SPの無料化

ハイパーネットの稿でも書いたように、「無料ISP」というのがうまく行くとは信じていません。しかし、ユーザがインターネットアクセスにお金を払わなくなる可能性はあると思っていますし、そうなる方が望ましいとも思っています。ただし、それはISPがユーザからお金を受け取らなくなることを意味してはいません。ユーザからもらうお金の名目が「アクセスサービス」では無くなるということです。

CDを買う時にプラスチック盤に対してお金を払っていると思っている人はいません。皆、音楽を買っていると思っています。インターネットも同様に、インターネットにより得られる利便に対して対価を払っている、という意識で皆が利用できる環境に進化すべきではないかと思っています。

現在、ADSLを筆頭とする「ブロードバンド化」の流れで、インターネットプロバイダ料金のビットあたり単価は急速に低下しています。ちょっと乱暴な一般化をすると、インターネットにアクセスして得られる情報の価値に対する、プロバイダへの支払いコストの比率が急速に低下しつつあると言えるのです。先のCDの例で、もしプラスチック盤のコストがCDの価格2800円中の2500円を占めていたら、人々がCDを買う時の意識も異なっていたかも知れませんが、現実にはプラスチック盤のコストの占める割合は非常に小さいため、人々は純粋に音楽を購入していると 思えるわけです。エンドユーザへのアクセスラインが広帯域化するのに伴い、多くのコンテンツプロバイダが、有料化するに足るクオリティのコンテンツ提供が可能になりつつあると考えています。今後、多くのコンテンツが有料で販売されるようになり、プロバイダがそれらの料金回収を代行するような形になれば、そして、人々がコンテンツに対して支払う金額が十分大きくなれば、プロバイダがアクセスに対してことさらに料金を請求することがなくなることは十分に考えられます。

 


ISPがアクセスサービス無料化に至る過程を、マンガ喫茶と対比させながら、図式化してみました(図1)。ISPの変遷の方は予想半分、期待半分といったところですが、マンガ喫茶の変遷については、このようになると予想したり望んだりしている、ということは一切ありません。純粋に比較対照のために、マンガ喫茶に同様の変化が起こるとすれば、という仮定の状態を示したに過ぎません。
コンテンツサービスの本質から言うと、「お茶を飲んだら、マンガ読み放題」よりも「本を買ってくれたら、お茶のみ放題」の方が真っ当なビジネスモデルだとは思いませんか?
しかしながら、インターネットプロバイダの現時点でのビジネスモデルは完全にマンガ喫茶型です。加入して月額費用さえ支払えば、コンテンツは見放題、というのはマンガ喫茶にとてもよく似ています。マンガ喫茶に足を運ぶ人の目的は、当然マンガ(コンテンツ)なのですが、それは彼ら自身(マンガ喫茶)の作品ではない、というのも良く似ています。
インターネットの世界では、コンテンツ有料化は「悲願」とも言える命題ですが、いわば、マンガ喫茶のビジネスモデルから、至れり尽せりの無料喫茶室を併設した書店のビジネスモデルへの進化と言えると思います(図1の最下段)。書店ビジネスの本質からすれば、喫茶室を併設する必然性はありませんが、たまたま、マンガ喫茶のモデルからスタートしていろいろなサービスを既に提供してしまっていますから、「今さらやめられない」至れり尽せりの無料サービスが有料コンテンツに付随して提供され続けるのではと言う予測です。

このシナリオが仮に現実になると、現在の「無料ISP」にとっては「無料」であることが何ら差異化要因にならなくなる、ということで既存の大手ISPに対して苦戦を強いられることが予想されます。一方で、このような形態の事業運営にはユーザベースがクリティカルマスに達しているか否かが明暗を分けることになりますが、今のうちに「無料」を武器に十分な会員数を確保することができれば、その後の競争に有利に働く可能性も大いにあります。ただ、その場合に懸念されるのが料金回収インフラです。図1の一番下のフェーズでのISPビジネスの本質は(コンテンツの)料金回収です。無料ISPが無料でのサービスを可能とする過程で、金のかかる料金回収インフラを整備していなかったとしたら、せっかくの会員数をうまく活かせない恐れも出てきます。

各社のコンテンツ配信サービスへの急ピッチでの傾倒を見ていると、アクセスサービス無料化のシナリオの成否は2002年中にはかなり白黒がはっきりするのではないかと思っています。期待を込めつつ行方を見守っていきたいと思います。

 

2002/1/6

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