つらつら短歌 その6
・夏草を刈られし土手の斜面には先を朱に染め立つ彼岸花
・夕映えに曼珠沙華燃ゆその道に血は騒ぎ出し堰切る涙
・訪れん小路坂道曲がり道 真白き曼珠沙華探し行く
・散策の道案内は曼珠沙華 小路坂道やっとこ抜ける
・ベランダの子宝草も紅葉かな四季の移ろい芽吹きも止まり
・車窓から姿見えねど秋かおり金木犀は校門の内
・小三の女児見つかるのニュース聴き福祉実践教室に行く
・慌し職員会議真っ只中 校長室に通されて待つ
・夕焼けを呑みほした様な月昇り東の窓に観る十三夜
・朱の色に染まりて今宵は十三夜蝙蝠は飛びベランダ過ぎる(よぎる)
・一振りし洗濯物を手際よく干しゆく夫に眩しく秋日
・カトレアとハートサボテンの花蜜を舐めて甘味の異なるを知る
・虫食いし霜よけの葉を押し上げて椿の開く晩秋の朝
・診察を終えて帰宅の道すがら秋桜は揺れタンポポが咲く
・小春日に路地曲がりたる視野の先新芽双葉は朝顔の顔
・なにゆえか季節外れに咲く花を心は騒ぐ楽しからずや
・新米のふっくらふくらは水加減炊き上がる湯気にときめきを見る
・期限ある入力作業遅き吾に資料届かぬ焦りの増すや
・露天風呂付きの部屋なりバリアなき夫との旅に心やすけき
・露天風呂桧の湯口を太々と香り漂よい滑らかにおつ
・なめらかに動く手足はわれのもの夫の支えに浸る温泉
・一つずつ叶えたきもの胸に抱き夫に許され歩み行くなり
・桧の香しるく香れる露天湯にぽんぽん舟の行方目に追う
・湯あたりと夫は気丈に言うけれど独り介護に限界ありて
・山茶花の赤き花びら一枚は溢るるお湯に流され消えた
・これだけは誰もにいつかいつの日か消ゆる日の来る現実はここ
・都鳥209部屋この旅は伊勢物語 紅の思い出
・のれん下げ瞳二十八注がれる我が家の食卓麺打ちと化す
・麺棒に巻きつけたたき広げゆく出前手打ちの玄さんうどん
・釜玉に始まりメニューの究極が讃岐うどんはネギ生姜とぞ
・うどん打つ馴れ初め語るまったりと憧れの人うどん好きなり
・憧れの君に食してほしかりと限りある日を麺打ちたるや
・麺打ちの親善大使行脚なり筋ジス仲間のネットを繋ぐ
・ライバルと意識芽生える時くるは向き合うものの分かり来し時
・ストーブの自動点火の音聞きて体位変換あさな待ちおり
・一日に一度は覗くサイトあり旅と川柳わが癒しの場
・縫い呉れし和服は母の手を離れ洋服として吾を包むなり
・ままならぬ深き睡眠とれぬ夫医師の処方を求め行く今朝
・歩み歌会今日は叶いて車いす門に立ちつつ夫の見送る
・希望せし二人部屋にて冬陽浴び施設の友は気持ちほっこり
・夫つくる今日のギョーザは何時になく拘りなき具にこだわると言う
・観念で詠むことおおきわれの歌「をかし」のこころ秘めて詠みたし
・詠えない歌を知らないカナリヤは加藤順二氏喪いし今
・日々暮らす生の証を書きとめんコスモスという大海に入る
・拘りの祖父江銀杏翡翠色おでんの鍋に艶めく存在
・小宇宙朝日を浴びて眩しかり隣家の屋根は南アルプス
・根づきたる青きグラスに点々とブライダルベールは晦日を咲き継ぐ
・年賀状だけのつき合いなどと言ういえいえそれが続きてこそ生
・年始め外出支援を電話する社会参加へ踏み出す一歩
・年賀状「風」の一文字あわあわと今の貴女がそのまま届く
・わが家の一番寒き玄関に頭梅ほころび春を誘(いざな)う
・卓上のカレンダーしか使わないそんなわたしを覚えていた貴女
・ヘルパーはカビくる餅を手際よく揚げて塩ふり「おかき」をつくる
・達成感四度目にして味わいぬ重度障害者在宅Work
・子供なきわれら夫婦は新札で年玉そろえ姪の子を待つ
・筋ジスの治療発見とニュース飛ぶ2003年10月29日
・遺伝子に必要のなきイントロン切り捨てエクソン・エクソンとする
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