31年前の古新聞

1) 妻が家の中の模様替えをしていたら、古い新聞が何枚か見つかった。箪笥の引出しの中に敷いてあったというので、見せてもらったら31年も前の新聞だった。 一目見て驚いたのは活字が極めて小さいのだ。今の活字と比べると半分程しかない。当時は、よくこんな小さな活字を読んでいたものだと思ってしまった。 それだけ、今の新聞は読みやすくなっているのだろう。

 黄ばんだ新聞は、1971年(昭和46年)4月5日と6日のものだった。破れないように注意深く広げて読むと、なかなか興味深く面白い記事が多く載っていた。「カドミウム(注・イタイイタイ病の原因)、日本総汚染」だとか、統一地方選挙で、佐藤栄作首相や成田知巳社会党委員長ら各党党首が、応援演説で全国を駆け回っている記事が出ていた。

 埼玉県版を見ると、亀井静香県警捜査二課長(現在の自民党の実力者)が“きれいな選挙”を実現しようと呼びかけている。 雑誌などの広告欄には「女性自身」の見出しに、元銀座ホステス(27歳)が、西田佐知子さんと結婚した関口宏さんについて、「私に女の悦びを開いてくれて去って行ったヒロシ・・・でも、少しも彼を恨んでいません」などの記事が載っている。

 そうかと思うと外信面では、拡大するベトナム戦争やソンミ村での米軍カリー中尉による村民大虐殺事件の裁判、西パキスタンと東パキスタン(現在のバングラデシュ)の関係悪化などの記事が出ており、懐かしいと同時に興味を惹かれるものがあった。

2) テレビ欄は現在、ほとんどの新聞が最終ページに載せているが、当時は真ん中辺のページに出ていた。 放送開始時刻は一番早いのが午前6時で、終了時刻は一部を除いて24時台と今より相当短いものである。 おかしいのは、ほとんど全ての番組名の前に「カラー」と銘打っていることだ。 これなら、モノクロ番組の前にだけ「白黒」と表示した方がすっきりすると思うが、完全にカラー化していなかった証しだろう。

 番組も懐かしいものが数多く載っていた。 フジテレビが「夜のヒットスタジオ」の他に「スパイ大作戦」をやれば、日本テレビは「ナポレオン・ソロ」で対抗し「11PM」で締めている。 TBSがゴールデンタイムで「キックボクシング」をやれば、NETテレビ(現在のテレビ朝日)が同じくゴールデンで「プロレス」中継で対抗している。 また、NHKは朝の新連続ドラマ「繭子ひとり」(山口果林主演)を大々的に宣伝している他、東京12チャンネル(現在のテレビ東京)はゴールデンにボクシング番組を組んでいる。(以上、月曜日の番組表)

3) 経済面の株式欄は今のと比べると極めて侘びしい。 現在の株式欄はほぼ2ページにわたっているが、この当時は1ページの3分の1ぐらいのスペースに、東証1部・2部の全銘柄が納まっているのである。

 求人募集の欄ではクラブやキャバレー、喫茶店、サロン、レストラン等の女子募集の広告がヤケに目につく。 クラブやキャバレーの日給は3000円程度が最も多い。女子事務員の月給は、大体3万5千円から4万5千円が相場といったところだ。 また、週刊誌は80円から100円ぐらいで、単行本も大体380円から500円ぐらいである。 

 今と比べれば全てのものが3分の1から4分の1の安さで、これは当然の事だが、はたして暮し向きが良かったのかどうかは分からない。 しかし、日本経済も伸び盛りの頃だったと思うので、将来に対する漠然とした期待感は今よりあったのではなかろうか。

 そんなことを考えていると、この年は自分が結婚した年だと思い出した。 31年も前のことは詳しく覚えていないが、若かったことは確かだ。その若さは今の自分にはない。 しかし、気持だけはなんとしても若くありたいものだ。そんなどうでもよいことを考えながら、古い新聞を捨てることにした。(2002年5月4日) 

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