1) 孫はアイドルであり、スターであり、太陽だ。 孫娘(2歳)が時たま家にやって来ると、家の雰囲気が一挙に変わってしまう。私と妻はそれぞれ「ジイジ」「バアバ」と呼ばれ、孫が生活の完全な中心となってしまう。 全てが孫を中心に展開するようになるのだ。 まさに、孫は太陽である。
ところで、母親である私の娘が、この“アイドル”の世話をしているのを見ていると、つくづく大変なんだなあ、と思ってしまう。 とにかく、幼児の子育ては面倒が多い。 あちらこちらに歩き回ったり、ふとした事で泣きわめいたり、なんにでも手を出したりと、休まることがない。

どんな幼児でもそうなのだろうが、母親はいつも注意をしていないと、とんでもない事をしでかすことになるのだ。 これは当たり前のことだろうが、幼児を持つ母親は、こんなにも大変なものかと思ってしまう。
そう感じてしまうのは、自分が年を取ってしまったのと、いつも「ゆとり」を持って孫を見ているからかもしれない。いわば、第三者的に娘の育児の模様を見ているから、余計にそう感じるのだろう。
自分達も、つまり妻と私も、かつては3人の子育てをした筈なのだが、そんなことは、もうほとんど忘れている。断片的に記憶に残っているだけだ。 特に私などは、仕事や飲酒で毎晩のように遅く帰宅していたので、妻の子育てがどんなに大変だったのか、ほとんど記憶に残っていない。
2) 現代風に言えば、私は「父親」としては失格だったということだろう。 勿論、休日には子供達を連れて、遊園地や公園などに行ったことは記憶しているが、子育てをしたという思い出はほとんどない。 育児は全部、妻に任せていたようだ。
だから、正直言って、子育ての大変さがよく分かったのは、娘の育児の模様を見ている昨今のことだ。 そのことを妻に言うと、「あなたは何もしなかったわね」と、憎たらしい返事がかえって来た。 それでも自分は、2〜3回は赤ちゃんのオムツを替えてやったよ、と反論するのが精一杯である。
今では、父親も子育てに参加するのは、当然のことと認識されている。 父親にも育児休暇が認められている時代だ。私の若い頃には、勿論そんな休暇などはなかった。 孫のパパ(娘婿)も、私とは違ってよく育児をしているようだ。二人でつくった子供なのだから、当然なのかもしれない。 しかし、子育ての実績がない私は、今の若い父親達に対して、「育児もしっかりやったら」などと言える資格はないだろう。
3) 最近、マスコミでよく取り上げられるのが、赤ちゃんや幼児への虐待行為である。若い夫婦の虐待事件が増えている。 孫はとっても可愛いのだが、娘の子育てを見ていると、前述したように、本当に大変だと改めて思ってしまう。
もし私が、今若い父親だったら、立派に子育てが出来るだろうか、といぶかってしまう。 自分なりになんとかやっていけると思うが、それでも気の短い私だから、ひょっとするとわが子に暴力を振るうことがあるかもしれない。子育てに関して、完全なる自信はないようだ。
例えば、赤ちゃんの夜泣きはひどいものだ。 若い夫婦はまったく寝不足になってしまう。それは私にも経験がある。 今の若い人達は、大いなる個人主義の中で育ってきているから、どうしても自己中心的になって、気に食わないことがあるとキレやすくなっているのかもしれない。 そうしたことが、幼児虐待につながるのだろう。
余談になって恐縮だが、娘と孫と三人で同じ部屋で寝ていると、よく孫が夜泣きをする。 私も目を覚ますが、孫の夜泣きは全然気にならない。いつ泣き止むのかなあ、と思っているだけである。孫の可愛い足で蹴られても、嬉しくなるだけである。 しかし、若いパパやママは、翌朝の出勤や家事があるから大変だろう。時にはいら立つことがあっても、おかしくはない。
4) 育児の苦労を思うと、子供は少なくていいと考えてしまうのではないか。 子育ての苦労だけでなく、親の経済的負担は大変なものがある。テレビで最近、よく「大家族スペシャル」という番組を放送しているが、あれを見ていると、実に大変だなと、多くの人達が思うのではないか。
私が子供の頃は、7人家族や8人家族は当たり前であった。貧乏していても平気という、社会的通念みたいなものがあった。 しかし、今の時代はまったく違ってしまった。生活レベルが、昔に比べると格段に向上してしまった。 これは良いことなのだろうが、反面、極めて“ぜい沢”ということである。
このぜい沢な環境の中で、子供達を育てるということは、昔に比べると並み大抵のことではない。 子供が一人ならいざ知らず、三人、四人となってくると、経済的に相当苦しくなってくる。 だから「少子化」に歯止めがかからないのだろう。そうかと言って、生活レベルを昔の所にまで落とすわけにはいかない。
孫を見ていると、ジイジ、バアバにとっては可愛いのだが、ついつい「少子化」や「幼児虐待」のことまで考えてしまう。 余計なことかもしれないが、これが当世の『業』と言うのだろうか。 いずれにしろ、ジイジやバアバは、若い夫婦の後方支援部隊として、あまり出過ぎないように気を使いながら、孫を見ていかなければならないだろう。 (2002年3月12日)