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耳の奥ではまだサイレンの音が鳴り響いていたけれど、両手を耳から話した。 このサイレンは一体なんなのかを彼に聞こうとして振り返ると、彼の表情がどことなく柔らかくなっているのに気づいた。 「どうしたの?」 あたしの言葉に彼は長いため息で答えた。 「終った」 両手に抱えていたマシンガンを地面に投げ出すと、彼はその場に座り込んだ。 「今日もお互い何とか生き延びたね」 さっきまでの厳しい口調もうって変わって、とっても気さくな感じだった。 そんな彼の変貌に、あたしの頭の中には?マークが何個もぐるぐると回っていたの。 なに?なにがなんだか分かんないよ?!さっきまでと雰囲気が全然違うじゃない?あのサイレンはなによ?っていうかここは何なのよ? そんなあたしの混乱をよそに、彼がほのぼのとした様子で胸ポケットから白いハンカチをとりだした。 「血、拭いたほうがいいよ」 「血なんてどうでもいいわよ」 「いや、でも頭の血はけっこう出るから一応押さえておきなよ」 こんなときだっていうのに、微笑む彼にあたしはまた頬が赤く染まるのを感じた。 「そんなことじゃなくてあたしが知りたいのは……」 ん?でもそういえばさっき血が…… 顔を覆うマスクをはずそうとして、あたふたしているあたしを見て彼はおかしそうに笑った。 立ち上がるとあたしの頭の後ろに手を伸ばしてマスクを外してくれた。 「あ、ありがとう」 お礼をする言葉のなかに、ちょっとだけ怒ったふりのエキスを振りかけてみたわ。 自分では上手くできたと思ったけどどうだったんだろ? そんなことを考えながら顔に手を当てると、さっきと同じヌルリとした嫌〜な感触が伝わってきた。 「ほら、すごいよ」 そう言って親切にも差し出してくれた丸い鏡の中に映るあたしの顔は真っ赤に染まっていたの。もしこんな状況でなければ彼はあたしの顔が真っ青になっていくのを見て取れたはずよ。 あたしは目の前が真っ暗になって、そのまま何にも分からなくなっちゃったけどね。 つづく |
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2002年07月12日 21時19分52秒
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あたしは自分の顔がみるみる熱くなり、心臓の音が大きく早くなるのを感じた。 だって憂いを秘めたように輝く瞳も、すらりと伸びた鼻筋も、静かに結ばれた唇も、全てのパーツがまるで夢のような美しさだったの。 男の人に綺麗なんて言葉を使うのは失礼かもしれないけれど、彼は本当に綺麗な顔をしていた。 でも、それは決して弱々しい印象を与えるものではなく、その目に宿る男らしい力強い意思の光は、アンバランスで妖しい魅力を醸し出していた。 彼を見ているうちに自分の胸の先が固くなるのを感じて、あたしはますます顔が熱くなったの。 「どうした?」 「なっ、なんでもないっ!!」 不思議そうにあたしの瞳を覗き込む彼に、必要以上に大きな声で答えてしまった。 だって、なんか自分の心を見透かされているような気がしてとっても恥ずかしかったんだもの。 ウ〜〜〜〜〜 心臓が別の驚きにまた飛び上がった。 荒野に轟くサイレンの音は、長く尾を引くように響き渡った。 つづく |
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2002年04月30日 22時57分10秒
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砂の中から引き出されたあたしは、まだ状況がよく理解できずに、手足をばたばたさせていた。 手袋をした手があたしの両手首を掴んで、虫のような顔があたしの前にあるガラスにコツンと音をたてた。 「おちつけ」 静かだけど断固とした意思が込められた言葉に、あたしは落ち着きをとりもどした。 「わかったわよ。もう暴れないから。手ぇ痛いよ…」 「いいだろう」 あたしの手首からゆっくりと手を離した彼は、顔を覆う虫のようなマスクを毟り取った。 現れた顔に、あたしは息を呑んだ。 つづく |
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2002年04月13日 23時06分05秒
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衝撃とともに大量の砂があたし達の身体にふりかかってきた。 その凄まじいまでの勢いにあたしは咳き込むこともできなかった。そんなパニックのあたしの顔に、ちょっと暖かい何かが押し付けられる。 とたんに呼吸が楽になって、視界もはっきりした。目の前にある透明な仕切りのむこうにびっしり詰まった砂。 ぞっとした。生き埋めになりそうなことに気づいたから。 とにかくこの状況から逃れたくてあたしは力の限り手足を振り回した。 「やだ、やだやだやだ!誰かたすけて〜!!」 でも、もがいても、もがいても目の前の砂はなくならない。 もう死ぬんだ…… そう思ったとき、あたしの腕に何かが絡まるのを感じた。 つづく |
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2002年04月03日 22時36分13秒
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彼はあたしの手を掴むと何も言わずに引っ張った。 「痛いっ!」 抗議の声をあげてるのに、ぜんぜん力を緩めてくれない彼の姿が突然きえた! と思ったら、急に真っ暗になったの。びっくりしたけど、あたしの手を握る手の感触があったから怖くはなかった。 でも、次の瞬間あたしは鼓膜が破れそうな轟音にさらされた。 「きゃあっ!!」 自分の声で音を掻き消そうとしたけど無駄だった。逆に音と一緒に襲ってきた凄い振動に、舌をかみそうになっちゃった。 つづく |
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2002年04月02日 17時19分12秒
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「うごくな。ゆっくりと振り返るんだ」 言葉と同時に背中に突きつけられた鉄の感触よりも、静かだが、鋼の意志を備えた声のほうが怖くて、あたしは彼の言葉通りにゆっくりと振り返った。 その顔を見て、あたしは他人がみたら滑稽なほどびくっとした。 だって、真っ黒なバイザーに包まれた顔は、その周りを包むフードとあいまってまるで昆虫人間とでもいうべきものだったんだもの。 「女か?どこの所属だ?」 「所属?」 昆虫人間が、混乱するあたしに両手で抱えたマシンガンを向ける。 「所属だ。ふざけてるのか?」 「ふざけて…ないよ」 震える声で必死に訴えるあたしの様子をみて、困惑したようにバイザーの奥からため息が聞こえた。 つづく |
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2002年03月18日 20時51分00秒
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びっくりしたおかげで頭がしゃきっとした。 乾いた音の正体は銃声で、頭をかすめたのが銃弾であることが頭のなかに突如として閃いた。 「いたいよー」 自分でも間が抜けたセリフだと思いながら頭を抱えていると、背筋にぞくっとする感覚が走った。 「誰!」 心の中ではそう叫んでいるのに、あたしの身体はまるで魔法でもかかったかのように動かなかった。 「おまえ、ここで何をしている」 錆を含んだ重い声が、あたしの背中に突き刺さった。 つづく |
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2002年03月16日 23時25分27秒
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鋭い破裂音に、あたしは目覚めた。 吹きすさぶ風に煽られた髪の毛に混ざって金色の粒が目の前で踊る様子はこの上なく美しくて、あたしはこの異常な状況を一瞬忘れて見入ってしまった。 「きゃっ!」 再び響いた破裂音に反射的に悲鳴をあげると動じに、頭の横に風を感じた。 なに?一体なんなの?! 風に乱される髪の毛を押さえようとすると、手のひらに生暖かい温もりを感じた。 何気なく目の前に持ってきた手をみて、息が出来なくなる。 手のひらが真紅に染めてるこれはなんなの!? ……つづく |
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2002年03月15日 23時07分07秒
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