豚舎は工場のような密集飼いで、
病気を防ぐためにさまざまな薬を使ってました。
何万頭も買っている養豚場の中には一日でも早く出荷すれば餌代が何百万円と浮くから、
成長ホルモンや抗生物質を使ったりするところがある。
休耕田には雑草も笹竹も生えていますが、
豚はそのほとんどを食べ尽くします。
豚は鼻で地面を耕して、糞が肥料になる。
この豚の耕した土地を利用して、水田を作ってみました。
肥料は豚の糞尿だけで、農薬も除草剤も使いません。
この結果を見て、耕作放棄地とか休耕田の再生に、
豚が役に立つと思うんです。
草を消化するために4つの胃を持っている牛に、
穀物を食べさせるのは、牛の本来の食性に反することです。
山地酪農で育てた牛は健康です。
牛たちは毎日、急峻な牧場を上り下りしているので、
脚腰は強靭、胴は張っていて、呼吸器消化器も強い。
だからほとんどの牛が病気知らずで、
薬やホルモン剤などいっさい不要です。
牛舎の中で蜜集飼いされてる牛は不健康です。
お互いに傷つけ合わないように、角を切ります。
歩かないので蹄が伸びるから、定期的に切ってやる。
日本では、草食動物である牛には不自然な、穀物を中心とした配合飼料を食べさせ、
平均して1頭の乳牛から、1日約27キロの牛乳を取ります。
中には、その高栄養、高カロリーの飼料を食べさせて、
1日に60キロも取る酪農家もある。
血液を変えたものが牛乳なのに、そんなに取ったら牛の体はおかしくなります。
すべては人間が経済効率第一、
利益第一で行っていることが、動物の健康を害し、環境を破壊し、
結局それがわれわれ人間にはね返ってくるのです。
「105」
始めるのは政治家、官僚、地方自治体、という行政であり、
したがって常に利権が絡む。
必ず巨大な土木工事を伴い、ゼネコンなどの事業者が関わる。
そしてそこに大きな役割を果たすのが学者たちだ。
官僚、地方自治体などは立てた計画を検討する委員会のようなものを作る。
委員となる学者は、その土木工事に問題がないという理論的なお墨付きを与える。
理科系の嘘は科学用語や数字を振り回すから、
専門知識がないと真に受けてしまう。
理科系は自然が相手だから、理科系の嘘を真に受けると自然界が悪影響を受けます。
「104」
何かしてもらったらお返しをするのが礼儀だ。
「102」
添加物を使った食品は
「安い」
「便利」
「日持ちがする」
「見た目がきれい」
「味が濃い」
という5つの利点を持ちます。
そして、それが統計的に食品購買動機の上位にいつも入ってるんです。
「101」
特別な食べ物を取るのではなく、
食の基本を大事にすることこそ力を与える食べ物につながると思い、
未来へ向けて提言をしたい。
それは第一に、食材が自然本来のものであること。
食べ物は自然本来のものでなければ不健康だし、
美味しいも何もあったものではありません。
第二に日本の風土と伝統文化を基盤としたもの。
自然環境を守り伝統文化を大事にしてこそ、
力を与える食べ物が得られるのだと思います。
そして第三に楽しさを与えるもの。
家族、友人と心弾むものを食べて安らぎを得てこそ心身共に力がつくのです。
ものを食べることは病気を治療するためという消極的なものではない。
大事なことは、一回の食事自体が人生そのものだということだ。
生きる目的に自らを導入する"序"。
その気持ちを高める"破"。
そして活動を全開にする"急"の呼吸で、
毎日を生きてこそ人生には価値がある。
単なる栄養補給のための食事では心の輝きは得られない。
それをいかに食べるかが重要だ。
そういう食事こそ人生そのもの。
"医食同源人の身にも心にも力を与える食べ物"になるのだと私は考える。
「94」
アスパラガスを適当な長さに切ります。
根っこの部分は固くてまずいから、2,3センチほど切って捨てる。
フライパンを中火にかけてバターを入れ…アスパラガスを入れる。
しんなりしたらでそれで出来上がり。
食べる時に塩と、好みで黒コショウを挽いてかけるの。
ホウレン草のバター炒め。
根っこの赤い部分も食べましょうね。
フライパンを中火にかけてバターを溶かす。
そこにホウレン草を入れて炒める。
しんなりとなったら醤油をかけ回して出来上がり。
牛肉の佃煮
牛肉は細切れ肉で結構。
ショウガの薄切りを肉の量の1/5ほど、
それを日本酒と醤油だけで中火で煮ます。
煮えたら弱火にして煮詰める。
煮汁が完全になくなって、焦げ始める寸前に火から下ろして出来上がり。
「90」
一般に売っているジャムは長時間煮るから果物の元の色が失せてしまうので色素を添加したりする。
パンに塗る時に塗りやすいようにペクチンをたくさん入れて固める。
それじゃ元の果物のうま味は消えてしまう。
果物や野菜に含まれているでんぷんやセルロースの仲間の多糖類で植物の細胞どうしを結合する接着剤の役目をしています。
私は私の義務を果たすんだ。
ショウガは辛味成分、香り成分ともに多くの種類を含んでいて、
それぞれが薬効を持っているんです。
主な香り成分はジンギベロールという物質ですが、
それは皮のすぐ下にあるんです。
だからすり下ろす時に皮を剥いでしまってはこの香りは出ません。
ショウガを寝かせて下ろすと、
下ろし金で繊維が細かく切られて下ろした身のきめが細かくなります。
それに、細かく下ろしたほうが薬効成分はよけいに取り出すことができるんです。
ショウガに純粋な蜂蜜、両方とも栄養満点。
ショウガの辛味成分の中のジンゲロン、ショウガオールなどは、
食欲増進健胃効果を持っているので胃の弱った時には最適です。
効酸化作用のある物質をたくさんとることはガンの予防にもなります。
ショウガを一緒に食べるのは、単に美味しいだけでなく健康のためにもよいのです。
誰でも必ずいつかは死ぬ。
どうせ死ぬ短い人生なら思い切り生きなけりゃいけない。
自分が幸せになるために。
そして、自分の愛する者を幸せにするために一生懸命生きるんだ。
「85」
サツマイモのデンプンの中には人間に消化できないものがある。
それが繊維質として腸を通り過ぎるときに体内の不純物を吸収するから、
肥るどころか体内の大掃除にもなり、肌もきれいになる。
生産者だって本当はいい物を作りたいだろうさ。
それを、安く作るのが第一となったら、
彼らだって食っていくためならなんだってするさ。
われわれだって、安い物を売っていたんじゃ利が薄い。
そして、消費者は安いだけでろくでものない物を食べさせられることになる。
今はエンゲル係数が低すぎるよ。
携帯に月に2万円も使い、パチンコで何万も使い…
それで、食べ物は10円でもケチケチする。
それじゃ身体も駄目になる。
それ以前に精神がやせ衰える。
俺は、今の日本を立て直すには、まず、
うまい物をたくさん食べて、心底元気を出すことだと思うね。
「83」
煙草を吸う人が、味がわからなくても健康を害してもそれは、
吸う人の責任です。
命がけで煙草を楽しむというのも、人生の選択のひとつでしょう。
しかし、自分の楽しみのために、他人を不快にしても平気だというのは、
あまりに身勝手で、子供っぽいのではありませんか?
煙草を吸う人は内臓自体が弱っているので、独特の口臭があります。
それにヤニのにおいが重なるので、煙草を吸う人の息のにおいは、耐え難い臭さです。
煙草を吸う人の手の指も、とてもヤニ臭いのです。
「73」
食べているものを見れば、
その人間のことがわかるというのは、真実だよ。
タピオカは、東南アジアで常食されているキャッサバという芋のでんぷんで作ったものです。
鱈は、死ぬと自家消化が早く進むんですよ。
肉の中のうまみ成分のイノシン酸が、早く分解してなくなってしまうんです。
同時に、あの独特のにおいが出てくる。
だから、北海道などの鱈の獲れるあたりでは、
「鱈は沖で食え」と言うんです。
テッチャンというのは、漢字で書くと大腸。
牛の大腸を、韓国語でテッチャンと言うんだ。
ヤマイモは、ウナギと同じくらい、体に精をつけるということですよ。
ヤマイモのぬるぬるの中に含まれているムチンという物質が、
タンパク質の消化吸収をよくするとか、
年を取ると失われるホルモンを作り出す物質が、ヤマイモに含まれているとかいろいろな説がある。
漢方でも、ヤマイモの干したものは疲労快復や、虚弱体質改善に使う。
おまけにヤマイモは、弱った胃腸にも優しい。
ヤマイモは、消化酵素ジアスターゼが大量に含まれていて、一緒に食べたものの消化も助ける。
だいたい、生で食べられる芋が、ヤマイモの他にありますか?
当然お肌にもいいしお通じにもいい。
「72」
化学肥料じゃなく、鶏糞、牛糞を入れた肥料を使ってるから良いかというと、
なかなかそうじゃない。
本当の有機栽培をするためには、
家畜の食べ物から考え直さなきゃならないんだ。
「71」
虫食い穴だらけだったり、虫がついてたりしたら困るけど、
ひとつやふたつの虫食いは、野菜が安全だという証拠なのよ。
日本では、農家の多くが窒素肥料を使い過ぎていて、
結果として硝酸態窒素が多く含んだ野菜が出回ってるんだ。
野菜だけじゃない。
肥料が地中にしみこんで、地下水も硝酸態窒素に汚染されたところが少なくない。
キュウリと同じだ。
形のいい立派なものでないと嫌がる。
だから、生産者は肥料をたくさん使う。
中身より見てくれにこだわる消費者は、自分で自分の首を絞めてるんだ。
「69」
つわり対策の有力な決め手のひとつ。
それは、チビチビ食べること。
お腹をすかせ過ぎちゃいけないってこと、
ちょっと食べたら休む、そしてまたちょっと食べる。
お腹をすかせ過ぎないよう、ひんぱんにチビチビ食べることこそ、
つわりを克服できるのよ。
それに料理の組み立ても大事。
第1回目は、とにかく口に入れられるように、口当たりのよいやさしい味のもの。
(カブをコンソメスープで煮込んだもの、ジャガイモを薄切りにしてホワイトソースで煮込んだもの、
食パンに自家製のトマトソースを塗って、オーブンで焼いたもの)
第2回目は、口当たりがよいけれど、第1回目より質感のあるもの。
(サトイモの煮物、ジャガイモと鳥のひき肉のひと口コロッケ、にゅうめん)
第3回目は、しっかり内容があるけれど、
酸味をうまく使って喉を通りやすく仕上げてあったでしょう?
(おひたし、キスを塩焼き、ちらし寿司)
嫌いなものを食べさせようとすると、普通、そのものの味をかくしたり、
他のものの味を加えてごまかそうとする。
だが先生は、その逆をいかれた。
そのものの味を残らず引き出し、すばらしさに目覚める方法を取ったのです。
味をごまかしていては、いつまでたってもそのもの自体の味を知らずじまいだからな。
面取りをすると、いもの面が多くなるから、出汁のうま味を吸収しやすくなる。
もうひとつ。面取りしてないと、いもどうしこすれあって煮くずれする。
煮物
最初に塩味をつけると、いもの身がしまって他の味が入りにくくなるんだよ。
だから最初に出汁を含ませ、砂糖をしみこませ、最後に醤油で味をつける。
だいたい陣痛に耐えられない女が、子供を育てられると思ってるの?
子育てって厳しいものなのよ。陣痛なんかと比較にならない辛い思いをしなければならないこともある。
それを陣痛ぐらいで尻込みしてるんじゃ、母親になる資格はないね!
「68」
"うま味調味料"という呼び方も、短期促成醸造の黒酢も、
どれも法律には違反していないわ。
でもだからこそ、いっそうずるい感じがするのよ。
どれも形式的な法律には違反していないけれど、
一番大事な人間の真心に背いているのよ。
食べ物だけは、真心に背いてほしくないのに。
食べ物にとっての本当の法律は、形式的な法律ではなく、
真心という法律なんだよな。
それを忘れている食品関係者が多すぎるんだ。
ああいう人がいる限り、
私は日本という国を、日本人を、信じられるよ。
「66」
韓国人、朝鮮人が彼らの文化を背景に、日本文化を押し広げ深める活動をする。
彼らは日本文化を豊かにしてくれた。
これこそ多文化主義でしょう。
ところが日本人はまだ、韓国、朝鮮人を差別しています。
在日韓国人、朝鮮人は就職の際も不利になることが多い……。
中華鍋に胡麻油を取って、刻んだネギを入れる。
ネギの香りが立ったら、溶き卵を入れる。
半熟になったら、卵を小さい固まりに分ける。
そこにトマトのぶつ切りを入れる。
炒めるうちにトマトの汁が出てくる。
トマトがしんなりなったところで、塩と少量の砂糖で味をつける。
トマトに火を通しすぎないように、手早く皿に取る。
病みあがりの人の栄養補給にぴったりの料理だし、子どもにも喜ばれます。
夏にはもってこいの料理ですね!
自分の作る料理を喜んでくださる人たちを大事にすること、
それが料理人にとって一番価値のあることです。
家族で美味しいものを食べるって、なんて幸せなんだろう。
こんな幸せを、今まで子供たちに味わわせなかった私は……
本当におろかだった。
薄切りした茄子を、薄く油を引いたフライパンで焼いて、
ウニの塩辛をお酒でといて、それを塗ったものです。
オリーブ・オイルをたくさん取っている地方では、
バターなどの動物性脂肪をたくさん取っている地方に比べて、
心臓病による死亡率が低いそうです。
オリーブ・オイルは、血液中の悪玉コレステロールを減らし、
善玉コレステロールを増やすそうです。
つまり、動脈硬化を防ぎ、血液の流れをよくするので、
血栓症も起こりにくくなるそうです。
しかも、人間の体を老化させるフリー・ラジカルという物質が、
体内で発生するのを防ぐ力もあるそうです。
体にいいだけじゃない。
エクストラ・バージン・オイルは、とても美味しいんです。
ワインとブドウの果汁から作ったバルサミコ酢をたらしたオリーブ・オイルを、
パンにつけて食べてみてください。
バルサミコ酢の代わりに、醤油をたらしても美味しいんだ。
「65」
新婚生活をいつも新鮮で、意味あるものにするために大事なことは、
相手の魅力を見落とさないこと。
見落としていたら、再発見することです。
結婚したふたりに必要なのはこの心だ。
美味しいものを作るのは、幸福を築くのは、金ではない。
ゼイタクなものでもない。
なんにつけても手間ひまかけることをいとわず心を尽くすことだ。
「62」
比内鶏は、国の天然記念物に指定されてる。
ここにいる鶏は純粋の比内鶏ではありません。
一代雑種です。
比内鶏の原種に、ロードアイランドレッドを高配したものです。
比内鶏は縄文時代から比内地方に存在した地鶏で、
改良が最も遅れていて野鶏に近いものなんだ。
ブロイラーは早くふとらせるために脂肪分を与えるけど、
比内鶏はよけいな脂肪を与えずに育てているのか。
自分たちの食習慣にないものを食べる人間をつかまえて、
野蛮人呼ばわりをすることこそ、人間が生きるとはどんなことなのか、
その本質を知らない野蛮人ではありませんか?
牛や羊やウサギを食べておきながら、
犬や鯨を食べる人間を野蛮人と罵るのをおかしいと感じないことこそ、おかしい!
「56」
煮汁は煮え立たせてから魚を入れる。
これが煮魚の基本だよ。
最初から魚を入れたんじゃ、魚を低い温度からだらだらと煮ることになる。
それじゃ魚のうまみが、煮汁のほうに出てしまう。
しかも全体に生臭くなる。
ところが煮え立った煮汁に生の魚を入れてやると、
高温で魚の表面タンパク質がすぐに凝固してしまう。
それが魚のうまみが外に流れ出るのを防ぐ、
と同時に、生臭くならないんだ。
日本酒、と言うからには、米だけで造るのが当たり前でしょう。
それなのに、日本酒業界ではそれをわざわざ純米酒などと言う。
アルコールを発酵させるためにまず米のデンプンを糖に変えなければならない。
その分、ワインよりはるかに複雑で難しい工程を、踏まなければならないのです。
大部分の会社は、以前の特級、一級、二級を、
それぞれ特撰、上撰、佳撰としてるようだが、
会社によっては精撰、秀撰、金峰、そして金印など、
いろいろ勝手につけている。
問題は、それぞれどんな基準でつけているのか、判然としないことだ。
「54」
私だけじゃない、人間ってみんなそうじゃないんでしょうか……
働いて、自分がだれかの役に立っていると思うときが、
一番幸せなんです。
除草剤や農薬は、それを使う農家の人々の健康を真っ先にいためつけているのですよ。
食品会社が保存料を使うのは、
製品管理が楽だし長い間保たせることができるからです。
農薬をたくさん使って作った作物は安全とか危険とかいう以前にまずいんだ。
農薬や除草剤は、人間や環境を破壊するのはもちろんだが、
当の作物の健康自体にとってもよくないんだろうな。
どんな食べ物でもそうだが、一番難しいのは、
それをだれでもが気軽に食べることのできる値段で作るということです。
正直な材料で、まっとうな料理方法の、
本物の美味しい食べ物をできるだけ大勢の人間に食べさせよう、
というその心意気が問題なんだ。
材料自慢、腕自慢の料理人は掃いてすてるほどいる。
自己満足と自惚れの固まりになって、
お客を喜ばせることは二の次になっている者がたくさんいる。
金持ちや名士が自分の店の常連であることを得意がる、鼻持ちならない俗物も、
そういう料理人のなかには多い。
相手の懐具合まで考え、しかも自分のできる限りの最高の材料と技術で、
お客を喜ばせようという心構えの料理人が、いったい何人いるか?
きっと名前の売れている高級料理店の料理人は、
立ち食いそばの職人をバカにして、優越感を抱いたりしているのだろう。
だが、今、われわれが食べた立ち食いそばの店の経営者も職人も、
高級料理店の料理人よりはるかに多くの人間を幸せにしている。
できるだけ多くの人間に、美味しくてまっとうなものを食べさせて、幸せにしてあげたい。
そう願う心こそが、一番尊いのだと俺は思う。
「51」
人間を甘く見るんじゃないぜ。
人間を動かすことができるのは、
金と力だけじゃないんだ。
料理人が一番注意することは、材料の持ち味を引き出すことだ。
それが滅多に手に入らないものとなると、もっと大変だ。
料理人が良心的であればあるほど、なるべく手を加えないように気を使うだろう。
料理こそ、人の心の深奥を突くものだぞ。
その人間の作る料理を見て、その人間の心が読めないのなら、
人間を辞めたほうがよい。
「50」
結婚というのは、違う家庭で育った者どうしが、両方の家の味やしきたりを持ち寄って、
新しく自分たちの味としきたりを作り上げるものでしょう?
相手の家庭の味としきたりをむげに否定してしまったら、どうなるでしょうね?
結婚する前に、ずいぶんお互いのことを知り合ったと思っていても、
結婚すると、まだまだ相手の知らなかった部分がどんどん出てくるものなんですよ。
でも、だから人生って楽しいんじゃないかしら?
合鴨というのは、アヒルと鴨をかけ合わせたものです。
いわば、両方の中間だ。両方の良い部分を備えている。
「48」
コンペイトウって純粋ですがすがしい甘さで、しかもとても固い。
その形はあちこちに角を出しているけれど、
それは希望や願いや向上心や祈りや……
そんな諸々のものを外にあふれ出させている人間の心の生き生きとした姿を
形に表したように思えます。
それも一昼夜にしてできたものではなく、
長い時間かけてじっくり根気よく作り上げたものです。
あなたと奥様の関係って、そうだったのでしょう?
私にも、そういう夫婦関係を作れ、とおっしゃるつもりだったんじゃありませんか?
戦後の日本は、経済活動にすべての力を注いできた。
おかげでわれわれ日本人は世界の標準からすれば、富裕な国となった。
しかし、本当にわれわれの生活は豊かか?
昔は田舎に行けば美しい川が流れていて、魚はいくらでも釣れた。
海辺に行けば、まさに白砂青松。
美しい海岸線が広がり、海遊びの楽しみが味わえた。
だが、今、田舎に行けばその必要もないのに
政治家と土建業者と役人が金儲けのために作ったダムと護岸工事で、川は死んでいる。
むやみに作ったダムのせいで、川の河口の流量が変わってしまい、
海岸線が侵食されて後退するからといって、
今度はそれを防ぐために、醜いコンクリートブロックを積み重ねる。
今、世界中で日本の海岸ほど醜い海岸はない。
かつてはあんなに美しいかった国土を壊し、われわれは何を得たのか?
子供は偏差値偏重教育で心が荒廃し、登校拒否児童が増加する。
家庭内暴力をふるって、自分と家庭を不幸に追いやる。
そうまでしてつめこみ勉強をして、会社につとめる。
すると、過労死するまで働かされる。
住む家はウサギ小屋だ。
これが、豊かな人生か?
そうではあるまい。
経済成長一点張りで狂奔する生き方は、
われわれを少しも豊かにしないことは十分にわかったはずだ。
21世紀に生きる若者には、本当の豊かさを目指してもらいたい。
ゆとりある豊かな生活とは、どんなものか?
健全なる叡智を働かせれば、すぐわかるはずだ。
日本人は権威に弱い。
権威に屈従せず、自分の価値基準を強固に持って、
自信を持って行動してもらいたいのだ。
高価で貴重なものの味をあさるのが、美味の追求だと思っていた……
しかし、そうではなかったのだ!
大事なのは、感動だ。
至高の口福による感動なのだ!
貧乏であっても、知恵の使いようでこのような至高の口福が味わえる。
それなら貧乏を怖がる必要が、どこにあるか?
一切の妥協をせず、貧乏をむしろ楽しみ、自らの道を追及するだけではないか?
そう悟ったのだ!
人間は、心にぜい肉がつくと臆病になる。
平気で妥協をするようになる。
私は、このみすぼらしさを若いふたりに贈りたいのだ。
その中に、真の豊かさを包みこんだこのみすぼらしさ、を。
[47]
自分に自信がない。
相手を引っ張って行く自信もない。
責任感もない。
甘やかされて育った子供のままじゃありませんか?
人生の真実に立ち向かう心意気がないんです。
周囲の人間が、
たとえば私という人間を観察するってどういうことかしら。
私のすべてを残酷に、すみからすみまで心の中まで立ち入ってのぞきこむわ。
それは心理的な解剖よ。
肉体的な解剖より、場合によっては徹底しているわ。
いかなる事情があるにせよ、
憎しみを心によどませている人間の臭気は、ひどいものだよ。
人間には運不運てものはつきものだよ。
不運がこわくて人間やってられっか!
不運が襲ってきたら、闘うだけじゃねえか!
そりゃ、人生、何があるかわからないから、悲惨な結末を迎えるかもしれない。
でもそれは、俺たちの人生だ。
俺たちで責任を取る!
他人の言葉で自分の人生を左右させるほどの根性なしじゃねえや!
いつもおふたりが山岡さんに示している寛大な態度を考えれば、
そんなに怒るほどのことですか?
人と人とのつき合いも、長くなると互いのなれやわがままから、
つまらんもめごとが起きやすい。
それがいかん。
いつもこの新芽のような初々しさを、人間関係でも保ちたいものだな。
自分の本当にしたいことに、
全身全霊かたむけて努力してこそ、本当の人生なんだ。
[45]
人間のみならず、
すべての生物にとって一番大事なものは、水だ。
牛乳よりもお茶よりも、
何よりもまず朝一番には、良い水を飲んでもらいたい。
たとえ喉が乾いていなくても、
体調が正常なら朝一番に飲む水の美味しさがしみじみとわかるはず。
水の味がわからなかったりするのは、
体の具合が本調子でない証拠だ。
美味しい良い水を朝一番に飲むことは、
胃腸の調子を整え気分を清朗にし、
しかも体調の判定にも役立つ。
アメリカの大豆などは油を取るための品種で、
味からするとそのまま食べても味噌や豆腐にしても、
国産の大豆に及ばない。
朝食をとらない人間が多くなったのも、日本の社会の貧しさの表れであること。
また、昔のありふれた朝食が、今では至高の朝食になってしまうのは、
日本の国土の荒廃を示すものであること。
食べ物を透かして見ると、社会の姿がはっきり見えると言いますが、
正にその通りです。
まともな食材で作った美味しい朝食を、
ゆとりを持ってとることのできる世の中にするのが、
次の世代に対する我々の責任でしょう。
ある一面だけを見て人間がわかったと思ったら大間違いよ。
人を泣かせるのはやさしいが、
笑わせるのは一番難しい仕事だよ。
そのためには人間のさまざまな面を理解して、心理のひだの裏表に通じなければね。
「42」
なんてひどい国なんだ!
我々は一所懸命働いて、こんな国しか作れなかったのか!
きれいな空気、美味しい水、健康な食べ物を返してくれえ!
日本の魚の養殖の実態を知ったら、
とても食べる気にならないし、
他人にもとても勧められないね。
狭い所で密集飼育してるから病気にかかりやすい、
そのために抗生物質などの薬を大量に与えている。
味が悪いだけでなく、健康上の問題がある。
世界中で日本人だけじゃないかな。
霜降り肉をこんなにありがたがるのは。
人間だってそうだろう。
筋肉の中に脂肪が貯まるなんて不健康そのものだよ。
実現が困難なものに挑戦するのが人間だろう。
それが夢というもののはずだ。
そんなに簡単に実現出来るものは、そもそも夢と呼ぶには値しない。
夢だって甘い夢ばかりじゃない。辛口の夢だってあって当然だ。
物量的な豊かさと効率のみを過剰に追求する、
今の日本人の生き方をこのまま推し進めていけば、
汚染は悪化する一方だと反省するところから始めて、
"非汚染"を取り戻す行動を開始しなければ、
我々と我々の次の世代には何の希望もない。
過去は失われたが、未来はまだ失われていない。
未来に賭ける勇気があってこそ、人間なんじゃないかと。
魚の味は特に刺身で食べる場合、
どんな死に方をしたか、
死んでからどれだけの時間が経っているかが、重大な要素となる。
魚肉の旨味成分はグルタミン酸とイノシン酸だが、イノシン酸は魚が死んだあと、
筋肉のアデノシン3リン酸(ATP)が分解して出来るものだ。
旨味はグルタミン酸とイノシン酸が一緒になると強くなる。
グルタミン酸は最初から魚肉の中にある。
だから問題は、イノシン酸をたくさん出すようにすることが、魚の旨味の決め手なんだ。
魚は死んでから数十分から数時間で死後硬直が始まる。
イノシン酸は死後硬直が始まる頃から解ける頃までに生成される。
そして死後硬直が解けてしまうと、
魚の鮮度は低下し腐敗が始まり、イノシン酸も分解されていく。
「40」
肉類の旨みの基本はイノシン酸だ。
魚醤と大豆醤油の旨味を形づくるのは、グルタミン酸だ。
そして化学調味料というのは、そのグルタミン酸を化学的に合成したものだ。
チーズの旨味はグルタミン酸だし、
野菜スープの旨味もグルタミン酸だから、西洋人もグルタミン酸の旨味は理解するが、
肉をもりもり頬張って得られる旨味は、イノシン酸によるものだし、
バターの旨味は乳脂によるもので、グルタミン酸の旨味を追い求めること、
東南アジア人にははるかに及ばない。
「38」
外国から輸入する農作物は、輸送中に腐ったり、カビが生えたり、
虫が食ったりするのを防ぐために、さまざまな薬品を使う。
いわゆるポスト・ハーベスト(収穫後)農薬と言われるものだけど、それが怖い。
日本の味覚の伝統は、
既にハンバーガーとフライドチキンという、二大ジャンクフードで大きく損なわれている。
これに加えてファミリーレストランチェーン店で、
カリフォルニア米の飯を食べれば、日本人の味覚の破壊は完了する。
「35」
食卓塩の味を見てもらおう。
こりゃきつい。
塩辛いって表現がぴったり。
やせてとがっていがらっぽいような塩辛さだわ。
うーん、美味しくなーい!
食卓塩は、99%塩化ナトリウムだ。
海水の中にはさまざまなミネラルが含まれています。
そのさまざまな微量成分を、私どもの塩は含んでいます。
それが余分の18%なのです。
確かに、塩の主成分は塩化ナトリウムだ。
しかし昔から人間が食べて来た塩は、
塩化ナトリウムだけではなくいろいろなミネラルなどを含むものだった。
現在の効率第一主義の電気化学的製法が、
日本の塩をこんな味にしてしまったんだ。
海から取った天然の塩はしょっぱい味のほかに、
ほかの微量元素や微量成分によって形づくられる、
微量だが豊かでふくらみのある味がある。
それこそが大事なんだ。
細切りのキャベツを水につけると切り口からキャベツの知るが水の中に流れ出て、
かわりに水がキャベツの中に入っていく。
キャベツは水を吸ってふくれあがる、だから見た目はシャキリ、ピンとなる。
キャベツの細胞は水を吸ってパンパンに張っているから、
パリパリサクサクした歯応えになる。
しかし味はない。栄養だって抜ける。
水にさらして水分を吸わせた物をいためたり煮たりすると、
味つけに入れた塩分で、水がすっかり外に吸い出されてしまって、グンニャリとなる。
畑の作物や山菜やキノコを食べることは、大地の恵の栄養をもらうことや。
"土を喰ふ"とは名言やな!
材料と向き合い、その価値を引き出し、先人の作ったものより美味しい料理を作る努力をする。
その努力こそが精進の本当の意味であるということです。
人生を一大事と考えるなら、命を支える三度の食事もこれは一大事……
さらにその一大事を楽しめたら、人生の達人や!
「33」
干物は魚を単に乾燥させればよいというものではない。
天日で乾燥するのには意味がある。
太陽の光線は蛋白質が分解して、旨味成分であるアミノ酸を出すのを助長する。
香りも格段によくなる。
乾燥機は水分を取り去るのが主で、太陽光線のような風味をよくする働きはない。
しかも、乾燥機の中には温風の熱源に灯油を使うものもあり、
どうした加減か石油臭のする温風で、干物を作っているのを俺は見たことがある。
ちょうどこんな田舎で……
なつかしいなあ……
本当の日本は、素朴でこんなにも豊かな国なんだよな……
この家……
稲田を渡ってくる甘い風……
セミの声……
トンボたち……
なんとぜいたくなんだ……
でもね、豊かなのは物だけだよ、
肝心な調味料が欠けている……
それではどんなに豪華でぜいたくな料理でも、
人を心の底から喜ばせることはない。
日本人は金持ち、物持ちになった……
経済的には豊かになった。
でも本当の意味では豊かじゃない。
一番大事な物を持っていないからだ。
肝心の調味料なしにぜいたくな料理をむさぼり食うなんて、
それじゃ世界中の誰にも好かれないよ。
「29」
脳と心臓の血管の衰えは、ボケや死に直結します。
日本人の歯の汚さだ。
中年以上の日本人ほど歯の汚い民族はアジアの中でも珍しい。
日本の土壌自体カルシウムが少ないから、
日本の野菜はカルシウムを充分に含んでいないのが、
その理由という説がある。
昆布だけでなく、ワカメ、ヒジキはもちろん
モズク、あまのり、とさかのり、おごのりなど、いろんな海藻を食べるんです。
沖縄のモズクは、本土のより太くてモチモチしていて美味しい。
しかもそれを丼でたくさん食べます。
日本人の食事に不足しているカルシウムを、昆布はたくさん含んでいて、
しかもその吸収率は79%という高い値を持っているんです。
カルシウムだけでなく、昆布をはじめ海藻にはヨードやカリウムなどのミネラル、
カロチン、ビタミンB1、B2、必須アミノ酸、
有害なコレステロールを流しさるEPA、DHAなどの脂肪酸も含んでいるんですよ。
イカの蛋白質は、人体に非常に吸収されやすい優れた物である上に、
イカやタコに含まれるタウリン酸は、総体的にコレステロールを減らし、
血圧を下げることがわかってきました。
オクラのネバネバはペクチンといって、コレステロールを減らす働きのある食物繊維です。
またオクラは、ビタミンやミネラルもたくさん含んでいて、
とくにカルシウムは牛乳と同じくらい入っています。
山芋は、山のウナギといわれるくらい体に精をつけます。
それに納豆が加わりますから、この三ねりは見た目よりはるかに強力な働き手です。
デンプンは人体というエンジンを効率よく動かす、
一番よい燃料です。
「28」
ご馳走とは走り回るという意味です。
お客をもてなすために、あちこち走り回って品物をそろえたり準備したりする。
今日の材料は野菜や鶏は自家製、
魚やウズラは宮里さんが自分で釣ってきたり探してきたに違いない。
宮里さんは、俺たちをもちなすために、走り回って準備をした。
料理もなじみのある料理だからこそ、今まで食べた物と容易に比べられる。
同じぬたでも畑から抜いてきたばかりのワケギと、
取れたばかりの新ワカメと自家製の味噌で作れば、
こんなに素晴らしい味になることがわかる。
この思いがこもっていることのありがたさ、
これが本当のご馳走ですよ。
新郎新婦それぞれが、自分の親戚、友人、知人たちに結婚相手を披露するのが
そもそもの目的のはずだ。
自分の結婚する相手がどんな人間であるかを知ってもらうのに、
いろいろな方法があるだろう……。
一番よい方法の1つは、その人間がなにを食べて育ったかを知ることだ。
新郎新婦が、それぞれ食べて育ってきた物を、
招待したお客に食べてもらえば、千万言を費やすより正しくわかってもらえるだろう。
料理の1つ1つが、新郎新婦の育ってきた家庭と生い立ちとその人格を、物語っている。
確かに、どんな物を食べているかを知れば、
その人間がどんな人間かわかるものや。
どんな家庭であるかも、食べ物によってごまかしようもなく現れてしまうよ。
結婚披露宴は、祭りでもあったのです。
ともに食べ、飲み、歌い、踊ることで、互いのきずなを強める。
結婚という1つの祝い事を媒介にして、互いの関係を深めるのです。
局長の投げ方も、なんとか様になってきたみたい。
めげない人だね、感心したよ……。
互いに若くないということは、
すでに趣味とか生活の具体的な細かい部分に、自分流のものが出来上がっているでしょう。
若いうちなら相手に合わせるという柔軟さもあるけれど、
自分というものが固まってしまうと、そうはいかないことってあるよね。
それもね、日常生活のささいな部分でそういうことって起こってくるのよ。
「27」
正確に言うと、これはウメの酢漬けです。
ウメボシは本来、ウメを塩で漬けるだけです。
そうすると自然にウメ酢が一緒に出来てきます。
ところが、それでは手間ヒマかかる。
それより、ウメを酢につけてしまった方が簡単だし、
工場で大量に作るのに適している。
しかし、それでは味も香りも貧しいものしか出来ない。
それを補おうとして化学調味料を入れるからさらにひどいものになる。
色も、赤紫蘇を使えば自然の良い色が出るのに、着色料で色をつけたりする。
ウメボシを作るのは、大変手間ヒマかかるものなんですよ。
真夏の暑い季節に、土用干しをしなければならないしね。
「23」
あらかじめ塩コショウをしてしまうと、
肉汁が出てしまって旨味がなくなります。
焼く寸前に、初めてかけるようにしてください。
タンの両面を焼いて肉汁を無駄にしてタン本来の味の1/3も味わっていない。
「19」
マグロの脂肪は低い温度で解けるから、
舌の上でとろりと溶けて、甘い味がする……
ところが牛の脂肪は高い温度でないと溶けない。
冷たい刺身の状態では、
食べると脂肪がロウソクのようにニッチャリと歯にまとわりつくだけで、
旨みは少しも感じない。
刺身として食べるなら、
牛より、馬刺しの方が美味しさは上でしょう。
脂肪も少ないし、健康のためにもよい。
ほら!
世界中にたった一人だけど、
山岡さんのこと理解している人間がここにいるわよ。
ほかの飼育場は不潔だし、生活環境が悪いから病気にかかりやすい。
だから、飼料の中に抗生物質を混ぜて与えて、病気を抑えるのさ。
肝臓の機能の一つは、体内の有害物を処理することだ。
要するに解毒機構を司っている。
とういことは、有害物や抗生物質が処理し切れずに肝臓にたまっていることも大いにありうる。
不健康な牛の肝臓を食べることは、スタミナがつくどころか有毒だよ。
飯の上になにか乗せたり、かけたりして食べるのは、
本来下品とされているけれど、丼でなきゃ出ない味ってあるよな!
天プラってのは、単純だけど素晴らしい料理法だよな。
衣をつけるから、中身のうまさや栄養分を逃がさずにすむんだ。
スクランブルドエッグのように、焼く前から黄身と白身を混ぜてしまうより、
焼いたあとで、白身に半熟の黄身をまぶして食べるほうが、
味の純度と鮮やかさが数段上だね!
「18」
たとえ2秒間でもそんな高熱を加えたら、変質するのは当然だ。
味も香りも落ちるのは当たり前だ。
殺菌の目的なら63℃以上で充分なんです。
ただし、時間をたっぷりかけなければならない。
大メーカーはその時間をかけるのがイヤだから温度を高くするんです、
63℃なら味も香りも損なわないのに。
もともと牛乳の中のカルシウムは人間の身体に非常に吸収しやすい形のものです。
ところが120℃もの熱を加えると、
牛乳の中のカルシウムは変質して吸収されづらいものになってしまう。
「10」
虫を殺したりほかの草を殺したりする薬が、
農作物には何の影響も与えないなんてはずがあるもんかい。
農作物自体も農薬や除草剤で健康を害するのさ。
納豆菌の場合は、大豆のタンパク質を分解する際にアンモニア臭を伴ってしまう。
それが慣れない人にはつらいのさ。
わらが納豆のアンモニア臭を吸収するんだよ。
パックの納豆はわらを使わずに培養した納豆菌を豆につけて作る。
パックはアンモニア臭を吸収しないからね。
カラシの中にはアリルカラシ油という成分があって、
アンモニアと化学反応を起こして別の物質に変えてしまうからアンモニア臭も消える。
鮎って、川によってそんなに味が変わるの?
そりゃそうさ、鮎に必要なエサと環境が川によって違うからね。
「8」
有機農法では堆肥と家畜の糞を使う。
まず堆肥だが、最近では針葉樹のオガクズを使った堆肥が多い。
針葉樹にリグニンという物質が含まれていて、
それは植物の根にとって有害だ。
また、稲ワラや麦ワラで堆肥を作る場合、
その稲や麦が農薬まみれの栽培法で作られていたのでは、
堆肥自体、農薬を含んでいることになる。
家畜の糞だってそうだ、
抗生物質と配合飼料で育った豚や鶏の糞の中にも残留薬物があるだろう、
そんな糞を肥料にしたのでは何の意味もない。
私達の緑健農法は、トマトを原産地のアンデス山地の気候に戻してやるのです。
アンデスは寒冷の地で雨が少ない、
ですから出来る限り水をやりません。
トマトの枝の先端の色の変化を見て足りないようなら少しだけやります、
ハウスにしてるのも雨をふせぐためなんです。
そうやって育てると、トマトの根には毛根と言う細い根が無数に四方八方に広がって、
トマトはどっしりと根つきます。
植物は根がすべてなのです。
トマトの枝や葉を見てごらんなさい、
うぶ毛のようなものがたくさん生えてるでしょう。
水をたっぷりやらないのだから、
このうぶ毛が生えてきて空気中の水分を吸収するのです。
アイスクリームの中には充分空気が入ってなければいけないんです。
空気と空気でアイスクリームが細かくばらばらの状態にされている訳です。
だから舌の上に載せるとすぐに溶ける。
茶道の本質は、
相手に対してどれだけ誠意こめて尽くすかにあると思う。
人間の命ははかないものだ、
今この瞬間元気であっても何時間か後には死ぬこともあり得る。
だから、大事な人に対する時にこの人に会えるのは今この時だけと思い定めて、
誠心誠意を尽くすべきだというのが茶道の本質だと思う。
その自分の真心をお茶をもてなすことで表そうというのが茶道であって、
作法も茶道具も心映えなんだ。
だから、高価な茶道具を自慢して見せたり作法を知っていることを鼻にかけたりする人間は、
茶道の本質から外れていると思う。
真心を尽くすということは、全ての虚飾を払うということです。
だから茶道の美学は、飾りを捨ててギリギリの本質のみを追求するところに行き着く訳です。
わかったわ、イチゴにミルクと砂糖をかけたんでは、
イチゴが本当に持つ素晴らしさはわからないものね。
寿司ダネが厚かったり大きかったりする物は酢飯を小さく、
タネのうすい物は酢飯を大きくというのが寿司のきまりだよ。
そうすることで、出来上がりはみんな同じ大きさなんだ。
水と一緒に砕いた大豆を煮るんですが、
大豆は煮るとすぐ泡が立つんです。
だからこの段階で、消泡剤を入れるお豆腐屋さんが多いんです。
浅いところで飼われている養殖の鯛は、
紫外線の影響を受けて陽に焼けて黒くなってしまう。
天然の鯛と見分けるのは、この色の黒さを見ればいい。
天然の鯛は、海の底にいるエビや白身の魚を食べるから旨い。
しかし、養殖の鯛は養殖のハマチなどと同じエサを与えられる。
魚の味はエサで決まるんだ。
だから養殖のハマチと同じ匂いと味がするのは当然だ。
そしてせまいところで大量のエサを与えて促成飼育をするから、
不自然に脂がつくブロイラーと同じだよ。
最近の栄養学の説くところによると、
昼に野菜を食べたから夜に食べなくてよいとかいうのは間違っているらしい。
毎食毎食がちゃんと肉と野菜のバランスがとれている必要があるというんだ。
「7」
まともな料理人は、
卵を焼くフライパンはほかのフライパンと区別して、
卵以外は絶対に焼かないようにするんだよ。
人間は生命あるものを食べなければ自分の生命を維持出来ない、
罪深い存在なんですよ。
可愛いフキノトウや寒さに耐えていた小魚達を食べるのはかわいそうだなんて言うのは、
ただの感傷です。
自分自身が罪深い存在であることを忘れた、欺瞞ですよ。
ワサビの細胞の中に含まれている有効成分はそのままでは全然辛味も発揮しない。
細胞を破って空気の酸素にふれると同じく細胞の中に含まれる酵素が働いて
アリルゼンフォイルという辛味と香気を放つ物質に変わるのです。
ワサビの辛味の成分は揮発性なんです。
だから醤油に溶いてしまうと、辛味も香りも飛んでしまう。
すぐれた人間を相手にしていても、
こちらが無知だと相手の真価がわからず粗末に扱って、
それでいい気になっていることがあるものだ……。
牛の肉で旨いのは子供を生んだことのない牝牛肉だ、
それも3年以上良い飼育で大事に育てられた牛だ。
牡牛の肉は味が落ちる、
牛の牝牡の違いは肉の味に決定的にひびくものなのだ。
どこの国の文化にも、それぞれの素晴らしさがあるのよ。
どこか一国の文化の基準の外にあるものは野蛮だと言う人の方が、
柔軟な感受性と物の本質を見きわめる力のない、野蛮人と言えるのじゃないかしら。
「6」
ワインには日本酒に比べてはるかに多く有機酸塩が含まれている、
それがワインの味の豊かさの源だが、
同時にその中の有機酸塩のどれかが、
魚介類の生臭さを強調してしまう働きがあるんじゃないのかな。
黒豚というのは江戸時代に外国から入ってきたバークシャー種の豚が元なんだ。
特に薩摩の黒豚と呼ばれるのは、
サツマイモをたっぷり食べさせ、大麦や野菜や人間の残飯など自然なエサを与え、
地面の上でのんびり遊ばせて育てたからだ。
黒豚の名声に目をつけた養豚業者達は、
高く売れるからというので黒豚を飼い始めたが、
黒豚は体も小さいし沢山もうけるためには、
サツマイモなんか食べさせて広い所でのんびり育てる訳にはいかない。
そこで、狭い場所で大量に飼育する。
すると病気が出るから、エサの中に抗生物質や成長促進剤を入れる。
4ヶ月以上飼っていても、増える肉の量よりエサ代の方がかかるから、
4ヶ月で肉にする。
サツマイモを食べずに育った黒豚なんて、
本物の黒豚とは言えない。
煙草を持った手にヤニのにおいは残って、
水で洗ったくらいでは落ちないのさ。
煙草を吸う人間が料理人になる資格はないもっとも大きな理由は、
味覚と嗅覚が鈍くなって微妙な味の判断が出来なくなるからだ。
煙草のみの舌や鼻の粘膜の細胞は、丸みを失って平べったくなっているそうだ。
感覚器官としての感度は大幅に低下している。
ヤニで汚れた舌や鼻で物の風味を味わうのは、
サングラスをかけて物を見るのと同じだ。
美味しいお茶って、甘みがあってすっきりと気持ちの良い味がするだろう?
そのうま味はテアニンという物質によるものだ。
テアニンというのは、グルタミン酸とぶどう糖が結合したものだ。
手でやるより、体重かけて足で踏んだ方が、うどんに腰が出るからね。
水と塩を加えてねると、
小麦粉の中のグリアジンとグルテニンという2つの蛋白質が結合してグルテンを作る。
そのグルテンが、うどんのシコシコした腰の元なのさ。
下手な人間が打つとやたらと固いうどんが出来る。
固いというのと腰があるというのは違うんだ。
固いうどんなんて最低だ。
ほら、半透明で光を通すだろう。
そして柔らかい、それでいて腰がある、
これが本当のうどんだよ。
「4」
深海の自然の中で育った健康そのものの鮟鱇の肝臓と、
人間の悪知恵で作り出した病的な肝臓、
はたしてどちらがうまいか?
スシっていうのは、
米粒と米粒の間に適度な空気を含んでいないと舌の上でほろりとくずれない。
ネタとシャリの味がうまくとけ合わないのさ。
暗がりの中で動きさえ許されず、
配合飼料を与えられ抗生物質を与えられている鳥と……
日光を充分に浴びて、地面の上を思う存分走り回って、
ミミズとか虫とか自然の葉とかを思う存分食べている鳥と…………
それが同じ生き物かしら……
整髪料やオーデコロンを使う者、
煙草をすうものは嗅覚が鈍感だ。
爪の色つやが悪く、また歯の悪い者はどこか体に悪影響が出るものだしな。
天プラは、人間の五感のすべてを駆使するきわめて高等な技術だ。
眼も大事だが耳が大事だ。
タネのまわりを包む泡が、だんだん小さくなるにしたがって、
泡のはじける音も高くなっていく……
腕のいい職人は、その音の変化で丁度よい揚がり頃を判断しているんだ。
お宅のトマトはまだ青くて熟していないときに摘まれた物です。
長い流通経路を経て店頭に並んだ時に赤くなるために、
色こそ赤いが畑で完熟したわけじゃない、
途中の倉庫の中で赤くなっただけだ。
だからうま味も香りも出るはずがない。
「1」
スキヤキは甘ったるくくどい味つけで肉の風味を殺し、
シャブシャブは肉のうま味を湯の中にわざわざ捨てている。