3月22日の朝、私は読売新聞を見て驚いた。上記の記事が一面トップに出ていたのである。 世の中の動きが、こうも大きく変わってくるものかと感慨深かった。 記事の内容を知らない方々も多いと思うので、ここで紹介させてもらうとともに、私の考えを申し述べたいと思う。
1) 読売新聞は3月22日付け朝刊で、憲法に関する国会議員のアンケート調査を発表した。 この調査は、憲法施行55周年に合わせて実施されたもので、全国会議員724人を対象に行い、その内64、8%に当たる469人が回答したものである。(調査は、3月1日〜18日に実施)
この中で最も注目されるのが、憲法改正の是非について、回答した議員の71%が憲法改正に賛成したことである。これは、前回調査(5年前に実施)より11ポイントも上回った。 一方、憲法改正に反対したのは24%にとどまり、こちらは逆に、前回より11ポイントも下回った。
「改正する方がよい」という回答の内訳を見ると、「国際貢献など、今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから」、「国の自衛権を明記したり、自衛隊の存在を明文化するため」、「環境権や人格権など、新しい規定を明記した方がよいから」などの順となっている。
一方、「改正しない方がよい」という回答の内訳を見ると、「世界に誇る平和憲法だから」というのが圧倒的に多く、次いで「基本的人権、民主主義が保障されているから」、「すでに国民の中に定着しているから」などの順となっている。
2) 焦点となっている憲法9条の問題を質したところ、「条文の解釈で対応するのは限界なので、憲法を改正する」という答えが、55、4%と圧倒的に多く、「今の解釈が最も妥当。これ以上の拡大解釈をしない」とする13、6%、「9条を厳密に解釈し、解釈や運用で対応しない」とする12、4%を大きく引き離した。
また、「憲法の規定から見て、現在の自衛隊が合憲か違憲か」を質したところ、合憲とするものが59%、違憲とするものが22%で、合憲論が前回調査より9ポイントも減った点が注目される。
なお、憲法改正に賛成した議員の割合を年代別に見ると、30歳代以下が80%と最も多く、40歳代から上へ行くほど賛成の割合が減少し、若い世代ほど改憲志向が強いことが明らかになった。
この他、二院制(衆参両院)の是非などについて質したところ、現状維持を含む二院制支持は53%で、前回より32ポイントも落ち込んだが、一院制を支持する意見は12%と、1ポイントの微増にとどまった。
なお、現行の皇室典範が認めていない「女性天皇」については、88%が賛成し、反対は1%だけという、地滑り的な大差がついた。
以上、読売新聞のアンケート調査の結果を、手短かに紹介させてもらった。
3) 国会議員のアンケート調査から明らかになったのは、なんと言っても、「憲法改正」への志向が急速に高まってきたことだ。 私自身、これほどはっきりと改憲志向が強まっているとは、ほとんど予想していなかった。
読売新聞が指摘するように、この5年間に周辺事態法の成立、北朝鮮(?)不審船事件、テポドン発射、9・11同時多発テロなどの出来事が起き、安全保障の問題がクローズアップされてきたことと、温暖化防止のための京都議定書など、環境問題が前面に登場してきたことが、大きな背景になっていることは間違いない。
我々国民の代表である国会議員が、このような認識を持っておられるのは、大変心強いし、また有難いと思う。 しかし、読売新聞だけでなく大方の調査では、国民の環境問題への関心は高いものの、安全保障への関心はまだ相当低い結果が出ている。 国会議員と一般国民との間には、「何が重要か」という認識で、まだ大きな隔たりがあると言ってよい。
もう一つ、大きな隔たりがあるのは「二院制」の問題だ。 今回の国会議員へのアンケートで、「参議院をなくして一院制にする」ことに賛成したのは、11、5%しかない。 同じ読売の全国世論調査(昨年春に実施)では、一般国民は24%が、参議院の廃止に賛成している。 また、二院制について「今のままでよい」とする意見は、過去最低の37%しかなかった。 これは昨年の調査だから、今年になって、参議院の見直しや廃止を求める意見は、さらに強まっていることが予想される。
4) 今回の調査で、「二院制」の問題について、一院制を支持した参議院議員はわずか3%で、衆議院議員でも16%しかいない。 これは、“永田町”では議員心理が働いたと言う他はない。衆議院の方も、今の参議院をかばった形になっている。 一般国民との間の意識の隔たりがあり過ぎる。
私自身は、今の参議院だったら、無い方が良いと考えている。まったく税金の無駄遣いだと思っている。 国民の間にそういう認識が広がってきたことを、国会議員は真剣に受け止めなければならない。 身内をかばうだけでは駄目だ。「二院制」が良いというなら、参議院のあり方について、国会は思い切った改革案を、早急に国民の前に提示すべきである。
一方、今回の調査で、「自衛隊は憲法違反だ」と位置づけたうえで、憲法改正を主張する意見が全体の10%、47人に達した。 そのうち45人が「自衛権を明記し、自衛隊の存在を明文化する」ことを求めている。
これは、実に大きな胎動である。 憲法9条と自衛隊の問題について、これまで政府が取ってきた解釈(合憲)は、今や“風前の灯”になりつつある。 自衛権の問題についても、「解釈改憲」が成り立たなくなってきた現状と合わせて、いよいよ抜本的な措置、つまり憲法改正をせざるをえない状況になってきたと言える。 これについては、「集団的自衛権を行使できるようにすべきだ」と答えた54%の議員のうち、73%の人が「憲法改正」を求めていることでも、明らかである。
5) 憲法9条の問題では、政府は実に苦しい解釈を強いられてきた。 現行憲法の条文から見れば、それは当然のことで、ある意味で歴代内閣に同情せざるをえない。本当に苦しんできたと察する。 しかし、今回の議員アンケートで、憲法改正への光明がようやく見えてきたようだ。9条を含めて改正が行われれば、今後どんな内閣でも救われることになるだろう。 そうなれば、詭弁や“ごまかし”、“まやかし”は必要なくなってくるだろうから。
先程も述べたように、国会と違って一般国民の間では、憲法改正への関心はまだ相当に低い。 このギャップを今後、どう埋めていくかということが重要である。 国会議員の71%が憲法改正に賛成ということは、改正の発議に必要な総議員の3分の2以上(66、7%)を超えている。 憲法改正への機は熟してきたと言える。
しかし、民主主義国家である以上、国民の大多数の賛同を得る形で、改正されることが望ましい。 国民投票で、過半数ギリギリというのは好ましくないだろう。 従って、憲法改正を進める人達は今後、国民の中に深く分け入り、最善を尽くして、粘り強く改正への理解を求めていく必要がある。 (2002年3月26日)