金 子 み す ゞ 詩集

POEM KANEKO MISUZU

 

  おとむらひ

ふみがらの、おとむらひ、
鐘もならない、お供もゐない、
ほんに、さみしいおとむらひ。

うす桃色のなつかしさ、
憎い、大きな、状ぶくろ、

涙ににじむだインクのあとも、
封じこめた花びらも、
めらめらと、わけなく燃える、
炎が文字になりもせで、

すぎた、日のおもひ出は、
ゆるやかに、いま
夕ぐれの空へ立ちのぼる。



 婦人画報 大正12年9月号



  パチンコと雀


雀がお屋根で
ふくれてた
お手まりみたいに
ふくれてた。

パチンコでびつくり
逃げてつた
ひとりでぷりぷり
おこつてた
ぷりぷりおこつて
ふくれてた。

主婦の友 大正13年4月号


  浮き雲

はなればなれの
浮き雲よ
やがて消えゆく
おなじ身の
おなじみ空に
ありながら
なぜにはなれた
浮き雲よ。
春のあをぞら
日のひかり
こころごころの
ひとり旅。



「婦人世界」大正13年7月号


これらの詩は全集に含まれておりません

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