「中陰の花」を読んだでよ。

2001年10月21日 18:56:23

 玄侑宗久さんの芥川賞受賞作を読みました。選考委員の方の選評の多くが高い評価を与えています。科学技術が発達し、その恩恵を生活の至る所で受けながら暮らす今日でも、多くの人々にとって、人間の「死」は不可思議なものとしてとらえられているのが現状であり、この点においては、現代人も前時代の人々と大差はないようです。
 「中陰の花」はそういう私たち現代人の矛盾したあり方を照らし出した作品といえるように思えます。作品中、僧侶である則道はパソコンを使って過去帳をつけたり、インターネット上で「おがみや」のデータを検索したりします。これは、まさに科学技術文明の粋を使った生活の一こまです。しかし、同時に彼の妻の圭子や、彼自身も「幻視」や「乗っかかり」を体験するのです。とくに最後の場面の無数の紙縒で作られた「中陰の花」の超常現象は印象的です。
 また、視点人物である則道は自らを「プラクティカルな臨済宗の和尚」と呼びますが、この呼称は、今日の日本人の多数がおかれている精神的状況を言い得て妙だと思えます。たとえば、小さな子供から「人は死んだらどうなんの?」と問われて、心の底から迷いもなくその答えを言える人は多くはないと思います。
  私は「あの世」の存在や様々な超常現象を信じているわけではありませんが、この作品は自分の心の奥底で曖昧にしていた部分に触れられたような感じがして、面白く読めました。 

結構面白いでよ。

ごまの読書日記
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