駆け込み乗車禁止のナゾ(注1)
ずっと前から疑問に思っていたことがある。駅に貼ってある「駆け込み乗車禁止」のポスターは何のためにあるんだろう、ということである。
階段を降りかけたら、ホームに今にも出発しようとしている電車がいた、というシチュエーションで普通の人はどういう行動をとるだろう。特に体調が悪い、とか、後から来る人を待っている、とかの事情が無い限り、駆け込むに決まっている。そこに、「やめましょう」というポスターが貼ってあるからといって、それに従う人なんかいるのだろうか?仮にいたとしても、100人に1人とか1000人に1人とかのとってもとっても奇特な人に違いない。そんな奇特な人「だけ」のために、ポスターの制作費を使って、そのポスターが無ければ販売できる広告スペースをつぶして、何故そこまでして「駆け込み乗車禁止」のポスターを貼るのかが全く理解できなかった。
が、ある時ひらめいたのである。
このポスターは「社内向け」なのかもしれない。
首都圏のラッシュ時の過密ダイヤを維持するのは大変なことである。何とかして定時発車したいのに、人の波が切れない、もうドアを閉めようかと思うと何人か駆け込んで来る、駆け込んで来る人の前で閉めようかと思うが、可哀相だし危険でもある、そういうジレンマが常に車掌さんを悩ませているんだろう。
しかも、現場を知らない管理職の連中が「定時運行遵守」などとできっこない目標を掲げたりするのである。労使交渉の場で以下のようなやり取りがありそうなことは容易に想像がつく。
使「もうちょっと、定時運行率は上げられないものかね?」
労「無理ですよ。無理に決まってるでしょう、乗り降りするお客さんがあれだけ多いんだから。それともなんですか、お客さんをドアで挟んでケガをさせてでも定時運行死守ってことですか?」
使「いやいや、そこまでは言っていないだろう。でも、会社としても少しでもお客さんが無理な駆け込みをしないように訴えるから、それに、もしドアに挟まれてもお客さんの方が悪いんだという雰囲気作りに努めるから、可能な範囲でもう少し努力できないかねぇ?」
労「こっちは現状でできる限りのことは既にやっているんだから、約束はできませんが、そっちの『雰囲気作り』とやらの成果が上がれば、それなりの結果は出るんじゃないですかねぇ。」
使「よし、じゃあ何とかその線で、駆け込み乗車を悪者にする一大キャンペーンを展開するから、よろしく協力をお願いするよ。ポスターの効果を倍増させるために、無理に駆け込んだお客さんを社内アナウンスで思い切り責めたてて、居心地の悪い思いをさせる、というのもあわせてお願いするよ。」
労「分かりました。それでこっちの仕事も多少なりともやりやすくなるのなら、取りあえず協力はしましょう」
なんて、如何にもありそうでしょう?
実に日本的過ぎる構図でいやになっちゃいますね。という訳で、ご理解いただけましたでしょうか。あのポスターのメッセージは客に向けられているわけでは無いんですよ。「会社側もこんなに努力をしていますよ」、という態度を組合側(?)に示すものなんです。これを読んで、駆け込み乗車禁止ポスターが自分に向けられていないことに気付いたあなた、すっきりした気持ちで、今日も発車間際の電車にゴー!
次回は、電鉄会社労使関係シリーズ第二弾、携帯使用禁止のナゾです。
(注1)このタイトルのスタイルは筆者の定点観測サイトの1つ「今日の必ずトクする一言」にあやかったものである
2001/11/11
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