まず私の経験談からお話しましょう。 私はフジテレビという会社の報道局に28年以上在籍しましたが、その内10数年は、いわゆる「政治部」の記者をやっていました。
従って、首相官邸や自民党、野党、外務省、旧大蔵省などの記者クラブを拠点にして、国会その他に随分多く取材をした経験があります。 そうした中で常々感じていたことは、「一体、参議院は本当に必要なのだろうか」ということでした。
つまり、大部分の法案がまず衆議院で審議され、可決通過すると参議院に送付されます。そして、参議院の各委員会で衆議院とほとんど同じような審議が繰り返されるわけです。要するにほとんどが「二番煎じ」というわけです。
こうなると、絶えずニュースを追いかけている報道マンとしては、面白いわけがなく、又ほとんど同じことの繰り返しだと、「一体、参議院は必要なのか」と感じざるをえなくなるのです。 「二番煎じ」だとニュースにはなりにくいし、余程の重要法案でないと、ニュース番組に取り上げられてくれません。せいぜい他のニュースが少ない時の、穴埋め原稿になるくらいです。
もちろん、参議院先議の法案もあります。こういう時は、参議院の取材も張り切って行えるわけですが、参議院先議というのは、それほど多くはありません。 ほとんどの場合、参議院での審議状況が注目されるのは、国会の会期末になって法案が可決成立するのか、審議未了で廃案になるのか、それとも継続審議になるのかといった時です。
こういう時だけは緊迫してきて、取材、報道の生き甲斐を感じますが、法案の処理については、ほとんどが各党の国会対策委員会の折衝に委ねられ、そちらの方が取材の大きなウェートを占めるわけです。 そういう時点になると、参議院の審議自体はほとんど顧みられず、国会対策委員会の折衝の行方の方がニュースになります。 参議院の審議状況がニュースになるのは、例えば与党による「強行採決」といった、異例の時だけに限られてしまいます。
従って、記者として常々国会を取材してきた私としては、「一体、参議院は必要なのか」と考えてしまうわけです。 この点の疑問について、私はある政党の人に「このままでは、参議院はもう要らないのではないか」と質したところ、その人は「うーむ」と唸って返事をしてくれませんでした。
それから20数年がたった今日においても、私の疑問は消えません。ますます政党化が進む参議院は、戦後発足した当時の面影はほとんどなくなり、「良識の府」と言われていたのが、「衆議院のカーボンコピー」と言われるようになって、久しいものがあります。
勿論、参議院議員をはじめ関係者は大いに努力、改善をしているでしょうが、「良識の府」というイメージが、どれほど国民の目に写っているか疑問です。むしろ「こんな状態なら、参議院はもう必要ない」という声の方が強まっているようです。
行政改革が叫ばれている折から、もし近い将来の憲法改正があるとするなら、参議院の廃止、もしくは改組、役割の変更といったことが、必ず検討課題になりえると思います。もし仮に参議院が廃止されたら、莫大な経費が節減されることになります。国民が、参議院を無用だと思って廃止したら、税金の大幅な節約だけでなく、21世紀最初の大きな「政治改革」となるでしょう。
ところで、近年の憲法改正に関する民間の動きを見ていると、いくつか「参議院の廃止」を提唱しているものがあります。 例えば「日本を守る国民会議」が、1994年4月に発表した「日本国新憲法制定宣言」(発売元・徳間書店)では、「今のままの参議院の制度ならば、それを必要とする理由は乏しいとして一院制を採用すべきである」としています。
要するに参議院を廃止して、衆議院だけにすべきだということです。その理由として、「1、国民の総意は一つであるはずだから、国民の意思を代表する機関も一つであって構わない。 2、審議を迅速ならしめ、審議のための経費を節約する必要がある。 3、貴族制度がなく、連邦国家でもない我が国では、二院制の積極的な存在理由はない」としています。
また、西部邁氏もその著「私の憲法論 日本国憲法改正試案」(徳間書店発行)で、「現行参議院が日本の政治にとって無用の長物からさらに有害な障害物になりつつある」(190ページ)と述べ、参議院の廃止を提唱しています。 これらの著作にはもっともな理由が多く、私はおおむねこうした考えに賛成ですが、皆さんはどのように受けとめますか?
「史録 日本国憲法」(児島襄氏著 文春文庫)では、GHQ(連合軍総指令部)の民政局が日本国憲法の草案を作成した時点で、国会について「マッカ−サ−元帥は、日本の過去の歴史を回顧してみると、とくに二院制が有効だとは思えない、という意見をもらしていた。 たしかに、一院制のほうが簡単であるし、ケーディス大佐が強調する立法府優位主義を採用するならば、ますます一院制が、好ましいはずである。」と書かれています。 しかし、日本側との折衝で最終的に日本側の要求を受け入れ、二院制の案文になったということです。
こうした憲法制定時の歴史を見てみると、本来は一院制の方が合理的だという考えがあったわけです。 従って、二院制の長所が十分に発揮されていれば、参議院の存在が認められて当然ですが、前に申しましたように、参議院の価値が一向に見えてこないばかりか、ますます風化していくようで、それならば、近い将来の憲法改正では、参議院の廃止について大いに議論すべきだと考えます。 皆さんはどのようにお考えでしょうか。(2001年12月27日)