我をたのめて来ぬ男
 角三つ生ひたる鬼になれ さて人に疎まれよ
 霜雪霰降る水田の鳥となれ さて足冷かれ
 池の浮草となりねかし と揺りかう揺り揺られ歩け

 

 吐きそうだったし、事実戻しそうになりながらもそうしなかったのは偏に彼のおかげだ。

「どうしてそーゆー顔するわけ? やだなぁ、まるでこっちが君を捨てるみたいだ」

 事実そうなんだよと言いかけて、私は彼を睨む。そうすることしか出来ずに、そして彼は視線を明後日の、窓へと向けた。苦しみで胃の中の内容物が逆流しそうだ。彼が好きだと言ったこと、全て私に対する迎合だったというのだ。桜の花びらが彼が見ている窓に張り付くのが見えた。

 彼と会ったのは桜の咲き始める前で桜が咲き始めた頃には彼の身長は私の身長を追い抜かしていた。面倒見が良さそうな彼は何時でも人気があって、その当時でもその時女王のように傅かれていた人と噂があった。後に聞いた話によると、彼は遊ばれていたらしいと。そうであるなら私の気持ちも解りそうな気がするのに、彼はこちらを向かない。何を考えているのか。歯を食いしばる。痛みが頭の中を支配する、目が熱い。

 私を好いてくれないのなら、鬼になってしまえばいい。嫌われてしまえばいい。

 彼が何となく立ち上がって、喫茶店を出ていくのを私は見た。