仮に自衛隊が“合憲”なら憲法9条を改正する必要はない!!

1) 自衛隊の存在について、いまだに憲法9条に違反していないと考えている人が大勢いる。 先の読売新聞による国会議員アンケート調査(2002年3月実施)によると、自衛隊を合憲とするものが59%、違憲とするものが22%という結果になっている。(3月22日の読売新聞朝刊を参考) 5年前の調査に比べると、合憲論が9ポイントも減ったが、相変わらず6割近い国会議員が合憲の立場を取っている。 ところが、憲法9条の改正を求める意見が55%と過半数を超えてしまった。 これは前回調査の41%を、実に14ポイントも上回るものである。

 安全保障の実態を考えて、憲法9条をなんとかしなければならないという気持は良く分かるが、私はこの結果に大きな矛盾を感じる。 端的に言えば、自衛隊を合憲と考えるならば、なにも9条を変える必要はないのである。 しかし、自衛隊の存在と9条の条文があまりに乖離を生じているので、このような結果になったのだろう。

 国民の生命と安全を日々守っている自衛隊を、できるだけ温かく見守ろうという気持は分かる。 生死の危険にさらされることもある自衛隊を、憲法に違反しているとは見たくないという気持も分かる。 私も自衛隊の存続に大賛成だし、これからも存続して欲しいと願っている。 独立国であれば、自衛のための軍隊を持つことは当然である。 しかし、そうした思いと憲法9条と自衛隊の存在との矛盾は、まったく別に考えなければならないことだ。

2) 私はこれまでに、今やものすごい戦力を保持している自衛隊は、戦力の保持を認めていない憲法9条に明らかに違反していると何度も言ってきた。その点では、共産党や社民党などとまったく同じ“認識”である。 ただし、そこから物事を考えていって、自衛隊の存在を認め憲法9条の方を改正すべきだというのが、私の“論理”なのである。 先の読売新聞の調査で、そうした考えを持つ国会議員が10%(47人)に達したことを非常に心強く思うものである。(若干、名前を挙げさせてもらうと、鳩山邦夫氏、衛藤征士郎氏、御法川英文氏、高市早苗氏らである。) 

 自衛隊が憲法に違反しているからと言って、自衛隊を責めているのではない。自衛隊が悪いのではない。 そうした矛盾を長い間放っておいた国政の怠慢を非難しているのである。 現実と憲法の条文がこれほどまでに乖離しているのに、解釈を拡大させたり詭弁を弄したり、こじつけ、ごまかし、まやかしを続けてきた虚偽と偽善が許せないのである。

 だから私はあえて言う。 自衛隊が合憲だと認識する人は、一言でも憲法9条の改正を口にするな!、と。 それは論理の矛盾である。後生大事に現在の憲法を守っていくべきである。

3) なぜ、現実を素直に見ることができないのか。なぜ、白を黒と言い黒を白と言うのか。 現在の自衛隊が戦車や戦闘機、大砲は勿論のこと、イージス艦や潜水艦、ミサイルなど、最新鋭のものすごい戦闘機能を大量に持っていることは事実だ。 これは明らかに戦力であり、憲法9条第2項の「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」という条文に抵触することは間違いない。 こんなことは、小学生が見ても分かることだ。

 私は別稿でも述べているが、創設当初の自衛隊は、極めてお粗末な軍事力しか持っていなかったので「戦力なき軍隊」と言われた。 政府もそのように国民に説明し、なんとか憲法違反でないことを認めさせてきた。 しかし、それから約50年が過ぎて、今や自衛隊は世界有数の軍事力、戦力を保持するに至ったのである。(自衛隊の年間予算は、5兆円に近い巨額なものである。) これほど明確な事実を、なぜ素直に見ようとはしないのか。 それとも、核兵器や航空母艦がないと「戦力」ではないとでも言うのか。 

4)「認識」というのは恐ろしいもので、一旦頭の中に誤って入って既成概念になると、なかなか変えることが難しい。 また、「真理」というものは始めは少数、いやごく少数の人にしか認識されない。 ガリレオ・ガリレイは17世紀初頭、地動説を唱えたが、ほとんどの人に無視され、宗教裁判にかけられて自説を撤回するよう命じられたほどだ。

 当時は、よほど天文学などに通じていないと、地動説など信じることはできなかっただろう。 朝起きれば太陽は東から上って、やがて夕方には西の空に沈んでいく。 太陽だって星座だって天の方が動いている。地球は少しも動こうとはしない。 天動説の方が正しいと誰もが思ったにちがいない。 私も当時生きていれば、勿論そう思ったであろう。

 しかし、長い長い歳月を経て、やっと地動説が科学的に正しいと実証され、人間の「認識」の方が変えられてしまった。 このように「認識」というのは、ちょっとやそっとのことでは変えられないのである。 まして、人間の実感からほど遠い地動説などは、そう簡単に受け入れることはできなかったに決まっている。

 地動説は容易に信じられなかったとしても、素直な心と正しい目を持っていれば、今の自衛隊が明らかに戦力を保持しており、これが憲法9条に抵触(違反)していることぐらいは、よほど心も目も暗くなければ、誰でもすぐに理解できるだろう。 私はもうこれ以上、何も言いたくない。 ただし、なお虚偽と偽善を続けていこうとする人達がいるのなら、その人達に、以下のイエス・キリストの素晴らしい言葉を贈ることにしたい。

「自分の目には梁(はり)があるのに、どうして兄弟に向かって、あなたの目から塵(ちり)を取らせてください、と言えようか。 偽善者よ、まず自分の目から梁(はり)を取りのけるがよい。 そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目から塵(ちり)を取りのけることができるだろう」(山上の垂訓より) (2002年4月14日)

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