「月姫 〜彼我の零距離、キミとボク〜」
第7夜 IN THE MOONLIGHT
−原題 真実は月光に照らされて… グラスに雪ぐ彼の者への想い− 中間まとめ
この「月姫 〜彼我の零距離、キミとボク〜」を書き始めてから、不思議と自分という存在の内側に秘めるものが見えてきだした。この話を日記に書こうと決断した直接的な切っ掛けは友だちさんに彼女との思い出を話し始めたことに有るのだろう。
夢が醒めていくように、吹雪が徐々に弱まって来るように昔のこと、口では話しきれないことを思い出しながら、振り返りながら書いています。
実はこの話(1月19日から前日の日記を参照)をとある高校時代の今はボロアパートで一人暮らしをしている友だちさんに話したことがあるのです。(2002年10月2日参照)
この友だちさんは意外なことにカクテルを作る才能が有って、話している最中につくってくれました。
カルーアミルクやそれに良く似た種類のゴディバミルクなんかから入ってカクテルをいくらか飲んでからの会話でかなり饒舌だったのですね。
彼のアパートの上の方に埃の積もった食器棚の半分をカクテル用のお酒やミニボトルの類、グラスやシェイカーなどの道具が占拠していてそれがボロアパートにはとってもアンバランスで、彼らしさを感じてしまう。
ちなみに、彼は少なくともタバコの煙を嫌うウェイシャンや婦女子の前と、そしてカクテルを嗜む時にはタバコを吸わない。その配慮はすごく嬉しく思うし、そういう風に素直に言うと彼は「カクテルの味がわからなくなる。だから、俺自身のためだ」というがそれは一面的で答えになっていないと思う。
うん。とっても優しい人。
そんな友だちさんは自分とウェイシャンと頃合を見ては交互にいろいろな飲み物を作りながら与太話に興じ、何時の間にかお互い、男子なら当然聞くべきだろう「経験」の話を今まで話したことが無かったなってことで、きわどい話になって自然とこのディープなキスの話になったんです。
世話女房に世話をするのは当然だろうと彼は言う。
比喩表現抜きで自分が女の人なら彼に惚れていたかも知れないが、多分女の人じゃないから彼の側にいることが出来るのだろう。
ちなみにつまみはウェイシャンが用意しました。彼の言葉を借りるならば、お世話になっている専属バーテンダー兼話し相手兼ようじんぼうに料理を作ったり、お菓子を提供したりをするのは世話女房として当然のことだ。
独自の生き方が板についていて、同性から見てかっこ良いと思わせる友だちさんは言います。
「自分自身に酔えないようじゃ。他人を酔わせることは出来ないぞ」って。
すごく気障です。しかも、ナルシストに聴こえる。
でも、そういうの好きですよ。
カフェ・オ・レのことを「恋の飲み物だよぅ」といいながら飲んでいた彼女と同じくらいには、ね。
「自分が気持ちよくなくては、人を気持ちよく出来ない」
友だちさんはそういうことを言いたいに違いない。だったら禁忌とか背徳とかってのはウェイシャンにとっては快楽という名のメインディッシュを引き立たせるためのハーブですね…ふふっ。
この友だちさんは今まで出会った中では彼女と同じくらいインパクトが強い。
言うなれば、セカンドインパクトだ。ちなみに魂のルフラン的なサードインパクトも有るけれど…それはまた別の話。
しかもそのカクテル+パソコンビンボーな経済状態は、一歩間違えば「銭形金太郎」というテレビ番組に出演できそうなくらい。だけれど、まあ彼自体はまっとうそうな人だからキャラクターの面でダメそうだけれど、ね。
でも、友だちさんはお部屋の片付けもろくに出来ないで、一週間ほどご無沙汰していたらお部屋を熱帯雨林に変えてしまう。友だちさんはせめて亜熱帯にしろと主張なさるが、何から何まで散乱してしまい、様々なものや匂いに溢れる(大部分は彼の匂いだが)彼の部屋を見ていると、そういうことは瑣末な問題になるのです。
冬ならまだしも、夏に掃除(特に水周り)をしないのは自殺行為だと思う。
食生活はほぼ絶望的にカップラーメン等インスタントに括られ、何だかたまにはまともなものを食べさせなくてはと躍起になってしまい、こうして一週間から二週間に一度、彼の部屋に足繁く通う日々が続いている。
母親が最近では家にずっといるので、全然振るわれること無くなったウェイシャンの料理の腕はこうして維持されているのである。
パソコンなど電子機器に六畳間の大半を占拠され、それがファンの駆動音と、DVD−RW(+−含む)ドライブが何かを書き込んでいる音をけたたましく挙げているが、デスクトップの電源は消されていて何をしているのか良くわからない。それが彼のいかがわしさを演出していて、その側での何度目かのカクテルパーティに今回も及んでいる。
言っておくがドラッグパーティじゃない。
でも、畳に座ってカクテルを飲むなんて経験をしたのは正直ここでだけ。
実は、彼がパソコンで何をしているかウェイシャンは知らない。
カクテルを飲み始めた日には、最後にウェイシャンが酔いつぶれてしまうので、その後で彼は何かしらの作業をしているらしいが、特にそれは気にすることではない気がする。
気が付いたら翌朝、彼の匂いの染み付いた毛布で部屋の隅に簀巻きにされて転がされることが有る。友人に対する対応としては酷すぎるだろう。
でも、ウェイシャンは酒癖の悪さや酔うと頭痛を起こしやすいという理由から、彼のそばでしか酔えないし、彼ならばウェイシャンが何を口走ろうと許してくれそうな気がする。
ウェイシャンは彼を大切に思うし、出来ることなら彼のような人には出来る限り長く友だちでいてもらいたい。
だから、肝心な部分は相手が教えてくれる気になるまで触れないのが、良い友達付き合いをしていくコツだと思うし、何年も友達をしていれば、いつか色々と彼のことを聞くことが出来るだろう。
そう思って世話女房みたいな、今を過ごしている。
彼との付き合いの再開は一昨年の10月からだった。
パソコンに関しては、それこそクリスクロスさん(2004年1月8日参照)と変わらないほどの力を誇るだろう彼のお陰で今までトラブル無くインターネットの世界で無理が出来ているのだからありがたいことだ。底が知れずに怖いのもまた事実だが、それはクリスクロスさんも同じ。
ウェイシャンがこの人には勝てないと思う人物は大抵、底が深すぎてアビス(深淵)のようだ。
実に混沌(カオス)好きのウェイシャンらしいですよね。
彼の座っているところからほとんどのものに手が届く環境は相変わらずだが、それも大分、綺麗になったと思う。ウェイシャンが頑張って掃除しているし、他の友だちも見かねたときにはしていてくれるそうだ。
やりがいがあるし、楽しいからそうしている。別に強制されていないので悪しからず。
その日、ボクが友達さんに彼女のことを話したのは偶然のことまたは偶然の名を借りた必然かも知れない。
その日は満月が綺麗な日だったから、たまたま彼女と過ごした日を思い出したから、そして酔ったせいだという事に出来るからだったんだろう。
彼女との話をしたのは正直初めてで、多分、中学校時代の友だちさえも聞いてないはずだ。
彼女のことを人に話すと、人によっては彼女のことを恐れる。
ちなみに、最近のスタンスとして病院の話をするときには病名や具体的症状の話はオフレコにしている。 命に関わる話しだし、もし読んでいる人がウェイシャンがいう病気に近いものやそのものだった場合心理的に与えるダメージは壊滅的な域に達すると判断しているからだ。
大体、病名を聞けばそれがどんなものかの推測は出来るし、病気とその進行具合を聞けばその人の道が何処で途切れているか理解できるので出来れば人の病気の話もご勘弁なのです。
しかも彼女は家系的にも複雑な存在で、世間では白子とか遺伝的に問題のある娘として疎まれる節がある。
私にとっては自慢の大親友で有り、ある時期からは本当の意味で彼女になったが、一度、彼女のそれで彼女自身に被害が及びそうになるのを裏に手を回して、実力(ウェイシャン自身のものではなくてパイプのある社会的権力に協力を仰いだ)で阻止した経験が有ってからは他人に話していない。
それになにより彼女はボクだけのもの。ボクは彼女のもの。
人に自分の彼女をひけらかしたがるのは、その娘がそばにいて自分だけを見てくれる大切さを知らないバカな物好きだけだとウェイシャンは思うし、何があっても彼女を守りきれると思える日までは人に話はしないと決めていたのです。
だから、ここからが人によっては衝撃を感じる部分でしょうけれど、聞いていたとしてもそれは多分、彼女とボクが創造し、自らの一部分を反映させた架空の人物NPC(ノン・プレイヤー・キャラクター)で「ある少女」の話だけのはずだろう。
この物語りの人物の話はいずれするとしても、「ある少女」は誇るべき彼女がいるということを彼女の存在無しに語りたかったもう一人の私の傲慢さや見得だったんだと思うが、彼女に付いての記憶が曖昧だっただろうもう一人の私が彼女のことをどう捉えていたのかは分かりはしないことだ。
もう一人の私の話は本来隠すべき家の事情を暗喩的に話しているため、今でも中学時代の友だちに突然指摘されると「あの事か」と察しがついて言い訳に必死になるのです。
多分、もう一人の私はもう一人の私に挑戦していたのかも知れません。
一番怖いのは、自分という名の敵なのです。
「ウソはいけない。暗喩的なことだがアレは危険すぎる…だからウソに見えるのは一種の僥倖だろうか」
当時の中学時代の人をだますつもりは無かったが、当時の私にはいじめで苦しんでいた生活の反面、彼女と共にあって辛い治療を耐え忍んでいた二人の自分がいたのだ。
どちらかが消えなくてはならない究極の選択と闘いで生き残ったのはこの私だった。
意外と多く、世の中には究極の二択は転がっているものです。
例えば、丁度二ヵ月後に発売されるDQXでのとある究極の選択肢とかも、ね。
ちなみにウェイシャンは悩んだ末に幼なじみではない方を選択したのですが、皆さんはどうでしたでしょうね。
仮に主体としての魂というものが有るとしたらその魂が選んだ器がこの私で、私が私になったということだったんだろうと思うのです。
だから、いじめで苦しんでいたほうの自分が記憶ごと砂の城の如く崩れても、私=ウェイシャンの存在は残っていてこうして皆とお話できるという訳。
二人いた自分が一人だけ残っている。今でも私はもう一人の私を失ったことは後悔していない、後悔しても始まらない。確かにあの時、もう一人の自分は彼の地へと還っていったのだ。
だからもう一人の私は責任があってどんなことがあろうとこの先、絶対消えるわけには行かず、今は私だけが私だ。
もう一人の自分の願いも引き継いで、ウェイシャンは今日を明日を歩きつづける。少なくともそれは十字架じゃない。
かつての自分を覚えているのは、なんでも日記にしていた自分のお陰もあるのだが、それはそれ。記憶の上書きという意味では最良の素材だったということ。
人によっては驚くべき内容を含んでいるかも知れないが、ウェイシャンとは元々そういう人だということなのだ…日記を書いて自分を整理してやっとここまで行き着いたのです。
話は戻りますが、そんな経験話の途中から、どもりまくりながら、つまずきながら、恥ずかしながらもキスの話をしていていました。同性だからこう言う話も気軽に出来ます。
そんなウェイシャンの話を聞いてた友達さんが振舞ってくれたカクテルの名前がKISS IN THE DARK。
ドライ・ジンとドライ・ベルモットとチェリー・ブランデーでつくるカクテルです。
ジンとドライ・ベルモットでかの有名なマティーニですからこのカクテルはチェリー・ブランデーが鍵になります。キスとかチェリーとか言う名称のとおり紅色のカクテルです。
彼のシェイカーから深いながらも透明感ある赤色の液体がカクテルグラスに満たされていくのを見て、彼女のことを思い出しました。
「飲んでみろよ。強い奴だが、お前に相応しいはずだ」といわれて、口をつけました。
アルコールは控えめにというウェイシャンの要望でできる限り味を損なわない程度に抑え目にされているそれは喉にすっと入っていきます。
その後、お酒独特の喉から胃からがかあっと熱くなっていく感覚がしました。ウェイシャンがあの時抱いた思いはこれに似ているのかもしれません。
友だちさんが言うにはアルコール度数二十度以上でカクテルの中では度数が高いほうだそうです。
そうでしょうね。お酒にお酒を合わせるカクテルですから、まさに暗闇でのキスの名に恥じないです。
カクテル全般がそうだけれど、ビールとかと違ってなかなかすんなり飲めるのです。
でも、悪酔いしやすい。お酒と上手に付き合える人か、この日のウェイシャンみたいに専属バーテンダーがいるときに飲むのがオススメです。
キス・イン・ザ・ダークなんてバーでは頼みにくい名称ですが、ウェイシャンは好きな味です。
今日のタイトルはこのカクテルから来ています。
あと、キッス・オブ・ファイアって言うもっと洒落た深紅のカクテルがあるって教えてもらいました。
強いお酒は苦手だけれど、たまにはいいものです。特に甘さと辛さが同居する思い出話の時にはこのカクテルの口当たりが心地よかったりします。
だって甘い物ばかりでは、いつか味覚が麻痺してしまう。
時々辛い物を味わうからこそ、甘い物を甘いと感じることが出来るのだから。
空には満月、彼女の優しさを思い出した気怠い思考の中で、ふとそんなふうに考えました。
その友人が一言…「お前って案外、鬼畜だったんだな。
いつかはそんな行為に走ると思っていたが、ガキの頃からどっぷりはまっていたとは、いやいや認識の甘かった俺を許してくれよ」と肩をすくめて笑いました。
あわわっ、やっぱりそうなんですかぁ。世間の認識に何もいえません。
続けて追い討ちも掛けられていて…「そうだ。お前、チビッコにもてるけど、頼むからいたいけな少女たちに手を出すなよな。俺モザイク掛かった状態でテレビに出てお前についてコメントするの嫌だからな」
誰も、そんなことしませんってばあ。
って言うか友人よ。わたくしを信じてください。
何よりも確かで信じられる優しさ、膨れるウェイシャンの頭を乱暴だが、決して痛いところに触れないようになでまくる大切な友だちさんの温かい手のひらを感じながら思った。
『子どもの思い出に注ぐ大人のココロ。雪ぐ事で、大人になれるのかな』
紅い唇を吸う喜び −悦楽あるいは罪悪ー 私は罪深き楽しみを知ってしまいました。
これはそれだけの話。
初出 2004年01月25日(日)
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