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「冬はイヤだね」
「雪はイヤだね」
…本当は、大好きなんだけど、
何故か誰にも言えない。

雪の降る夜に、窓を開けるのが好きだった。
いつも、窓から外を眺めて過ごした。
ときどきは外に出て、クルクルと落ちてくる雪の、
その中心にいるような気持ちで空を見上げた。
大きな雪が降ると、手袋に雪をのせて結晶をながめた。
手袋をはずして、手のひらでうける雪は、
しゅるしゅると消えて、冷たい感触だけを残した。

…好きなのになぁ、ホントは。
彼女

彼女がそんなに苦しんでいるとは知らなかった。
そんな風に傷ついているとは知らなかった。
笑い声がいつのまにか
涙声に変わっていた。

私はそれに気付かないふりをした。
ごめんね

あなたがそうやって私にみせつけようとしても、
ごめんね、
全然うらやましく思えないの。
私にはあなたの事など、どうでもいいのよ。
ごめんね。
あなたが思っている以上に
私は幸せなのよ。
大切な人

あの人を支えたいと思う。
あの人の全てを知りたいと思う。
あの人の全てを受け入れたいと思う。
…けれど、あの人には私は必要ないのだ。
いらない人なのだ。
私の思いなど、
彼女にとっては邪魔なだけだ。
記憶の整理

あの時の気持ちも、
あの日の凍るような寒さも、
全部覚えているというのに。
どうして昨日の朝食が思い出せないのだ。
あの日々の、苦しい気持ちも
泣き叫んだ、あの時の絶望感。
…そして、泣き終えた後の、清々しさ。
吹雪がやんだ青空と
友だちの安心した顔。
全て、たった今起きた事のように思い出せるのに。
私はやはり、あの時に壊れたのだろうか。
癖。

エスカレーターで過ぎる人々の顔を
1つずつ、確認するように眺める。
…まだ、探しているの?
誰かを待つ

あてのない手紙を
書きつづける私を
ときどきでいい、
思い出して。
あの時と変わらず、
私は多分、…待っている。
…。

…捨てたはずのものを
なんとか拾い集めようとする。
…情けない。みっともない。
どうして潔くなれない。
抱えていたら、他のものは持てないって、
いろんな人が言ってるのに。
意地汚いわね。
欲張ると、ろくなことにならないわよ。
思い出。

今日も1つ葬った。
さよなら、思い出。

楽しかった、
つらかった、
がっかりした、
うれしかった、
涙が出た、
求めた、
得た、
失った、

…さようなら。
ほんの短い間に起こったたくさんの事。

今、もうすでに後悔してるけど、
もう捨ててしまったんだもの。
戻らないよ。

あの、嵐のような日々。
もう、振り返らない。
脱ぎ去りたいもの

不要と感じたものを
1つ1つ脱ぎ捨てられたなら
どんなに身軽になれるだろうか。

私には不要なものがありすぎるのだ。

あれも、これも
どれも、これも

そうすることができれば
もっとシンプルに生きられるはずなのだ。
孤独。

離れてゆくあの人を
私には止められないけれど
どうかどうか
楽しかった日々を
忘れないでと思う。

私が必要とするほどには
誰も私を必要としてはいないのだ。
誰一人、失いたくないと思っても
私はただ、通りすぎるだけの人。

どうか、どうか。
せめて私を忘れないでいて。

私はいつまでも
あなたを求め続ける。
身体。

見知らぬ人と並んで立っていた。
身体が揺れ、その人に触れる。
このまま、この人にもたれかかりたいと思う。

こんなにも
ぬくもりに飢えているのか。

目覚め。

浅い眠りの後、必ず襲われる。
漠然とした不安感と、
飲み込まれるような恐怖。

生まれたばかりの子供のようだ。
目が覚めれば泣き叫ぶ。
だけど、誰も、いない。
あたたかく包み、
おだやかに守ってくれる人はいない。

ただ、じっと、
不安と恐怖が去るのを待つ。

こうして私は分裂していくのだろうか。
答えを持つひと。

探しているのは、答えを持つひと。
私の探す、答えを持つひと。
いつか、この恐怖から
いつか、この不安感から
解放してくれるその人を
探している、待ちつづけている。
自分自身で恐怖を克服するなど
とてもできない。

早く出会いたいのに。
早く解放されたいのに。
いつまでも。

今なら認めてもいい。
私はあなたを好きだったと。
多分、今でも好きなのだと。

あなたを好きだから
あなたを思い出すのがいやだから
あの場所へ行くのがいやなんだって
あなたのいる場所へ行くのがいやなんだって
認めたらもう、許してくれる?

傷。

30枚以上もの花の写真から1枚を選ぶ。
その花は今の自分を示すらしい。
私を示す言葉は
「過去の傷が癒えていない」

…たかが花のくせに。
わかったような事言わないで。


幼く、丸く、こどものような私の指。
爪を噛む癖をなくすために
自分が大人である事を自覚するために
エナメルを塗る。