私の小さな旅行記

第一話 「北海道小樽の旅〜初の一人旅〜<1997・7・23−26>

 大雨のために、土砂崩れ警報がでて山寺にて約一時間電車が止まった。今日は人生で初めて飛行機に乗り、一人で旅行するスタートの日だった。飛行機は9:45だが、すごく余裕を持って電車に乗ったのだった。しかし、もうずっと電車がとまっている。いつ動くかもしれない。電話もつながりにくいし、もう飛行機に間に合わないかも・・・となきそうになった。しかし、ここであきらめてはいけない。私はこの一人旅計画を入念に何ヶ月前から立てて、親を一生懸命説得して、お金をためてやっと実現しようとしているのだ。心の中はどきどきして、泣きそうだったけど、ようやく動き出した。しかしまだ間に合うかわからない不安のなか、そんな私を見かねてか、隣のおじさんたちが話しかけてきてくれてとても安心することができた。何とか仙台駅に到着。9:45発の飛行機用のリムジンバスはもうとっくに出ていて、その次のバスには長蛇の列。間に合わない、と思いながらも運転手のおじさんの所にいって事情を説明したら、一番初めに乗せてくれて他の待っていたお客さんも「どうぞ」といってくれた。もうそれだけでなきそう。(今度はうれしくて)ここまできたらどうにでもなれーという感じで、9:30分過ぎに仙台空港に到着。ダッシュで搭乗者手続きまで走った。放送では、721便は搭乗者手続きを終了しましたといっていたが、意地でも乗る気満々。こんなに自分にはずうずうしさがあったのかと、びっくりしながらも何とか飛行機にのれた。一番後ろの席だったけど、乗れただけでもう感謝。ここまでくるのに、すでに何人もの人にお世話になっているなと思いながら腰を落ち着けた。はじめての飛行機はジェットコスターよりも面白かった。あっという間に北海道へ。おなかがすいたのでホットドックを食べる。私は一人っ子ということと、親が都市が離れているということがあって、いままで結構過保護に育てられてきたと自分で思う。そんな甘やかさせた自分が嫌だったし、自分ひとりでは何もできないのではないかという想いがこの一人旅に私を向かわせた。それにちょうど大学受験の時期で自分を見つめなおしてみたいという想いもあった。
 空港から高速の電車みたいなのに乗った。これは静かで、乗り心地は最高。眠ってしまった。これまたあっという間に小樽へ到着。小樽は雨が少し降っていて暗い空が悲しかったけどホテルへといそいそと向かう。ホテルは小樽運河が見える新しいきれいなホテルではあったが、私の部屋は小樽運河の反対側だったので、小樽運河はみえず・・・(ショック)
その後、北一硝子とかオルゴール堂とか、ぐるぐる歩き回った。それなりに楽しくって、オルゴールでも買おうかなと、大好きな「星に願いを」のものを探す。そして、銅製の手作りで、三日月に少年が座っているというオルゴールと、きれいな少年のピエロのものを買った。ほんとにきれいなの。値段は高かったけど。おなかがすいたなーと思ったところに、異人館というきれいなケーキ屋さんを発見した。イチゴのショートケーキとモンブランとチョコのようなもの買い、ホテルへ。夕食まで部屋でゆっくりする。夕方、コンビニまでお菓子を買いにいった。そのついでに雨の中を、靴をびちゃびちゃにしながら散歩した。(その後びっしょりぬれた靴はなかなかかわかなっかた・・・)海を見たら遠くまで曇っていてよく見えなかった。でも、誰もいない曇った海をみていたら何故かうきうきしてきた。遠くに、曇っている空のおくには恐ろしいほどの青い空が広がっているのだ。その光景は行きの飛行機の中でみた。そして思った。先が見えないと気分も暗くなるし、余計なことまで悩んだりするけど、何が起こるかわからないのだからかえって面白いのではないか、ということ。まだ若いんだし、いろんな道にそれながら自分でそのたびに新しい道をつくっていくほうが楽しいのかも。私は、こうあらなくてはいけない、と思いすぎなのだ。もっと柔軟になれたらいいな。そんなことをとりとめもなく考えながら雨の中をずっと散歩していた。  次の日、5:00に目がさめた。昨日は眠くなって9:00ころ寝てしまったのだ。見覚えがないのだが、お菓子が半分くらいなくっている。夜中に食べたらしい・・・昨夜、照るチャンと名づけた照る照る坊主をつけたおかげで今日は晴天。やったー!今日の午前中は余市に行く。余市市は普通の街だけど観光地ではなくて、海沿いの普通のまちをあるきたかったから。それで電車で20分ほどのところの余市に行くjことにした。余市への電車の中からの眺めは面白い。家が段々畑みたいに連なっていてかわいらしかった。多くの山々に囲まれて涼しさを感じる。電車が通りすぎるたび沢山の葉っぱが風で手を振っているみたいだ。宇宙スペース館という新しくできたところにいった。スンバラシイ建物であったが、まぁまぁだった。その後、大川町の方まで歩いていった。このまちは船木(スキージャンプの)の生まれたまちらしく、幾つかの垂れ幕がさがってあった。なんだか、海のにおいがするな、と思い、その方向へと地図もなく歩いていったら、なんと海に出た。余市は、山形の酒田市に似ていて、余市湾は程よく海風がふいていた。カモメが私の頭上をたくさんたくさん飛んでいる。そこに、一羽の羽のとれたかもめがよろよろと私のほうへ歩いてきた。悠々と空を飛ぶ仲間たちをうらめしそうに、首をもたげてずっと見ていた。えさはどうするのだろう、一人きりなのだろうか・・・と考えがとまらなくなったが、自然の、どうしようもない悲しみをかんじながら、その場を去った。少し、泣いた。
 小さな畑にはからすよけなのか、プラスチックの小さな羽をつけたペットボトルたちがくるくると、風に身を任せて回っていた。誰もいない。
 海はやっぱりいいなと思いながら、しばらくボウっとする。すると、さっきからニシンのにおいがすることに気が付いた。そう、ニシンはこのまちの特産なのだそうだ。このまちを歩いて観察していると、おばあさんや伯母ちゃん、小さな子どもたちしか見当たらない。あっ、高校生発見。ちょっとだけコギャル・・・たいした客も集まることもないまちだ。でも私は好き。海風に乗ってやってくる塩気でより一層黒く焼けた子どもたち。扇風機の前でおばさんたちはなにやら話している。ニシンの少し生臭いにおいもすんなりと受け入れられる。また、来たいと思った。
 帰りの電車はとても混んでいて立って乗るしかなかった。前に中学生の男女が数人のっていて楽しそうに話している。わたしも中学生のころの風景をふと思い出した。彼ら(彼女ら)は高校生になった自分たちがおうなって、ああなって・・・などと考えもしないわけで今という世界を生きている。わたしだって、高校生の今の自分のようになるなんてわかんなかった。そのときを生きるのに精一杯だった。ほんとにいろいろな事があったけど、今思うとすべては思い出としてしかそんざいしない。 あ、もうすぐ小樽駅だ。
 小樽は晴天なり。一度ホテル帰ってからまた出かける。小樽湖祭りがあるらしく、屋台などが結構出ている。観光地はこうでなくちゃ、と思い、少しうきうきする。今夜はとてもにぎやかになりそうだ。浴衣姿の彼女を連れた恋人たちや家族連れの人々が小樽港へと向かう。
 お祭りにきた。すごく若い人が多い。やっぱりお祭りは大勢でとはいわなくても友人や家族、恋人などと来たほうが楽しい。おなかもいっぱいだった私にとって、出店も必要がないし、なんかこの大勢の中にいるとかえって孤独・・・これこそ、人々の中の孤独だ。ということで、にぎやかな声とおいしそうなにおいを後にして、海を見ることにした。もう夕方で夜が近かったが、水面がきらきらたなびいている。とても心地がよかった。いくつか並んでいる船に少しずつ、ゆっくりと灯りがともり始めた。お祭りの音が遠くなっていって風の流れがみえるようだ。カモメが二羽、大きな空をのびのびととんでいる。気持ちいい・・・海はどんどんその色を蒼くし、空は静かに暮れていった。すうっと心が一つになって、物事が輪郭を壊しながら私から離れていく。遠くへ・・・今、わたしはいろんな者が見え、声がきこえる。この海を忘れないだろう。
 今夜は早く寝ようと思ったけど、思いもかけず喬君から電話があった。(喬君とは友達であったが、今となっては恋人である。君付けで呼んでいた昔が今は初々しく思う。)
 早くも、今日が帰る日である。今日はずっと海を見ていようと思う。昨夜のにぎやかさの余韻をちらりと残したこの街は、出店とテントのにおいでいっぱいだった。天気もいいし、本当に気持ちがいいよ。
 海の上のそらってさ、そんなに高く感じないんだよね。手が届きそうだ、本当に。(表現としてだけでなく)なんか、届かないものなんてないぞという感じ。風がやわらかい。
 少し早めにホテルをチェックインしすぎたようだ。駅の近くにあった長崎屋の本屋で本を二冊買う。そしてコーラを飲みながら濃いブラウンのベンチに腰を下ろし、さっき買った本を読む。思ったより面白いので今読むのがもったいないなんて感じてしまう。しかし、三日間というのはとても早い。はじめての一人旅で要領も悪かっただろうし、もっと旅を楽しむことができたかもしれない。しかしながら、はじめて一人で何もかもしたり、ゆっくりと様々なことについて考えたり、たった一人きりですべての食事をとったり・・・と私にとっては身のある三日間だった。自分自身に証明したような気になった。なにを?それはひとりっことして甘えて育ってきて今後自分の力では何もできないのではないかという不安をかき消すことができた。すべては何とかなるものだ。このたびの出だしから、飛行機に乗り遅れてしまうのでないかという危機も今はよかったと思う。それから、この旅行を許してくれた両親にも感謝。この受験の時期に、一人娘を北海道へ一人で旅させるなんて・・・と思ったことだろう。それから、私のことをいつも理解して協力してくれる、叔父、叔母にも日頃からの感謝をいいたい。旅とは出逢いというけれど、ほんとにそうだ。小樽まで行く途中に会った人々や小樽であった人々。人の暖かさを感じた。私はいろんな人に支えられている。そう、初めて心から感じることができたことはおおきな意味があると思う。写真は一枚も撮らなかった。撮りたいな、と思った風景も沢山あったけど、心の中にとどめておいた。電車が走り出した。小樽バイバイだ。あれ、空は明るいのに、雨が降ってきた。光に照らされてきらきらと私の目の前を通り過ぎていく。
 電車からは思いもかけず海が見えた。それも一面に。雲の間からこぼれおちた光は水面に反射して、どこまでも金色にみえる。遠くに街が見える。まるで魔女の宅急便のシチュエーションみたいだ。

追憶の一言・・・
 これは、高校時代に旅行したときに日記としてつけていたものです。今はあのときよりは現実や悲しみも知ったし、喜びも楽しさも新たに知った。あの時はこう考えていたんだ、と恥ずかしく思ったり、自分の心の中の成長を見ています。次回はこれもまた北海道旅行で函館一人旅編を載せたいと思います。どうぞよろしく。