つらつら短歌

                                                      その3


・石楠花の蕾膨らみ息づきてマグマを噴き上げるように綻ぶ

・端正な友の筆跡変わらずも肋膜転移と絵葉書に記し

・わが心に裁断したきページありシュレッダーして吹雪かせたきや

・筍の瓶詰めつくるヘルパーはわが思いをも詰めて呉れたり

・くらやみを耳もとにきて羽音立つ蚊は知っている動けぬ吾を


・嬉々とした人ら行き交いわれもまた朝市めざし鍛冶橋渡る

・古川の駅にはためく幟旗「さくらの舞台」と五月の風吹く

・和蝋燭の三嶋屋今日は定休日遠く来たるに木戸を閉ざせり
     むかし昔、石楠花のほころび開く瞬時に遭遇、忘れられない感動を・・・


・春塵を吹き払うように逝かぬものか仲間のトラブルときに傍観

・フレーズが心に残り怖い歌「言葉は満ちてしかも尽きない」

・寝返りを頼むべくひそと傍らに夫の寝息の変わるを待ちぬ

・抗癌剤それも手術も無理と言い「声変わらない?」と友聞き返す

・人恋し夕暮れ時を電話する一回のベルに友も応えん


・「カスピ海のヨーグルト」発酵の生き育てつつ自然の恵みは無尽蔵なり

・ ブラジルの国花「イペー」は竹群に嬉々とひろがり日に黄色映ゆ

・ジャスミンの小さきラッパの花ほろりわが触れたれば肩の上に落つ
・懸賞の賞の焼酎手書きなる文に酒つくりの苦心添えあり
・梅雨雨間風匂やかにさわさわとカワラナデシコの頬を撫でゆく
初夏の風は 白とピンクのカワラナデシコの甘き香りを運びくる

・ 今朝の夢駆け来る馬の細き四肢 湯に入れくるる夫に語らう
・ ひとつこと思いを去らず夏の夜のとろりと赤き満月をみる
・ 「どこ行くの」が癖となりしはいつからか人恋しいと言うにあらねど

・ 夕立のあとの窓より一陣の風冷えて入り目の洗わるる
・ 浅漬けのキャベツや胡瓜、人参をぱりぽり食べる初夏の朝が好き

・ 柿の葉は日に艶だちて初々し翡翠の色に葉むらの照りて
・ フェンス越え葛(クズ)は激しく伸びるなりそして今夜は雨の七夕
・ 湯上りのほてりを夜の風は撫で打ち水したる庭の涼しさ
・ 姪ッ子のハワイ土産の欄の香は整理タンスの衣類を包む

・ ハスの花開くとき「ぽん」と音すると心澄ましてわれも聞きたし

        清らかな心の耳はポンの音を感受するのでしょうね


・ 横たわるベッドの横で車いすも充電を受けわが心充つ

・ 「面倒だなー車の運転」一言は夫に忍び寄る疲労のシグナル

・ 早朝を庭にむくげの白く咲き今朝も咲き継ぐ朝のあたらし

・ 目覚めたる部屋に月光さしとおりかぐや姫いまや天にのぼらん

・ 夫が敷きくれし藺草が青々と香に立ちて吾のほてりを癒やす

・ 設立の夢工房はイベントの小さき拠点よ地域に根づかん

・ 一枚の絵となり枇杷の古木には蝉が息づき羽のばさんと

・ 剪定を頼みしヘルパーは来年の開花を祈り紫陽花をバサリ

・ 芳しき香りの花が虫誘う食虫植物は神秘に生きて

     ピンクの可憐な花と香りに虫たちは誘われ・・・

・ 暮れなずむ夕焼けの空コバルトの色を濃くして暗くなり来つ

・ 木の胴の自然の曲がり生かしたる檜のホルンは山に木霊す

・ アスファルトの割れ目より立ちほっそりと高砂百合は蕾つけたり

・ こころざし持ちて学ぶにこの夏の暑さに負けてドクターストップ

・ 操縦の車椅子触れ道端のヌスビトハギと蜆蝶踊る

・ 壊さんと思える時は再びを成さんとする術見いだした

・ 一鉢を三鉢に株分けしたる今 趣変わるセントポーリア

・ ケセラセラからだが風に乗れぬ日は水色ためてこころを放つ

・ 白鷺の羽ばたき映す池の水かすかに揺らぎのんびりと秋

・ 陽の位置は徐々に移りてテーブルの上をじりじり日光(ヒカゲ)は離る

・ 信号を待つ視野の先門塀に蔓薔薇赤く青き実もつく

       幼子のような赤き縁取りした一重のミニ薔薇


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