年金も景気も雇用も福祉もその他いろいろあるのだということが、ようやくマスコミで取り上げられるようになった。 しかし、前代未聞の解散劇(8月8日の変)のキーワードが“郵政”だっただけに、それを大上段に振りかざす「小泉自民党」の優勢が続いていると見てよい。
2)アメリカからも馬鹿にされる日本外交
そこで、総選挙をより楽しく、面白くしたいという筆者としては、弱者の方を応援して強者を懲らしめたいという思いに駆られるのである。(「弱きを助け、強きを挫く」というマスコミ出身の“性癖”が私に残っており、選挙となるとウズウズしてくるのでお許し願いたい。)
このため、ほとんど争点にもなっていない問題を、あえて取り上げることにした。それは外交問題である。 小泉政権のアキレス腱は“外交”かもしれない。なぜなら「小泉外交」は、今やほとんど手詰まり状態で、明るい兆しがまったく見えてこないのだ。そして、まったく期待できないのである。
例えば、イラク問題・・・アメリカのブッシュ政権からの要請で自衛隊をサマワに派遣したものの、イラク情勢は混沌としており、アメリカ自身が手を焼いている現状だ。 アメリカ兵の戦死者は1600人を超えたといわれ、米国内からも撤兵を求める声が上がっている。
アメリカに何でも追随するのが“ポチ(犬)外交”と言われるが、イギリスのブレア首相がブッシュのポチと皮肉られているのなら、小泉総理も同じように、いやブレア以上にブッシュのポチかもしれない。アメリカの「お許し」がない限り、自衛隊のイラク撤収をまったく考えていない姿勢である。
ところが、これほどまでにアメリカに追随しているのに、国連安保理常任理事国入りの問題ではどうか。 私はそれほど関心はないが、日本があれほど熱心に常任理事国入りに動いたというのに、頼みの綱のアメリカは、ボルトン国連大使が中国側と話し合って、日本などの常任理事国入りを阻止することで一致したというのだ。
これが、友好国・同盟国である日本に対する仕打ちなのか! アメリカは今や、アジアでは日本より中国の方を重視するようになってきたらしい。年々その傾向が強まっているようだ。 日本国民の声よりも、アメリカの意思を重んじてきた小泉総理よ、これでは何のための“ポチ外交”なのか! 少しは悔しいとは思わないのか。
3)ふがいない対北朝鮮外交
もう一つ北朝鮮に対する外交でも、日本の主権を侵した「拉致犯罪」について、小泉政権は何ら有効な手立てを講じていない。 せっかく国会で制裁法案が可決・成立したというのに、臆病風に吹かれたのか、北朝鮮に対して断固たる制裁措置に踏み切れないでいる。
この影響もあると考えるが、例の「6カ国協議」では、拉致問題を取り上げる日本だけが“のけ者”扱いされている感じだ。 北朝鮮が核兵器を保有すれば「日本だって核武装をするぞっ!」ぐらいのことが、なぜ言えないのか。たとえ“演技”や“脅し”でも良いから、そのくらいの姿勢を見せてもらいたいものだ。(戦前の日本は少しも良いとは思わないが、当時の日本だったらそのくらいのこと、いやそれ以上のことを正々堂々とやってのけたはずだ。)
小泉総理・総裁は、郵政民営化法案に反対した自民党前議員に対しては、総選挙の公認をしないとか、刺客候補をぶつけるとか、意固地(いこじ)なほど強硬な姿勢を貫くくせに、ことアメリカや北朝鮮が相手になると、“ポチ”になったり卑屈な態度に終始する。
要するに「弱い者には強く、強い者には弱い」という、典型的な“弱い者いじめ”がやることだ。彼はそういう人間には見えないが、やっていることがそうなのだから、残念ながらそう思わざるを得ない。 私はこういうタイプの人間が大嫌いである。少しは「弱きを助け、強きを挫く」ぐらいの姿勢を示したらどうか。
4)“踊らされる”マスコミに苦言
ここで、今回の解散・総選挙と、マスコミの対応について一言触れたい。 これまでにも言ってきたが、参議院で郵政民営化法案が否決されたから、衆議院を解散するとは、まったく理不尽なことである。まったく道理に合わない。しかも、衆議院では法案を可決していたのだ!! こんな馬鹿なことがあるだろうか。本来なら、参議院の方が“解散”されて然るべきである。
この驚くべき“矛盾”について、新聞やテレビはどういう論評をしているのか? 問題視していないのか? 私はもちろん、全ての新聞・テレビを読んだり見たりしているわけではないが、ごく一部の社説等で取り上げた程度ではなかろうか。
これが日本のマスコミの実態なのか・・・情けないのにも程がある。こんなマスコミならもう信用しない方が良い。 失礼だが、インターネット上では諸々のサイトで、今回の解散の問題点などについて、突っ込んだやり取りや究明が盛んに行なわれている。今やインターネットの世界の方が、マスコミよりグレードが高いと判断する。
マスコミが日々の出来事に追いまくられて、本質的な問題に触れる「時間と余裕」が少ないことは分かる。(私自身もマスコミ出身で、選挙報道を“イヤ”と言うほどやってきたからよく分かる。) しかし、もし今でもマスコミが「社会の木鐸(ぼくたく)」を自負するなら、前例のない今回の解散の問題点を、なぜ検証しようとしないのか。
日々の出来事を読者や視聴者に伝えるのはマスコミの使命だが、それだけに“踊らされて”いるようでは「社会の木鐸」ではない。 今回の解散が憲法上どのような問題点があり、どのような課題をわれわれに突き付けたか徹底的に究明すべきである。 そうでなければ、マスコミは“怠慢”の謗(そし)りを免れないだろう。
5)馬鹿の一つ覚えの“郵政”
「バカの壁」(養老孟司氏著・新潮新書)という本に「結局われわれは、自分の脳に入ることしか理解できない」という文がある。 小泉総理も以前、この本を読んで大いに感銘を受けたらしく、幾つかの席で披露していたことを新聞で読んだことがある。
今回の解散・総選挙で自民党は、初めから「郵政、郵政、郵政!」と“馬鹿の一つ覚え”のように言っている。それしか脳に入っていないかのようだ。 申し訳ないが、不勉強な私などは少し前まで、自分の「年金」問題と愚息の「雇用(就職)」問題しか頭に入っていなかった。
ところが、国会が郵政民営化法案で紛糾したので、遅ればせながら「郵政」についても少しは頭に入れるようになった。 しかし、「年金」や「雇用」「景気」「外交・防衛」などの課題に比べれば、「郵政」なんぞは、私にとってどうでも良いようなテーマである。(少額の郵便貯金はあるが、あまり関係ないようだ。)
要するに、国会やマスコミが大騒ぎするので、私の“バカの壁”の中にもようやく「郵政」が侵入してきた程度である。 国政選挙は各党のあらゆる政策を吟味し、投票しなければならない。馬鹿の一つ覚えのような「郵政」だけで決まるものではない。
ただし、先に述べたように、目先のことに“踊らされる”マスコミに踊らされると、“バカの壁”の中は「郵政」一色になってしまうだろう。国民はその点に十分、注意しなければならないのではないか。 盆踊りも良いし、テレビの“踊る解散・総選挙”も面白いが、踊らされてばかりいるのが“能”ではない。(2005年8月24日)