つらつら短歌 その7
・南天の葉が赤々と霜焼けし鵯も気づかぬ珠実生るやに
・霜柱つららもみなくなりました 自然の雫無尽蔵ならぬ
・点滴を終えて電話をくれる母七十八歳 水疱瘡とぞ
・ひとつこと終えぬと次に進めぬ性 友はいくつか掛け持ち可能
・牡蠣フライするには油少なかりばあちゃんの知恵思い出したる
・西陽受け銀のビロード艶めきぬラインダンスのねこやなぎかな
・障害のわれの話を聴く小五いっせいに走る鉛筆の音
・寒椿暖房ききし部屋にては蕾のままで終わること知る
・玄関に冷気漂い寒椿開く大輪うす紅の色
・霜萎えの子宝草は色失せて吾の心今「ロトの妻」なる
・据え膳に憧れし母夢叶うも揺らぐてんびん気力体力
・正月に活けし万年青はそのままに珠実つやつや弥生の床に
・ねこやなぎ咲き極まりてテーブルに花粉落とせり朧夜のごと
・生命の息吹をふっと受けたよな三角空間われ好きな場所
・よかったら着てねと義姉はモカ色の手編みのポンチョ羽織らせくれる
・春一番吹き荒れし昨日 今朝はまた霙の降りて冬にもどりぬ
・わが介護夫は体力維持せんとアミノ酸など取り寄せて飲む
・洗礼をイヌノフグリは待ちいるや天の星座を青く見上げる
・耳鳴りの音の表現むつかしや耳近づけて聞いてほしかり
・自らを発光するがに白梅の花はほろほろ夕闇せまる
・夕暮れの路地を曲がりて白梅の香りをはこぶ風と出合いぬ
・二時間のジェームス三木の講演が貴女の気持ち上向きにする
・電動の車いすなるわが膝に庭の柚子採りくれたる媼
・鳶が舞う群れをつくりていつになくいつもの空の空気にあらず
・支援費はふたりのヘルパー付添える参加可能ぞ ITイベント
・時折に赤き箱あけつげぐしで夫は黙して髪とかしくれ
・きのう初夏きょうは真冬日しぐれ空あすはどの顔みせ来るや 春
・鵯が辛夷の蕾啄ばみて咲く花破れムンクの叫び
・三度目も約束延期のメール来し縁なき時と返信を打つ
・「ファ」のひびき高野公彦あじさいを芽吹きの春と詠うに響く
・鉢植えのあじさいまさに角芽立つ黒色なるや緑にあらず
・花冷えにストーブを点けパソコンに向かいて探すかたくりの花
・「八時だよ全員集合」この時代そうです二度と戻ることなし
・ゆれゆれて八頭(やまた)のオロチ思わせるミモザの枝は春嵐の中
・春うらら今日は雀がならびおり烏のとまる隣家(となりや)の屋根
・如何にせん「トイレ調査」の結果をば活かしきる術まちづくりへと
・車いす使えるトイレ何処にある有ります桑名 百十五箇所
・さくら花枝伐り持ちて訪ね来し抗がん剤を飲みつづける友
・故障セ氏パソコンを夫両の手で挟み打ち足りなんと復活
・わが介護に疲れたる夫をつれてゆけ眠りの精よ花いちもんめ
・しらしらと明けてゆく朝ジャスミンの香りの著き春はあけぼの
・特養に入りし友の電話なりたった一言「桑名へ帰りたい」
・ねつかれずねがえりできぬわれゆえに夫の寝息はいとにくらしや
・車いす吾が頭をかすめ飛びしつばめ浅き水路につと身を返す
・リハビリに「外郎売り」の科白読みリズムに乗りて快弁快便
・朝をとく姿勢正して声だせり向き合いし山日に日に笑う
・われ見たし珍島(チンド)の海が割れるとき旧約聖書のモーセに触れん
・開通のゆるき坂道上りゆけば広ごる宅地「白梅の丘」
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