菜の花を摘みつみここへ来たのよと手渡しくるる微笑み添えて
月々に地鶏卵を届けきて花活けかえて語りゆく友よ
久々の散歩に行き会う人ごとに「元気だった」と声かけられる
朝陽さすフロアーを鳥の影よぎる まるで1枚の動画のように
幼児のころころ翔ける足元にうすきガラスのような草芝
畝しろく土かわきおりたけなわの春の用水いまは水無く
雲間よりもるるひかりにベルフラワー上向きに咲き紫の映ゆ
在りし日の愛犬ノンとの時を呼ぶ咲く蝋梅はうつむき加減
・町屋川みぞれ雪舞う川面には戯れ流る鴨の一群
・はけ口の行く場失い夫われにあたれり創りきしもの崩る
・言の葉に乗せ憂鬱を晴らしゆく友の笑顔にわれも軽やか
・ぷつぷつと枝にかたまりつく蕾ひらき初めゆく木瓜の紅白
・五十四歳わが生かされて誕生日 潤みゆく瞳に夫の瞳もまた
・地に低くにおいスミレの一輪が風にふるえる囁くさまに
・願い聞き買出しに行く夫の背に感謝しつつも少し寂しい
・ヘルパーの荒れし手がわが臀部ささえくれたり母の温もり
・オークションのネットに魅せられ見入る夫飛ぶ鳥落とすハンターの顔
・春の空飛行機雲は淡く伸び遥かなるかな大海原は
・わが心今日の飛行機雲の様ちょっと歪なトライアングル
・塀越しにミモザの咲きてふさふさの黄にさわりたし車いすわれは
・ゆったりと円描き飛ぶ鳶見おり瞬きの間に降下浮上す
・今日来たるウドの絵手紙に誘われて夕餉にウドを酢味噌に和えぬ
・妹は「倚りかからず」をバイブルに人の生きかた踏絵している