禁忌の恋2

 

 

イークトリアの東の街ロアーテにガーテンタ公爵の立派な家があった。いや、家と言うよりも、もはや城と言った方が良いくらいの壮大さだ。その前に、また貴族のものらしい馬車が止まる。フェリエン家の紋章付きの馬車、乗っているのはダナーク、もちろん紋章は偽物だ。ガーテンタ邸に自然にはいるためにはガーテンタ公爵と仲のよいフェリエン家を利用したのだ。いや、他にもいたのだが、ダナークはエルフ。エルフの貴族はフェリエン公爵ぐらいしかいなかったのだ。

こんな風に金に糸目を付けないからすぐに金欠になるんだ。と内心思ったものだが成功報酬を聞いてそんな気は改めたし、下手に金をケチって危ない目に遭うのはダナークなのだ。けれど、煮え切らないこともある。“貴族らしい”をテーマにいろいろとない金を使ったのだ。1つ貴族らしい服、と言い目の玉飛び出るほど高い服を何着も買った。そして一応滞在する予定なので、その他諸々、高そうな小物も買わされた。貴族はみんな金髪だ、とリュートが言い張り(フェリエン公爵は金髪だったこともあったが)ダナークの亜麻色の髪は金髪に染め上げられた。それにフェリエン公爵に協力してもらうとはいえ、馬車やら馬やら借りるのにいくらかかったことやら・・・・・。

本来金銭感覚に疎いダナークであったが、リオから総額を聞いたときはめまいを覚えた。故に、成功報酬をもらい損ねたときのことを考えると、何となく寒気を覚える。

「ここが、ガーテンタ公爵、僕の父さんの屋敷か・・・・。」

誰にも聞こえないくらい小さな声でダナークはつぶやく、門が開きそのまま馬車は中へと進む。でかい家に広い庭、ダナークは初めて見るそのすごさにしばし見とれたが、すぐさま表情を引き締める。もうここから仕事は始まっているのだ。

「ここでおろしてくれ、帰りはガーテンタ公爵に送ってもらうから君はもう帰っていいよ。」

そういいながら馬車から降り、御者にリオに言われたとうりに金を渡す。

走り去る馬車を背に、ダナークはガーテンタ邸に向かって歩きながらもう一度声に出さず、これまでの自分の経歴について確認する。

ダナーク・レフィード・フェリエン。17歳父はフェリエン公爵、母は10年前に死去、今の義母はタリアという。兄弟は20になる兄ミローク、15になる妹のサリサ。弟のローテン。幼い頃母方の祖父母の家で育てられた。今、兄は軍隊に所属、父はドロンフォート大公との会合があったため、ダナークが来た。話し合うべき内容は目下、魔大戦のこと軍事費用云々の話をしに父の代わりに来た。

再確認が完了し、扉の前で、歩みを止める。扉の前には兵士が二人剣に手をかけダナークを見据えている。

「なに者だ?なんのようだ?何しにここに来た、答えろ!」

「ダナーク・レフィード・フェリエン、父、いやフェリエン公爵の命を受けここに来ました。ガーテンタ公爵にお取り次ぎ願いたい」

「フェリエン家からの使いか?の割には妙に軽装だな。しかも一人で来るとはどういう神経してるんだ?」

兵士二人は明らかに不審と侮蔑の視線をダナークに向けている。確かに軽装と言われても仕方ないくらい荷物は少ない。大きめのトランク1つでは怪しいと言われても仕方ないだろう。しかしここでは侮辱されたと怒りを露わにするべきかなぁなどとまるで的外れなことをダナークは考えていた。___が、笑顔のまま言った。

「身の回りのことは一人でできますからね。それに魔大戦でただでさえ忙しいのに、わざわざ誰かを伴っていくのもはばかれましたので。それより、お取り次ぎ願いたいあまり急ぐことでもないが、ここで足止め食らうわけにもいかないので。」

兵士達はいささかむっとしたが、自分たちの主の客かもしれない人をむげに追いやるわけにもいけず、怪しい男の訪問を伝えた。数分後、執事と思われる初老の男が中からでてきてダナークを向かい入れてくれた。

「先ほど派兵士達が失礼をいたしまして、すいませんでした。今後あのようなことがないよう注意しておきますので・・・・。」

「いえいえ、ガーテンタ公爵を守ろうと思っているからこその行動です。私は何も気にしてませんよ、何事もなく屋敷に入れたことですし。」

と、真っ赤な絨毯の上を歩きながら思ってもいないことを口に出す。あの無礼な兵士達には当たり前だが好感なんか持ってなかった。ちゃんとした教育を受けさせろよ、などと心の中でつぶやく。しかし自分の父親のお抱えへ意志に、なかなか悪意をぶつけられないのも事実だ。実際、彼の母は父親のことを一言も悪く言わなかったし、絶えずあの人がいなくなったのは私が悪かったのよ。などと繰り返されてはあまり父親を恨む気持ちにダナークはなれなかった。だからこそ今、なんの悪意も持たずに会いに、もとい仕事しに来たのだが。

「そういってもらえれば幸いですが・・・・・。さあ、つきましたよ。ここにガーテンタ公爵はいらっしゃいます。では私はこれで、お荷物はお部屋の方においておきますので。」

「ああ、ありがとう。」

一礼すると執事は廊下を歩いてどっかに行ってしまった。その背が、見えなくなるまで見送ると、ダナークはドアの前に向き直る。ここに父がいる。そう思うと少し緊張した、しかしいつまでもドアの前で突っ立てるわけにも行かず軽く2,3階ノックしてドアを開く。

「ダナーク・レフィード・フェリエンです。お初にお目にかかります、ガーテンタ公爵。」

ダナークの目の前にいる男は、それなりの身長で思ったよりずっと若かった。まだ30前半に見える青い瞳に金髪の髪、何となくだが自分に似てるように見えるその顔は少し驚きが混ざっていた。

「ダナーク、君が私の依頼を受けてくれたのか?久しぶりだ、何年ぶりだ?15年ぶりか・・・・。」

「依頼を受けたから私が来たのでしょう。しかし、昔私はあなたにあったことがあるのですか?15年前というと2歳の時ですからほとんど記憶にありませんが・・・・・。」

「当たり前であろう、何せフェリシアが生まれるまではずっと一緒にいたのだから。」

「ああ、例の娘さんですね。」

あくまで仕事上の人物ダナーク・レフィード・フェリエンを演じようとするダナークと、父と子で話をしたいと、遠回しに言うガーテンタ公爵の間で火花が散った、気がした。二人とも変な意地があってなかなか進展しないのだが・・・・。

「早いところ仕事の話をして下さい。ガーテンタ公爵。」

「何を他人行儀な、ガーテンタ公爵ではなくイグルと呼んでくれ。」

「何をおっしゃってるんですか、そんなことより仕事の話です。わかりましたかこ・う・しゃ・く!!」

「イグルだ!そなたは私の・・・・・・。」

ガンッッッッッ!!!_____とガーテンタ公爵のセリフの途中でどでかい音がした。ダナークがいすを蹴り上げ書斎の机にぶつけた音だ、これには公爵もしばし唖然とする。

「公爵、あなたが言いたいことはよくわかります。しかしここはどこだかちゃんとわきまえてから口を開いて下さい。このくらいの声なら外には漏れないかもしれませんが怒鳴れば外まで聞こえるかもしれないんですよ。外に漏れて、一番困るのは僕なんですからね」

「すまぬ、わっかた仕事の話をしよう、後日この件について話すと言うことで・・・・・・。しかしやはり公爵ではなくイグルと呼んでほしいのだが・・・・・。」

「わかりました。それではイグル、詳しい話をお願いします。」

とたん、ガーテンタ公爵、ことイグルは顔中満面の笑みだ。おまえは子供か、と白い目で見たがイグルはまるで気づかない。それから机といすを直しこそこそと仕事の話を始めた。

仕事の話はだいたいリオと同じことだった。フェリシア、つまりダナークの妹とフォーランドとの婚約を阻止してくれと言うこと、あと3日後にフォーランドが来るから何が何でも2人きりになるのを阻止すること、さらにフォーランドの悪事を暴けと言うこと、そしてフォーランドとフェリシアが婚約しそうになったら殺してもいいからやめさせろと言うことだった。

「つまりフォーランド卿はイグルの遺産目当てでフェリシアに婚約を迫ってると言うことですか?」

「まぁそういうことだ。しかしそなたが生きているとわかったからには・・・・・・。」

続きを言おうとするイグルに強烈な視線でダナークは沈黙を強制する。と、その時ばたばたという足音が響き、ノックもなしに部屋の扉が開く。

「お父様!お客様ですって?最初に私に紹介して下さると約束して下さったでしょう。」

部屋中に響きわたる声、ダナークは振り向いた、そして一瞬、なぜだかわからないがとまどった。胸の奥で何かが音を立てて動いたのを聞いた気がした。なれないその感覚をダナークは無理矢理奥にしまい込み、いつもの笑顔を顔に宿す。あまり上手くできず、ひきつってないか心配になったほどだ。

「どうも、お邪魔しております。ダナーク・レフィード・フェリエンです。父は用事があったので代わりに私がやって参りました。お初にお目にかかります、フェリシア様。父がいつも世話になっているそうで・・・・。」

「あっ、すいません、お見苦しいものを見せてしまいましたわ。はじめまして、私フェリシア・ドレナ・ガーテンタですわ。以後おみしりおきを。」

ダナークとフェリシアはこうして出会った。陳腐な言葉だが、まさに運命の出会い。

二人の人生は、ここから狂い始めるのだから・・・・・・・。

 

 


やっとおわったぁ。これで2回目終了!
でもなかなか思うように進まない。
しかぁし!!がんばるぞ!

 

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