最近、皇室典範を改正して、「女性の天皇も即位できるようにすべきである」という議論が高まっている。いわゆる『女帝』論議である。 これは皇室に、昭和40年(1965年)の秋篠宮誕生以降、男子が生まれていないことが大きな背景となっている。その間、女子は9人お生まれになった。 実に37年間、皇室には女子のみお生まれになって、男子誕生にはご縁がないのである。
女性天皇の是非についての議論は、古くは明治15年(1882年)に盛んに行われた。これは明治憲法(大日本帝国憲法)制定を前に、皇室制度をどうするかということで議論されたが、自由民権論者を中心に、女性天皇を認めるべきだという意見が、約半数に達するほど強く出たのである。(鈴木正幸氏著「皇室制度」岩波新書を参照)
明治時代だというのに、意外なほど自由で活発な議論が展開されたのである。しかし、当時の男尊女卑の精神風土が、結局は「女性天皇」を認めないことに大きく作用し、「皇位は、男系の男子が継承する」ことに決まった。勿論、背景には「富国強兵」という、明治時代の強い信念が働いていたものと思う。
ところが戦後(第2次大戦後)、新憲法が制定されて、男女同権が確立されたというのに、女性天皇の道は閉ざされた。当然、国会でも議論されたが、結局は戦前と同じように、男系の男子が皇位を継承することで決着した。
これは明らかに、男女同権、男女平等を謳った現行憲法の精神に反するもので、その点から先ず、女性天皇を認めるべきだと主張したい。 最近の世論調査でも、大多数の人達が女性天皇の即位に賛成している。ヨーロッパの各王室でも、現に女王は存在するし、何の違和感もない状況となっている。
さて、もっと具体的に、皇室典範の問題点に切り込んでいってみよう。 現行の皇室典範では、摂政は認めるが、天皇の退位や譲位の規定がない。戦後、天皇が自ら神格を否定し「人間宣言」を行われたというのに、これはあまりに非人間的ではないのか。 いかに特別な地位におられようとも、「人間宣言」をされた以上、天皇にも基本的人権はあるはずである。
以前、雅子妃殿下が流産された時に、皇太子殿下は「プライバシー」の話を持ち出された。テレビなどマスコミが異常に騒ぐので、とても放ってはおけないご心境だったのだろう。 天皇を始め皇室にも当然、基本的人権やプライバシーの権利はあるはずである。 従って、天皇の自発的な退位や譲位が認められてしかるべきだと思う。
次に、もっと前向きな話をしていこう。 将来「女性天皇」の存在が認められたと仮定して、今上天皇の第一子が女子で、第二子が男子の場合はどうなるか、ということである。私は、その場合は第二子でも男子が皇位を継承すべきだと思う。 ヨーロッパでは、男女に関係なく第一子が王位を継ぐ国と、長幼に関係なく男子がいれば、その子が後を継ぐ国の二つに分かれている。
男女同権を徹底させるならば、男女に関係なく第一子が皇位を継ぐべきだろう。下に弟が何人いても、第一子の女子が後を継ぐことになる。 しかし、それで果たして良いだろうか。そこが、議論の分かれる所である。
これはよく言われることであるが、歴史上、日本には8名(10代)の女性天皇がいたが、1名を除き7名は、いわば「中継ぎ」的存在であった。 しかるべき男性の天皇が即位するまでの間の、「中継ぎ」という意味である。 本来、後を継ぐべき男子があまりにも幼少であったり、皇位をめぐる政争を一時的に回避するために、即位したケースが多い。
どうしても女性天皇を渇望する人は別として、歴史を参考にして考えれば、長幼に関係なく男子がいれば、その子が皇位継承者になるのが自然であろう。 但し、今上天皇に女子しかお生まれにならない場合は、その第一子が後を継いで当然だと思う。
むしろ問題は、女性天皇が可能となった場合、その天皇の御夫君をどうするかという方に関心が移るだろう。 今上陛下も皇太子殿下も、民間から皇后陛下、妃殿下をお迎えになったが、それから言えば、女性天皇も民間から御夫君をお迎えになっても、なんの支障もないだろう。 しかし、宮内庁の体質から見れば当然、旧宮家や旧華族など名門から御夫君を迎えたいと思うに違いない。 それはそれとして、素晴らしい男性が女性天皇の御夫君になられることを、願わずにはいられない。(2002年1月31日)