海蛇座(Hydra(ヒドラ))

 ギリシア最大の英雄ヘラクレスは大神ゼウスとミュケーナイの王女アルクメネーの間にできた子だったが、
夫の浮気に加えてヘラクレスがひどく優秀な子だったので、ゼウスの妻である女神ヘーラーにひどく憎まれていた。
 ヘーラーはヘラクレスを苦しめるために陰謀をめぐらし、狂気の女神を遣わせてヘラクレスに狂気を取り憑かせ、
彼の妻メガラとその間にできた3人の子をヘラクレス自身の手で殺させてしまったのである。
 正気に返ったヘラクレスは自分のしてしまったことをひどく悔やみ、犯した罪を償うためにデルフォイの神殿に
赴いて神託を受けた。それによると、ヘラクレスが罪を許される為にはティーリュンスの王エウリュステウスのもとで
12年の間、仕えなくてはならないということであった。
 さて、エウリュステウス王は我儘なくせに臆病であったので、屈強なヘラクレスを見て王座を奪われるのでは
ないかと恐れ、彼を排除せんとしてネメアに棲む大獅子退治を命じた。
 ところがヘラクレスが見事大獅子を退治してしまったのを知り、エウリュステウスはさらに危険な使命を彼に与え
た。
それがレルネに棲む化け蛇ヒドラの退治である。
 ヒドラは前に倒したネメアの大獅子と同じく、怪物エキドナとテュフォンの子で、9本の首をもち、うち1本は
不死身であった。しかもどれか首を1つ切り落とすと、その切り口新たな首が生えてくるのである。
 ヘラクレスは甥のイオラオスを伴って、この蛇を退治しに出かけた。
 まずヘラクレスは火矢を用い、ヒドラをアミューモーネーの泉のそばにあった住処から追い出した。
 出てきたヒドラをヘラクレスは得たりとばかりに押さえつけたが、ヒドラは尾をヘラクレスにからみつかせ抵抗した。
また、ヘラクレスを憎むヘーラーが一匹の化け蟹を遣わし、ヘラクレスの足をはさんで邪魔をした。
 ヘラクレスは化け蟹を踏み潰して殺し、剣でヒドラを斬りつけたが、ヒドラは新しい首を生やすばかりでなんの
効果もない。
 そこでイオラオスが機転を利かせ、火のついた薪を持って、ヒドラの首の切り口を焼いてしまった。するとヒドラは
首を生やすことができなくなった。
 ヘラクレスは残る首すべてを切り落として傷口を焼き、不死の首は巨大な石の下敷きにした。
こうしてヘラクレスようやくヒドラを退治することができたのである。
 ヘラクレスは退治したヒドラの胴を裂き、猛毒をもつ肝の血に自らの矢の鏃を浸して、恐るべき毒矢を手に入れた。
 のちにこれがケンタウロス族の賢者ケイローンや同じくケンタウロス族にしてヘラクレスの友フォーロー、ヘラクレス
が死ぬ原因を作った粗野なケンタウロスのネッソスをも殺すことになるのである。
 その後、ヒドラは天に昇り、星座となった。これが海蛇座である。なお、海蛇座の首が1本しかないのは、残りを
すべてヘラクレスに切り落とされてしまったからだという。


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