『七番目の王子様と花咲かせ人』


 昔々、花咲かせ人が一つの大きな国にやってきました。
『花咲かせ人』とは、その名の通りつぼみをつけた花を咲かせるために神様が天から降らせた者たちです。
大きな国に降ってきたのは透き通った緑色の長い髪を持つ女の子でした。彼女は、まず始めに王様の元へ向かいました。国中の花を咲かせるためには国の持ち主に許可を貰うのが一番だと思ったからです。
 王様の下に行くと、彼女は一輪のつぼみをつけた花を咲かせてみました。これには王様は大喜び。さっそく国中の花を咲かせよ、と彼女に命じました。
 彼女は次々と国の花を咲かせていきました。そして、とうとう最後の木にたどり着きました。この木を咲かせたら次の国に行けると思った、その時です。彼女は誰かに押さえつけられていました。必死に抵抗しますが、彼女の力はとても弱いためその手を振り解くことができません。辺りにはたくさんの王様の兵士たちが集まっています。
 「助けて」
と彼女は必死に助けを求めますが、兵士はただ立っているまま。
 そのまま、彼女は最後の木の隣に建てられていた牢獄に入れられてしまいます。そう、彼女は王様に捕らえられてしまったのです。彼女の不思議な力が忘れられなくなり、たまらなく欲しくなった王様は国中の花を咲かせ終える前に彼女を捕まえるように、兵士に指示を出したのです。
 全てを牢獄の中で悟った彼女は王様に不思議な力を見せたことを悔やみます。そして、鉄格子の間から見える“最後の木”が咲かせられないと思うと涙が溢れてきました。
 
 王様には七人息子がいます。その七人のうちの七番目の息子のことを国中の人々は“七番目の王子様”と呼んでいましたが、誰も本当の名前を覚えていないからです。彼は七人の中で一番弱く、背も低く、嫌なことは全て押し付けられていました。でも、七人の中で一番心優しいのは誰の目から見ても確かでした。
 そんな心優しい“七番目の王子様”が、最後の木の隣にある牢獄で、囚われてしまった“花咲かせ人”を見つけることによって、この物語が始まります。

 七番目の王子様が牢獄を訪れたのには理由がありました。それは、お兄さんたちに言われて最近、捕まった極悪犯をバカにしてこいというものでした。彼は最初嫌がりましたが、行かないと縛り上げて池に落とすと脅され渋々、牢獄に来たのです。
 でも流石に牢獄の中には入れてもらえないので、鉄格子のはめられている窓から小さい声でバカにしようと考え付いたのです。恐る恐る鉄格子に掴まって中をのぞくと、そこには血走った目をした極悪犯ではなく、緑の長い髪をもった女の子が一人、泣いているだけでした。これには驚きしましたが、彼は女の子に話しかけてみました。
 「君は誰? どうして、こんなところにいるの?」
 その声にびっくりした女の子は顔を上げましたが、スグにまた泣き出してしまいました。
 「ごめんね、びっくりしたよね。ごめんね、泣かないで。でも、どうして君みたいな女の子が牢屋に入れられているの?」
 彼女は少しの間泣いていましたが、顔を上げて話し出しました。
 「王様に…牢屋に入れられてしまったの…ひっく。あたし、花を…ひっく…咲かせなきゃいけないのに…」
 彼女は震えながら“最後の木”を指差しました。つぼみは沢山ついているのに、ひとつも花を咲かせていない状態でした。
 「…どうすればいいの? ひっく…だって…ひっく…神様に言われた…のに」
 彼女の話を聞いていると七番目の王子様はひとつ、疑問が浮かびました。この子一人でどうやって花を咲かせるのか、というものです。
 「ねえ、どうやって花を咲かせるの?」
 「……あのね、キスをするの。あたしがキスをすれば……ひっく、花が咲いてくれる。でも、…牢獄に入れられた…から、キスができないの…できれば、あたしは次の国に飛んでいけるのに……ひとつでもいいから…咲けば…ひっく…ここから出れるのに」
 そういうと、彼女はまた泣き出してしまいました。
 「僕が何とかしてあげるよ!」
 彼はそういうと走り出しました。女の子が泣いている姿は痛々しくてどうしようもなかったからです。彼がどこに走ったのかというと…そう、王様のところです。
 彼は王様のところにつくと女の子を解放するようにお願いしました。が、逆に牢獄に近づいたことにひどく怒られた挙句、城から外に放り出されてしまいました。それでも彼は諦めずに、何度も頼んで、何度も放り出されました。
 とうとう、太陽が沈みかけ、空が青からオレンジ色に変わり始めたころ、彼は女の子のいる牢獄へ向かいました。彼はあえて王様に頼んでもダメだったことを伝えず、他の方法を考えようと彼女に持ち掛けました。そして、考えたすえ、思いついたことは一つ。七番目の王子様が花を咲かせるという事でした。
 しかし、彼は花咲かせ人ではないため、当然キスをしても花は咲きません。なので、一生懸命“最後の木”の世話をしだしました。月が昇り、夜が更けだしても戻らない七番目の王子様を連れ戻すために兵士が牢獄に向かいましたが、あの心優しい王子様が怒鳴ったので皆、驚いて城に引き返してしまいました。
 夜が明け、太陽が顔を出しても七番目の王子様は休みもせず“最後の木”の世話をしていました。世話といっても水をあげたり、話しかけてみたり、幹を撫でてやったりするだけですが。それから太陽が真上に昇っても、やっぱり花は咲きません。  悲しくなった七番目の王子様は、王様の元に行きました。彼は少しだけの間、彼女を釈放して欲しいと頼みに行ったのです。そうすれば、花は咲き彼女は飛んで逃げることができるからです。しかし、王様の答えはノー。
 そして言ったのです。
 「花咲かせ人なら、牢獄の中からでも花を咲かせることができるだろう。あいつは心優しいお前を騙して、自分だけ逃げようとしているんだ」
 その言葉に七番目の王子様はひどい怒りを覚えました。そして、かっとなって言ってしまったのです。
 「じゃあ、代わりに僕があの木のつぼみを咲かせることができたら彼女を離して欲しい。だって、彼女は何も悪くないじゃないか!」
 その言葉に王様は少々驚きながらも。首を縦に振りました。
 「いいだろう。もし、ひとつでも咲かない花があったらあいつは一生あの牢屋の中だ。いいな? 全ての花を咲かせるんだ。期限を決めてやる。三日…そう、三日以内に咲かせられなかったら、潔くあいつのことなど忘れるんだな」
 七番目の王子は迷うことなく頷くとスグに彼女の元に向かいました。しかし、牢獄が近づいてくると次第に冷静になり、無理難題をどうしてやってみせるといってしまったのか、と心から悔やみだしたのです。そして、そのことは彼女には絶対言わないように心に決めたのでした。
 それから丸一日がたちました。約束の日まであと二日です。彼は眠りもせず、“最後の木”の世話をしていました。が、一向に咲く様子はありません。
 牢獄の中の彼女は泣き止んだものの目は真っ赤に腫れ上がり、放心状態でした。そんな弱った彼女を早く出してあげようと必死になっていました。
 それから、夜が更けて、月が沈み、太陽が顔を出し、彼の真上に来たころ、とうとう七番目の王子様は疲労と睡眠不足により倒れてしまいました。
 そして、目が覚めたのは三日目の朝でした。彼は寝てしまった自分を悔やみました。そして、“最後の木”をおそるおそる見上げてみると、そこには一つだけ、一つだけですがつぼみが花が開いていたのです。これで彼女は解放される。彼は覚えていたのです。”ひとつでもいいから咲けばここから出られる”という彼女の言葉を。彼はさっそく教えてあげようと牢獄を除きましたが、彼女の姿が見当たりません。もしかしたら、もう出ているのかもと思い、周りを見ますが見つかりません。悪い予感がして七番目の王子様は王様の元へ走りました。そして、王様に尋ねると
「ああ、あいつなら今日、処刑される」
今しがた彼は王様の口から出た言葉を疑いました。
「かわいい私の七番目の息子があんな小娘に惑わされている。きっと、あいつはお前の地位を狙っているに違いない。そんなヤツのために、かわいい息子をとられてたまるか」
その言葉を聞くか聞かないかのうちに彼は走り出していました。処刑場には兵士がいて入れないことを知っていました。七番目の王子様は塀をよじ登り、処刑場の真ん中で縛り上げられている彼女に叫んだのです。
「花が咲いた! 君は自由だ!!」
その言葉を聞いた彼女は刹那、縛り上げられていた場所から消えていたのです。兵士たちはたじろぎましたが、彼は彼女がどこに消えたのか知っていました。
 “最後の木”の下に彼女はいました。見上げるとその木は満開の桜の花を咲かせていたのです。
 彼女はにっこり笑うと王子様にキスをしたのです。そして、彼女が消えるともに聞こえた「ありがとう」。そして残されたのは桜色に頬を染めた七番目の王子様と満開に咲いている桜の木があるのみでした。



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ああ、、、まれに見る、あんまり気に入ってない作品かもしれません(汗)
なんだろ、詰め込みすぎたなぁ・・・。
今回も参加しました短編小説同盟の企画第五弾『桜』
難しかったです、桜!!


七番目の王子様の名前はありません。
花咲かせ人の名前もありません。
登場人物に名前が無い小説を書いたのは初めて?かもしれません。
彼はきっとカッコイイ名前じゃなくて可愛らしい名前に違いありません。
間違ってもトンプソンとかじゃないです(なんで)
(2004/12.18修正)