つらつら短歌の部屋 その1
・ひとまわり大きな鉢に植えかえて今年の紫陽花ピンクに変わる
・集(あずさ)藍(あい)が語源なるらし紫陽花よ青から今年は紅色となり
・梅雨晴れ間ベッドの上をそよぐ風ここから歌をつないでおくれ
・合言葉「じゃらんじゃらん」と書き終わり難きメールも和みくるらん
・「ややこしきわが人生」と拉致されし曽我さんのことば胸つまるなり
・朝露を硯に入れて磨る墨は願い叶うと軒端に揺れる
・おすそ分けと北の大地のアスパラは真白き大皿翠に染めん
・苺ジャム冷凍保存できるよと友は二瓶土産にくれる
・手付かずのテレホンカード九枚はそれぞれ祝いの引き出物なり
・車いす吾が頭をかすめ飛びしツバメ浅き水路につと身を返す
・花好きの媼にセントポーリアをことづかる夫ごみだしの今朝
・芥子粒と見まがいしほどの種なるにベコニア真紅の大輪咲けり
・温室をぬけるとそこはハーブ園五月の風にギンドロきらら
・五年生福祉実践教室が六月一日今年もスタート
・サルビアとマリーゴールド校門に歓喜の合唱するがに咲けり
・「この学校どう感じたか」と小五の子真剣な問いに戸惑いおぼゆ
・「呑み込んだもう構わんで」と言いし友われの知らない世界持つらし
・ガラス戸に鈍き音して目をやればベランダに雀あお向き倒る
・気絶せし雀やっとこ羽音たて夫の足間を飛びたちてゆく
・美容室へ肩に風きり電動の車いすにいく華やぎの刻
・戒めと血痕残る絨毯に進む病を受け容るるべし
・身を反らし残る筋力探しつつ自力歩行にさよならする日
・身を反らし残る力をふりしぼり渡りし橋のもう戻れない
・真顔して雨には匂いあると言ふ君の感性わたしに染みる
・きもちよく鼾かく夫昼下がり吾が方形の視界 ぼたん雪
・侘助の実をつける枝ほこらしげに秘めたる力われになきもの
・土ぼこりあびたるままに道の端の野菊は無心枯草の中
・ひっそりと空から秋は舞い降りてわが影おとす散策の路
・土手焼きの煙りたなびく夕暮れを火種となりて彼岸花もゆ
・美しく老いることとは至難なり吾は生かされ「あるがまま」にと
・秋の日を揺らすススキ穂しらしらと行き交う人もなき散歩道
・土に生き土に馴染みし母なりき菊根分けつつ今にして知る
・ただ祈りただ願ふのみ筋ジスのわれに実験治療は無きか
・自己愛のかたまりつねに隠しもち夫の言い分に耳かたむくる
・「贅沢になれての不足きりぎりす」詠いし母の吾短冊に
・ヘルパーのビオラ植えゆく手の先にやさしさをみる援助愛く吾
・道端の鶏頭そっと叩いたら真黒き種はシャワーのように
・首少し傾け眠る癖のまま白寿なる祖母の今し逝きたり
・白寿なる祖母眠るがに逝かしめて赤き安堵の息をつく母
・「使えるよ」受話器のむこう弾む声共感できるリーチャー仲間
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・天にちかき熟れ柿食らい天に翔つあっけらかんのカラス一声
・何かひとつ胸におちないものありてシャンプーの泡消ゆるまで見つ
・萎えし腕にビーズクッション温かし痛みをすべて吸い取るように
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