金子 みすゞ の世界





長野県諏訪市霧ヶ峰高原にて 2012.7.27

 

   草原

露の草原
はだしでゆけば
足があをあを染まるよな。
草のにほひもうつるよな。

草になるまで
あるいてゆけば、
私のおかほはうつくしい、
お花になつて、咲くだらう。


T-41

 

  草山

草山の草の中からきいてると
いろんなたのしい聲がする。

「けふで七日も雨ふらぬ
のどがかわいた水欲しい。」
それはお山の黒い土。

「空にきれいな雲がある
お手々ひろげてつかまうか。
それはちひさな蕨の子

「お日さん呼ぶからのぞかうか。」
「私もわたしも、ついてゆく。」
ぐみの芽、芝の芽、芽萱
(ちがや)の葉
いろんなはしやいだ聲がする。
春の草山にぎやかだ。

T-126





  草の名

人の知つてる草の名は、
私はちつとも知らないの。

人の知らない草の名を、
私はいくつも知つてるの。

それは私がつけたのよ、
好きな草には好きな名を。

人の知つてる草の名も、
どうせ誰かがつけたのよ。

ほんとの名まへを知つてるは、
空のお日さまばかりなの。

だから私はよんでるの、
私ばかりでよんでるの。


U-104

 

   
  草原の夜

ひるまは牛がそこにゐて、
青草食べてゐたところ。

夜ふけて、
月のひかりがあるいてる。

月のひかりのさはるとき、
草はすつすとまた伸びる。
あしたも御馳走してやろと。

ひるま子供がそこにゐて、
お花をつんでゐたところ。

夜ふけて、
天使がひとりあるいてる。

天使の足のふむところ、
かはりの花がまたひらく、
あしたも子供に見せようと。


U-128



POEM  BY KANEKO MISUZU
PHOTO  BY BLUE-RING

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