花籠に月を入れて 漏らさじこれを 曇らさじと 持つが大事な

 

 何となく、寝返りを打った。衣擦れの音。暖かい絹の。その中に顔を埋めて。つるりとした肌触りを頬に感じる。溜息を一つ、気付けば二つ。

 花籠に月を閉じこめて、この光を漏らすまい曇らすまいと、そうすることが大切なのです。

 その通りだ、この歌は遊女のモノだと言うけれど。その通りだ。花籠に秘密を閉じこめて。でも何処に吐き出せばいいのだろう。目を閉じて、寝返りを打った。仰向けになる。なんとなく、そこかしこに彼が居た感じがする。

 彼は居た、もう居ない、次は何時なのか。泣きはしないが。

 腹が重い気がする。

 彼は他に好きな人がいて、その人も手に入らない。手にはいるのはほんの一部の人達だけで、世界の底辺を成す人に、あんまりそういうことはない、と思う。

 花籠に月を閉じこめて,光を漏らすまい曇らすまいと。

 誰にもつむがれない言葉は宙に消えた。何時か曇ってしまうであろう、それでも。