彼の背中

 あなたの背中
    嫌いじゃないのよ。
 広くて 温かくて
    でもね、
   たまに
    広すぎて 冷たくなって
 判らなくなるの。


あたし達が付き合い始めて もう 4ヶ月になるわ。
「彼って あたしのこと もう 飽きてしまっているんじゃないかしら?」
そう思える事件が、あたしには そう 思える大事件が起こったの。

今日のデート、いつもどおり。
あたしが作ったお弁当を広場で食べて次にお買い物・・・
って言ってもあなたはすぐにゲーセンに行こうとするんだけどね。
それで 公園で少しスキンシップをとった後 交差点でバイバイするの。
でも今日のあなたは一味違った。

  振り向かずに手を振る仕草
  あなたのまた「今度って」合図は
      あたしに届くことはなくて
 あたしは闇に突き落とされたようだったの。

だからあたし ちかちかの青を無視してあなたの背中にしがみついたわ。
「ねえ 今度、今度いつ会えるの?」
「また電話するよ。」

  振りほどかれた腕は 行き場も判らず 涙を流した

 こんな返事が欲しかったわけじゃないのよ?
 マンネリ化してきたデートがいけなかったの?
 まだ太陽は出ているのよ?
 あたしと別れたあとあなたはどうしているの?
 他の女と会ったりなんかしてないよね?

この夜 さっそくのあなたからの電話〈約束はいらないわ〉って。
だからあたしはニコニコで出たのよ。
「ゴメン・・・。ちょっとバイト多めに入れるから。しばらく会えないや。」

あたしは洗濯機を回しはじめたわ。
汚れた洗濯物を洗剤も入れずに洗っていた。
「まるで 今のあたしみたい」
あたしはうっすらと笑って
そのままベッドへと足を運んだの
 いろいろ考えたわ。

なんで突然 バイト 多めに入れたりするのよ。
あたしに会わないようにするための言い訳?
やっぱり 浮気 してるのかな?
あなたを好きな女の子は沢山いるそうですからね。
あぁ あなたはやきもちやかれるのかなり嫌らしいから 表になんかこの気持ち 出しちゃだめよ。
そうよ、あの人いつもお金無いって言ってるし・・・。
きっとなにか欲しい物でも出来たのよ。
でもさ・・・あたし達 映画なんて一緒に見に行ったこと無いし 遊園地なんてもってのほか。
外食する金無いって言うからあたしがいつもお弁当作るし・・・。
あたしは家政婦さんじゃないわよ。
・・・でも ゲームセンターにはよく行ってるじゃないの・・・
なにそれ。あぁ だんだんと腹がたってきたわ。

 夢の中 あたしは一人
 闇の中 あなたのたくましい背中ひとつ
 笑っていた テレビのように
 怒っていた 冷蔵庫のように
 冷めていた あなたがくれたネックレスのように


あたし達が付き合い始めて ちょうど半年の記念日が近づいてきたの。
そしたらずいぶんと成っていなかった林檎が歌った。
「・・・久しぶり・・・。」
「おぅ、今度29日 みどりの日さぁ 遊園地いかねぇ?」

あたしは11月のスケジュール帳を開いたの。
11月29日につけられたハートを見てにっこり。

 この日見た 夢 あたしは 一人
 その夢の中 あなたの背中 一つ
 笑っていた 太陽のように
 踊っていた その背中は蝶のように
 困っていた あたしのクモの巣に
 あなた 苦笑い

にこにこにこにこ あなた あたしの つぼ を知ってる。
上手にあたしをコントロールするわ。
あなた 頭がいいから。
かっちょいいから。
・・・あたしがあなたを好きなほどあなたはあたしを好きじゃないから・・・。
いつもいつも あたしは必死よ。
あなたがいつ あたしから逃げ出すか判らないから。
不安だから。
張り巡らしたクモの巣はとっても切れやすいのよ。


みどりの日 あたしは早起き
あなたの大好きなイチゴジャムをパンにはさんでカバンにいれた。

祝日の遊園地ってなんて人が多いのかしら?
人込みにもまれてあたし達 はぐれてしまったの。
でもね、大きいあなたはすぐにちっちゃいあたしをみつけてくれたの。
そして「もうはぐれないように」ってあたしの手を引いてくれた。
あたし あなたに 惹かれていた。
この前のあなたの背中は確かに、広くて冷たかったのに・・・。
久しぶりのあなたの背中は

力強くて たくましくて 広くて 温かくて 優しくて
あたしは思わず涙を流したの。
振り返ってあたしを見たあなた あたふた どうしていいかわからないって様子でこう言ったの。
「な・な。あのさ、ちょっと早いけど、腹減らない?」

ベンチに座ったあたしは 顔を林檎にして ペシャンコサンドイッチを取り出したの。
あなたは苦笑いをしていたけど 中身がイチゴジャムなのを知ってにっこり。
「覚えててくれたんだ。」
もちろんですとも。

 そしてあなたはポケットから箱を取り出してあたしにくれた。
多めのバイトはこのためだったのね?
「末永くよろしくお願いします」だって。
残念ながら 指輪は小指サイズでちょっと悲しかったんだけど でもいいの。
今日のあたしの心はぽかぽかだから。
 こちらこそ末永くよろしくお願いします。
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