1) 戦後60年目に当たる今年(2005年)は、日本の人口が減少した節目の年ともなった。予測を上回る少子化の進行だが、人口が減るというのは、要するに日本が「老大国」になっていくということだろう。「経済大国」であっても「老大国」へと着実に歩を進めているのだ。高齢化も一段と進んでいる。
人口の減少にはなかなか歯止めが掛かりそうもないので、少子化対策がいろいろ叫ばれているが、それほど深刻な事なのだろうか。 確かに、年金制度の問題などと絡んで警鐘を鳴らすのは分かるが、人口が10万〜20万、いや100万、200万減るからといって、日本が危機を迎えると断定することはできないだろう。
要は日本社会に活力があるかどうかということで、私は以前にも書いたが、「老大国」から「老衰国」に転落しないように努めることが肝心だと思う。 その点では、私は楽観論者かもしれないが、日本民族はいざという時、“活性化”を図ることでは伝統的に優れていると思っている。
かつて、14世紀のヨーロッパではペスト(黒死病)が猛威をふるい、総人口の4分の1以上に当たる2500万人余りが死亡したというが、その後、大打撃を受けたイタリアを中心に見事な復興を遂げ、輝かしい“ルネサンス”の花を咲かせたことは有名である。
それに比べれば、多少の人口減などは物の数ではない。 少子化などはいずれ、ある時点で歯止めが掛かるだろうし、日本人の英明さと知恵と勇気で、少子化に絡む難問などは必ず克服できると信じている。
2) 個人的にはこの一年、私は充実していた。2年半途絶えていた小説「青春流転」の第二部を書き上げたし、韓国やイタリアへも旅行することができた。 31年ぶりの韓国は見違えるように発展し、活気に満ちていた。国内問題はいろいろあるだろうし、日韓関係もギクシャクしている面があるが、“チャングムの国”の将来性は豊かだと思っている。
これは今年、韓国のテレビドラマ「チャングムの誓い」(NHK放送)が非常に面白かったのでそう表現したが、今の韓国にも多くの“チャングム”が存在して、人々に活力や勇気を与えているのではなかろうか。
一方、4月に起きた中国の「反日デモ」には驚いた。日本でも反中国感情が高まり、日中関係はあまり良くなっていない。 私も反中国的、反中共(中国共産党)的なものを書いたが、中国との関係は極めて重要である。なんとしても、友好親善の道を探らなければならない。
それと直接関係はないが、私は今年、靖国神社の問題をしつこく書いた。靖国を『バカの壁』とさえ言った。それは、宗教と政治はまったく別次元の問題だからである。 戦前ならいざ知らず、戦後60年たった21世紀の今日、宗教と政治を混同したまま考える日本人の意識に苛立ちを覚える。
靖国だけが国家存立の精神的基盤なのか? 戦没者への慰霊が「一宗教法人」に限定されるのか? とんでもない! 冗談ではない! 私は軍備増強主義者だし(日本はアジア第一の防衛力を持つべきだと考える)、憲法9条の改正にも大賛成であるが、戦前の「軍国主義・日本」の象徴である靖国は、“忌まわしい過去”の遺物だと思っている。
この靖国問題は来年、さらに大きな論議を呼ぶだろう。中国や韓国からの“内政干渉”は断固として撥ね付けながら、日本人自らの意識で、靖国問題や、新たな「国立戦没者追悼施設」のあり方を考えるべきだろう。
3) 今年も事件や事故、社会問題が数多く発生したが、年末にかけて大きな関心を集めている「耐震強度偽装問題」はなんとも情けない。 日本人の精神が弛(たる)んできたのだろうか。多分そうだろう。これでは「老大国」から「老衰国」に転落するしかない。
ローマ帝国がそうだったが、大国は外部からの侵略で滅びるよりも、内部の腐敗から崩壊する方がずっと多い。日本もそうなろうとしているのか。 この偽装問題は共同違反であり複合犯罪であるから、非常に根が深いだろう。だから余計に厄介である。社会の病巣みたいなものだ。
日本も昔のローマ帝国と同じように、世界に冠たる「建築技術」を持っているはずなのに、業界の腐敗からその信頼は今や地に堕ちようとしている。 信頼の崩壊は建物の崩壊につながる。恐るべきことだ。少子化の問題どころではない。建築偽装犯罪は徹底的に追及していくべきだ。
ところで、この問題では野党の民主党が国会で良く追及しているが、総選挙で大勝した自民党はどこか“他人事”のような印象を受ける。 自民党は建築業界と最も密接な関係にあるのは分かるが、業界の「構造汚職」であるこの問題を軽視するなら、いずれ国民から痛烈な“しっぺ返し”を食うだろう。
自民党は今年、総選挙で勝ち過ぎたのだ。一方、民主党は選挙で大敗した上に、汚職議員を次々に出すなど全く良い所がない。これでは、政治への期待も関心も薄らぎそうで心もとない。 しかし、日本の将来を切り開いていくのはわれわれ国民だ。一人一人が“チャングム”のような熱意と勇気と努力を失わなければ、「老大国・日本」の前途は明るいものと確信する。(2005年12月28日)