社会主義の“名誉”にかけて、北朝鮮を糾弾する

1) ふるさとの 山にむかいて 言うことなし ふるさとの山は ありがたきかな(石川啄木) 私が大好きな歌の一つである。

 北朝鮮に拉致されていた生存者5人が一時帰国し、先日、それぞれの故郷に里帰りした。 24年ぶりに故郷の山や川を見て、肉親をはじめ旧友や恩師らと再会、喜びのあまり涙、涙、涙・・・の対面だった。 テレビでこれらの感動的なシーンを見て、ほとんどの日本人がもらい泣きしただろう。

 9月17日の日朝首脳会談の前までは、夢にも考えられなかった事態が現実のものとなった。実に喜ばしいことである。 小泉首相の訪朝がなければ実現しなかったことで、この点だけから考えれば、北朝鮮との国交正常化交渉に応じたことは、首相の決断が正しかったと言えるだろう。

 拉致事件の解決へ一歩前進という面では、小泉首相が金正日(キムジョンイル)との会談を中途でボイコットしなかったのは、正しかったのかもしれない。 拉致被害者8人が死亡したという、北朝鮮側の衝撃的な通告に対し、首相が席を蹴って帰国していれば、今頃、5人の生存者が故郷の土を踏むことはなかっただろう。

 私は過日、被害者8人が死亡したということに対し、小泉首相はなぜ席を蹴って帰国しなかったのか、なぜ国交正常化交渉に合意したのかと批判したが、生存者5人の一時帰国実現という面から考えれば、私の方が間違っていたと“自己批判”しても良い。(別稿を参照

 自己批判するのであれば、いくらでも自己批判しよう。そんなことはいくらでもするが、問題は、生存者5人の一時帰国ぐらいで、国交正常化交渉に入って良いなどというものではない。 このまま正常化交渉に入ってしまえば、完全に北朝鮮のペースにはまっただけのことである。

 勿論、日本人の誰もが、北朝鮮との交渉がスムーズに行くなどとは考えていないだろう。もし考えているとしたら、多分社民党の関係者ぐらいだろう。(北朝鮮問題についての社民党は、もう馬鹿々々しくて論評する気にもなれない。参議院議員の田嶋陽子さんが、呆れ果てて離党したわけだ。 社民党は一体、どこの国の政党なのか。日本の国の政党なのか? 社民党の悪口を言い出したらキリがないので止めるが、自らの過去を反省しろ!、とだけ言いたい。)

 仮に10月下旬から正常化交渉に入っても、これは事実上、正常化交渉の前段階、つまり予備交渉みたいなものだ。 日本の世論はようやく厳しくなってきた。北朝鮮の正体がどんなものか、ようやく分かってきたからだ。

2) 北朝鮮がどういう国かということは、マスメディアを通じて大方分かってきた。 このところ連日、テレビ・新聞等で識者が話しをしてくれている。 大いに勉強になっているので、それらのことには触れたくない。私などより読者の方が、多分もっと良くご存知だろう。

 私がここで指摘したいのは、もっと根本的なことである。 北朝鮮という国家の体制や制度のことである。 社会主義(共産主義)の名誉にかけて、話しをしていきたい。何故なら、北朝鮮は社会主義(共産主義)の体制を取っているからだ。

 階級のない社会の実現を目指すのが、平たく言って社会主義(共産主義)の理念・理想である。 とりわけ、マルクス主義では、最終的に国家の廃止を目指して「階級闘争」を主軸にした世界観を取っている。 政治的なアナーキズムも、大体同じような思想である。

 階級のない社会、本当に自由で平等(公正)な社会の実現を目指すことは、実に素晴らしい理想である。 かつて、どれほど多くの人達が、この理想を実現するために奮闘したことか! そして現代でも、その理想は生き続けている。

 だから、私も社会主義(共産主義)やアナーキズムを否定するものではない。 現代の資本主義体制よりも、自由・平等・人権等がより保障されるならば、喜んで社会主義者(共産主義者)、アナーキストになろう。

 ところが、現実の北朝鮮はどうか。 社会主義(共産主義)の理想からは、はるかにかけ離れた体制になっているではないか。 我々日本の社会よりも、はるかに階級制度の厳しい社会に転落しているではないか。 朝鮮労働党の幹部を頂点として、恐るべき「階級社会」に成り下がっているのだ。

 胸に付ける金日成バッジも、21の階級に分けられているという。まるで、軍隊の階級と同じではないか。 国民を上部の「忠誠層」、中部の「動揺層」、下部の「敵対層」に分けているという。それによって、人間を差別しているのだ。 どこに社会主義(共産主義)の理念が生きているというのか! 社会主義(共産主義)を侮辱するのも甚だしいかぎりだ。

 こんな社会に誰がしたというのか。一体、誰の責任なのか。 社会主義(共産主義)の名誉を、ここまで汚したのは誰なのか。 それは言わずもがなだが、金正日を頭目とする朝鮮労働党の仕業であることは明白な事実である。

3) 社会主義(共産主義)社会というのは本来、人間が自由に解放され、最も平等(公正)で、最も人権が重視されたものでなければならない。 ところが、現実の北朝鮮の社会はどうなっているのか。 相次ぐ亡命者らの証言によれば、恐るべき統制のもと、自由も人権も公正さもほとんどなく、生命さえ危ぶまれているというではないか!

 もしマルクスが現代に甦って、北朝鮮の実態を見たらなんと言うだろうか。 これが貴方の目指した社会主義(共産主義)の世界だと知らされたら、マルクスはぶったまげて気絶してしまうだろう。 北朝鮮という国は、社会主義(共産主義)の国家どころか、単なる「独裁統制国家」でしかないのだ。 私はコミュニストではないが、社会主義(共産主義)の名誉にかけて、金正日を頭目とする朝鮮労働党に断固抗議する。

 話しは少し変わるが、アメリカ人や中国人らが日本に来ると、「日本ほど共産主義を実現した国はない」と言うそうだ。 これには苦笑せざるをえないが、日本は共産主義の国でもないのに、自由と人権、とりわけ平等(公正)が行き渡っているということだ。 外国人から皮肉られてはいるが、もし私がコミュニストなら日本を誇りに思うだろう

 本当の社会主義(共産主義)の実現というのは、難しいものだ。 旧ソ連邦を始め多くの国が努力してきたが、社会主義(共産主義)の国のほとんどが、一党独裁の閉鎖的で醜悪な統制国家に成り果ててしまった。 そして、ソ連邦も東欧諸国も崩壊していったのである。 どうやら、人間に我利我欲があるかぎり、マルクスやバクーニンらが描いた共産主義の実現は難しいようだ。

 共産主義の可能性はともかく、現実の北朝鮮の問題は深刻である。 この国の核兵器開発も重大だが、最大のガンは現在の金正日体制にある。このことは今や、言わなくてもほとんどの人が認識しているはずだ。 要は、金正日体制を一日も早く打倒することである。

 日本を始め、海外に居住する朝鮮人は多数いるはずだ。 また韓国には、北朝鮮からの亡命者も相当数いるはずだ。 問題は、これらの人達が、金正日体制をどう思っているかということである。 この悪しき体制を、心良く思っていない人も多いだろう。

 それらの人達が、ただ思いを巡らしているだけでは、何の効果も現われない。 問題は、それらの人達が金正日体制打倒の組織を作ることである。 言うなれば、“亡命政権”を作ることである。北朝鮮の民主化を実現するために、金正日打倒の“核”を作ることである。

 既に別稿(「北朝鮮は生まれ変われるか」を参照)で述べていることだが、19世紀の後半(明治時代)に、朝鮮の改革を目指す開化派の金玉均らは、日本を拠点として活動を繰り広げた。 彼等は1884年、本国でクーデタを起こし一旦は政権を掌握、後に失敗して日本に亡命する。

 外国を拠点として活動することは、独裁統制下の本国で策動するより、はるかに容易なことである。 もとより、日本には北朝鮮の工作員も大勢いる。当然、命を狙われるなど危険な事態となるだろう。 しかし、そうしたことをしないかぎり、北朝鮮を改革することは絶対にできない。 あるいは、近い将来、アメリカが金正日体制を壊滅させるのを待つかである。

 仮に、アメリカが金正日体制を倒すとしても、民主派の人達はその日のために、政権の“受け皿”を用意しておかなければならない。 その日のために、今から秘密裏に準備を進めておく必要がある。 既に、そうした準備が進んでいることを期待し、もしそうなっているなら、大変喜ばしいことだと思う。

4) 当面は、北朝鮮の核開発問題が焦点だ。 この問題に関連して金正日は、アメリカとの核戦争も辞さずという強硬な発言をしたと伝えられている。 もしそうなら、正に“狂気の沙汰”である。こんな指導者の下では、北朝鮮の国民は不幸になるだけである。

 北朝鮮が核武装すれば、韓国だけでなく日本も重大な決意をせざるをえないだろう。 今のところ望ましくはないが、非核3原則の見直しと、『我が国の核武装』も当然俎上に上ってきておかしくはない。

 何百回も何千回も言うが、金正日体制が続く限り、北東アジアには平和は到来しない。 日本の防衛予算は、本来もっと削減すべきだが、こんな悪しき体制が隣国で続く限り、逆に防衛力を強化する必要に迫られるだろう。

 北朝鮮が本当に民主的な平和国家に生まれ変わるなら、どれほど素晴らしいことだろうか。 そういう国と国交が結べるなら、どれほど喜ばしいことか。 今現在では、まるで夢のような話しだが、将来、ひょっとすると現実のものになるかもしれない。 今は、それを夢見るしかない。

 同じ国交がない国とはいえ、台湾には、どれほど多くの日本人が訪問したり、旅行したりしているだろうか。北朝鮮とはえらい違いだ。 恥ずかしながら、私はまだ台湾には行ったことがないので、近いうちに是非一度行ってみたいと思っているが、台湾はとても自由で、伸び伸びとした所だと聞いている。「独裁統制国家」とは違うのだ。

 中国にも韓国にも、また他の東南アジア各国にも旅行したいと思う。 しかし、今の北朝鮮にはまったく行きたいとは思わない。 拉致(?)されて連れていかれれば別だが、それは、自由意思で行くのとは大違いだ!

 つい何ヵ月か前に、不審船が北朝鮮のものではないかと騒がれた時に、北朝鮮のメディアはなんと言ったか。覚えているだろう。忘れてはいないだろう。 日本のことを「ごろつき侍」だと激しくこき下ろしたのだ。 ところが先月、金正日は、不審船が北朝鮮の工作船であることを認めた。冗談ではない! 「ごろつき侍」とはどっちのことだ。北朝鮮のことだ! 北朝鮮のメディアは反省しているのか。日本に対して謝罪したのか。

「ごろつき侍」がウヨウヨしている今の北朝鮮に、誰が行こうなどと思うだろうか。 物好きな日本人が旅行しているようだが、仄聞するところによれば、勿論、台湾のように、自由自在に旅行できるわけではないとのことだ。

 とにかく、北朝鮮のこととなると、憤激することが余りに多いので、精神衛生上よろしくない。 もうこの辺で止めるが、拉致でもされない限り、死んでもこんな体制の国には行きたくないものだ。

 いつの日か、北朝鮮が自由で民主的な国家に生まれ変わり、喜びの中で旅行したいものだ。 そうなった時に初めて、このホームページの文章を削除することができるだろう。 (2002年10月18日)

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