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「変らないものなんて、無いんだよ?」
皿の上に残ったシイタケを、フォークでつつきながら。
今日、アノヤローが去り際に残した言葉の意味を、噛みしめてた。
「あれ?オマエ、シイタケ嫌いだったけ?」
「んー、今日、嫌いになった。」
「なんで?」
「ん。」
答えにならない答えを返して、シイタケを裏返しにする。
アノヤローの言うことは、いつでも正しいから。
バカな俺は、考えたってしようがない。
アノヤロー曰く。変らないものなんて、無いんだから。
アノヤローの言うとおり、過ごしていれば。
毎日決められた時間に起きて。
決められた仕事して。
決められたモノ食って。
決められた時間に寝て。
そうしてれば、傷つくこともなく。
いつかやってくる終わりに怯えることもなく。
泣くこともなく。
「期待は裏切られる。いつかまた、前みたいに。」
皿の中のシイタケの、整然と並ぶ襞を。
壊したかったけど、ぐにぐにしてて上手く潰れない。
「食いもん、粗末にすんなよ。」
ガッコのセンセみたいなことを言って、シイタケは同居人の口の中へ吸い込まれた。
「オレ、シイタケの襞キライ。」
「なんで?」
「・・・完璧すぎるから。」
その日はそれ以外、一言も言葉を交わすこともなく。
朝がやってきて、オレはこの家を出ることを決めた。
「なあ。話、あんだけど。」
「いーから。座って?」
昨日までの同居人に促されて席につくと、テーブルには珍しく、朝食の用意がしてあった。
オレの嫌いなシイタケがコンソメスープの上に、迷子の船みたく一個、ぷかぷか浮いている。
「なに?コレ。」
「元気になる朝ごはん。」
「どの辺りが?」
「全体的に。」
にっこり笑う同居人の、この笑顔が好きだったな。
とか思いつつシイタケを捲ったら。
シイタケの裏側に襞はなく、かわりにぎっしり肉が詰まっていた。
「ど?コレなら、食える?」
「ば・・・かじゃん?何の解決にもなってねぇよ、コレ。」
「そ?」
「オマエ、ホントバカ。」
「うん。でも、無くしたくないから。」
「・・・今日また、アイツに会うよ。」
「・・・うん。晩ごはん、何がいい?」
「コレと、同じヤツ。」
変らないものなんて、無いけれど。
変りながら続いてくものは、あるかもしれない。
今日、アノヤローに会ったら、そう言おう。
もうアンタに会わなくて済みそうだって、そう言おう。
fin.(02'0914)
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