『人魚と雪の国のお姫様』

 昔々、南の島にお姫様がひとり養子としてやってきました。お姫様の名前はキャロ。キャロ姫様は雪の国からやって来ました。雪の国では戦が激しく、キャロ姫様をかわいそうに思った両親は親戚に一時、預けることにしたのです。
 雪の国からやって来たキャロ姫様の肌はとても白く、髪の毛は銀色に透けていました。南の国では皆、黒い髪に小麦色の健康的な肌色をしていましたので、キャロ姫様のことを違う国のお姫様としてあまり受け入れてはくれませんでした。キャロ姫様はいつも独りぼっちでした。そんなとき、キャロ姫様をかわいそうに思った南の国のお后様が彼女を海に連れて行ったのです。
   『これから始まるのは独りぼっちのお姫様と人魚の物語』

雪の国で生まれたキャロ姫様にとって海は初めて見るものでした。
 「これは何? お水がいっぱい溢れているわ」
 お姫様は目をキラキラさせながら、お后様を見ました。
 「これは海というものです。海には魚が住んでいるのですよ」
お姫様は海にお魚が住んでいるなんて知らなかったわ、と言いながら海をじっと見つめました。目を凝らしていれば魚が生活している様子が伺えると思ったからです。
そんなお姫様の頭をお后様はやさしく撫でながら言いました。
 「人魚も暮らしています。とてもキレイな生き物です。私も一度だけ見たことがあります」
 「でも、彼らに会っても話しかけてはいけませんよ」 
 「なぜ?」

 あんなに笑顔だったお后様は真剣に話し出しました。お姫様は初めて見る真剣な眼差しに海を眺めるのをやめ、お后様の方をじっと見つめ返しました。
 「彼らと私たちとの生活は大きく違います。人魚は私たちと違って足がありません。代わりに魚のような尻尾を使って海の中を泳ぎます。…彼らの中には、人間を嫌っている者もいます」
 お后様は人差し指を立てて言いました。
 「でも、叔母様。中にはいい人魚もいるのよね?」
 「ええ。…ですが自分に近づいてきた人間を海の中に引きずり込んで溺れさせたという話が噂されています。いいですね、彼らに遭ったとしても話しかけてはなりませんよ」
 けして海に入らないという約束でお姫様は、砂浜で貝を拾うことにしました。光を反射してキラキラ輝いている貝殻を見て母親にも見せてあげたいと思ったからです。貝殻を探しているうちにどんどん岩場に近づいていました。もっとキレイなものを岩場からなら探せると思いお姫様と同じぐらいの背丈の岩に上ってみることにしました。
 すると砂浜にいた時よりもずっと海がキラキラして見えました。そこからの景色に心を奪われてしまったお姫様は、とても長い時間海を眺めていました。
 見とれていると、海から何かが跳ね上がったのが見えました。魚が跳ねたのだと考えたお姫様はじっと目を凝らして跳ねた場所を見つめました。
しかし、それは魚ではなく人だったのです。髪が長いので女の子が気持ちよさそうに泳いでいるのです。
じっと見つめていると、向こうもこちらに気づいたのか手を振ってきました。嬉しくなり大きく手を振りました。すると、その女の子はお姫様のほうへ泳いできたのです。
「こんにちは」
 近くで見た女の子は青く透き通った長い髪に、同じ色の瞳を持っていました。
お姫様はいきなり話しかけられたのでびっくりして、瞬きを数回繰り返してからコクりと頷きました。
「ねぇ、あなた人間でしょ?」
「え?」
キャロ姫様は女の子が何を言っているのかわかりませんでした。人間が人間に「人間でしょ?」と聞くのはおかしいではありませんか。
 「だって、足があるじゃない」
 「…あなたにだってあるはずでしょ?」
 女の子は笑うと、岩場に身を乗り出しました。
 「ほら」
 彼女には二本の足ではなく魚と同じような尻尾が腰の辺りから生えていました。息をのむほどキレイな空色の尻尾です。
 「あなた、人魚なの?!」
 彼女はお姫様の驚いた顔を見てクスクスと笑いました。
 「ええ、そうよ」
 その瞬間、お后様との会話を思い出しました。
 「けして彼らに話しかけてはなりません」
 しかし、お姫様はあることに気づきました。それは自分から話しかけてはいないということです。ですが、向こうから話しかけてきたのならいいだろう、と思いました。それに、話しかけてくれたということは悪い人魚ではないと決め付けてしまいました。
 「…あたしの名前はキャロ。あなたは?」
 キャロ姫様は少し興奮気味に話しはじめました。それを見て人魚はまたくすりと笑いました。
 「スカイブルー」
 「スカイブルー…あなたの髪と瞳と、それと尻尾もその色ね」
 「そう。あたしたちの間では自分の髪と瞳と尻尾の色で名前が決まるの。長いからスカイって呼んで」
 そう言うとスカイはウインクをしました。
 「・・・スカイ。友達になってくれない?」
 お姫様は恥ずかしさのあまり、白い肌がピンク色へと染まっていきました。友達になってほしい、なんて初めて言ったからです。
 少し大きな声とピンク色に染まったお姫様の顔を見てスカイはまた、クスクスと笑いました。
 「ええ、いいわ」
 キャロ姫様は友達が初めて出来たのが嬉しくて、何時間もスカイと話をしていました。スカイは海の世界の話をしてくれました。お后様が言う人間を忌み嫌っている人魚がいるのはとても昔のことで、若い人魚たちは人間に興味があると言うのです。そして人魚たちの間でも、人間たちが自分たちを獲って食べるという噂があり砂浜には滅多に近づかないということもわかりました。どちらも嘘だということがわかり二人はお腹を抱えて笑いました。
 「どうして岩場の側で泳いでいたのか」という質問に、スカイは「岩場に登れば砂浜が良く見えると思って」と答えました。とってもステキな偶然に二人は驚き、そして喜びました。
 太陽が海に半分沈むころ、また会う約束をした彼女たちは自分のあるべき場所に帰っていきました。
 それから何日も何日もキャロ姫様はスカイに会いに岩場に行きました。二人で過ごす時間は楽しくて、すぐに過ぎていくように感じるほどでした。そして自然に彼女たちは親友になっていったのです。

 「ねえ、キャロってここの国の人じゃないでしょう?」
 「うん。どうしてわかったの?」
 「だって、肌は真っ白で、髪は銀色じゃない? ここの国の人たちは黒髪に小麦色の肌じゃない」
 「私、叔母様のところに預けられたの。ホントは雪の国に住んでいたのよ」
 「雪? なに、それ? 食べ物?」
 それを聞くとキャロ姫様は大笑いしました。
 「違うわ。雪って言うのはね、白くてふわふわして冷たいのよ。空から降ってくるの」
 「空?」
 スカイは雲ひとつ無い快晴の空を見上げました。
 「うん。とっても綺麗なんだけど、暑い国じゃ降らないってお母様が言ってたわ。太陽がとっても頑張っているせいで雪が解けてしまうんですって」
 「へぇ、見てみたい。いつか泳いでキャロの国まで雪を見に行こうかしら」
 「だめよ。雪の国に着く頃までにはあなたは凍ってしまうわ」
 「こおってしまう?」
 「ええ、カッチカチにね」
 キャロ姫様はクスクスと笑いました。それを見てスカイはウインクをして
 「一度ならこおってもいいわ」
 といいました。
 
 それから二人は夕日が沈みかけるまで喋っていました。
 
 そして幾日も経ったある日、スカイはいつもと同じようにお姫様を待ていました。しかし、彼女は現れませんでした。それから何日たってもキャロ姫様が現れないことにスカイはとても心配していました。しかもスカイは人魚ですからお城へ歩いてゆくことも出来ません。困ったスカイは港に行って話を聞くということを思いつきました。スカイは港に着くと止まっている船影に隠れて人間たちの話に耳を傾けていました。すると、こんな話が聞こえてきたのです。
 「……お城のお姫様がご病気になられたんだって」
 「ご病気に…それは可哀相に。あの子は、まだほんの子供だろう?」
 「そうなのよ。しかも雪の国にはなくて南の国にしかない病気にかかったらしいの。免疫力がないから、治る見込みがないらしいのよ…もってせいぜい半月…それ以下かもしれないって」
 その話を聞いたスカイは叫びそうになりましたが一生懸命、口を手で覆っていました。
 いつもの岩場に戻った彼女は眉間にシワが出来るほど考えていました。人間たちの会話が頭の中でぐるぐると回っていたのです。言葉を何回か反芻した後、今すぐにキャロに会わなければいけないと強く思いました。しかし、スカイは人魚ですので歩くことが出来ません。海からはお城が見えるのに、人魚のスカイにとっては相当な距離でした。
 彼女は何も出来ないままずっと海からお城を眺めていました。
 そんなある日、こんなに暑いというのに全身黒い服を着た女の人がスカイの居る岩場にやってきました。スカイは一目でその女の人が魔女だとわかりました。黒い髪に黒い服、それは昔、おとぎ話で聞いた魔女そっくりでした。。
 「あら、ご機嫌いかが? 人魚さん」
 そしてスカイはあることを思いついたのです
 「あなたは魔女なんですよね? お願いです。私を人間にしてください!! 一日だけでいいんです。それ以下でもかまいません。お願いです!!」
 「ご名答ですわ人魚さん。…ですが、あいにくあなたを人間にする魔法を知りません。でも、なぜ人間になりたいのか聞くことはできます。何かいい案が浮かぶかもしれませんし」
 スカイはキャロ姫様が病気でもう治らないかもしれないということ、死んでしまうかもしれないということを、すべて魔女に打ち明けました。
 「そうなんですか…でも、わたくしには病気を治すことはできません。あまりお力になることがありませんわね」
 スカイは涙をためながら必死にいい案を練りだそうとしていました。そして、ひとつだけ浮かんだのです。
 「あ…じゃあ、雪…。雪を降らせてください!!」
 「雪…ですかやはり、わたくしは神ではないので雪を降らせることはできません。…ですが、ひとつだけ方法があります。幻を見せることです。…でもこれはオススメではありませんわ。これは呪いの魔法ですから」
 「呪い? 代償が必要ならば私の命を使ってもかまいません…キャロのためなら構いません」
 「ステキな案ですが…残念なことに、これは呪いを見せた相手の命を奪う魔法。逆にキャロ姫が死んでしまいますわ」
 「じゃあ、どうすれば…」
 「…あなた、命をささげても良いとおっしゃいましたわよね? たった一つだけ方法がありますわ。それは……寿命交換の魔法。魔法をかけた瞬間にあなたの命とそのお姫様の命を交換するのです。そうすればキャロ姫は死にませんわ」

 ―――その夜、雪が降りました。南の国の人々全員の夢の中で。
もちろん、キャロ姫様の夢にも降りました。真っ白い雪がちらちらと―――。

雪が降る。
ちらちらちらちらと雪が降る。
そう、魔女の魔法は成功したのです。とても強い思いが国中の人々の夢にも雪を降らせたのです。

    『これは雪になった人魚と独りぼっちのお姫様の物語』


 「―――昨日ね、雪が降ったのよ。夢の中で…不思議なことに国中の人たちが見たんだって。ねえ、スカイは見た? ちらちら降る雪を。ねえ、どこにいっちゃったの?」



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いかがでしたでしょうか。
人魚と雪の国のお姫様の物語。
なんだか、描き方がおかしい。いつ書いたんでしょうか、これ・・・?
もし、入試前だとしたら小論文の影響バッチリ出てますね。
なんか、硬いよ、自分・・(へこみ)
私的にはハナシが気に入ってます。
キャロじゃなくて名前をもうちょっと考ええあげればよかったです(苦笑)
本当はスカイが雪を雪国まで泳いで見に行く話だった気がします。
結局最後は死んでしまうのですが。。。
死んでしまう前にソフトフローズン状態ですね。はは。
短編小説同盟様に置かせていただいているものとは違い大幅に編集しています。
また、書き直したいです。
(2004/12.20編集)