つれづれに

ゆったりと流れる時のティータイム


「自助具」と「わたし」

 とても爽やかな声で一本の電話が入ったのは、「車いす桑名集会」以降の課題でもある、桑名で初めての「福祉マップづくり」の取り組みのために、、調査隊のメンバーと打ち合わせをしている時のことでした。
 それは、2年前のリハビリテーション誌「リレー・車いすから眺めれば」で執筆された愛知県大府市「Fさん」の記事の中に、三重県に住む「M子さん」とあり、今回の特集テーマに関連してか、なにかの興味をもっていただいた光栄なる私「M子さん」への、原稿依頼でした。
 なるほど、このようにしてリレーで人の輪が広がり、より豊かな繋がりの糸をいただいたような嬉しさを覚えました。

 ところで、「自助具」と「わたし」との出会いは、「自分で落したカルテが拾えなくなったら辞めよう」と自分なりの「モノサシ」を持ち医療事務の仕事を退職し、また20年ローンで買い求めた大好きな家も、進行性筋ジストロフィーの私にとってバリアいっぱいの家となり、思いきって売り払い、主人の仕事場のある桑名へ引越しをしてまもない時でした。
 ボランティアを目的として、「障害や自立について考えよう」と、桑名市社会福祉協議会[以下「社協」]の主催で「自助具ボランティア教室」が開催されました。平成7年5月から7月のことでした。
 自助具の第一人者である滋賀県福祉用具センターの小嶋寿一先生と、大阪府のボランテァグループ「自助具の部屋」のメンバーから、自助具づくりの講義を受けた後、「このまま終わらせたくないナー」と、学んだ仲間と社協の協力も得て、大阪「自助具の部屋」を見学させてもらいました。
 ちょうどその時、自助具の製作依頼に来られた、もの静かな1組の初老のご夫婦と遭遇したのです。

淡いピンクの芙蓉の花が何を語っているのでしょう

 大阪「自助具の部屋」のメンバーの誰もが、この場所を訪れたこの日のご夫婦にも、お客様あつかいするのではなく、自発的に関っていけるようにとの姿勢に、ワクワクしたものを感じました。
 奥様がリュウマチを患って、手の変形がかなりきつくなったとのことで、スプーンとフォークの製作依頼でした。メンバーの一人が話しを聞きながら、それは見事にスケッチをして、角度や大きさなど、会話をしながら、依頼者の日常生活の思いをくみ取りながらの光景に、私は釘づけになりました。
 当時「自助具の部屋は、10年以上もこの活動を続けて、さまざまな経験や技術を蓄積され、生活の維持に必要なものだけにとどまらず、趣味や遊びにいたるまで、さまざまの自助具を考案されていました。
 いろいろな職業[自営業・看護婦・デザイナー・理学療法士・退職者etc]のメンバーが、それぞれの知恵やアイディアを持ち寄り、依頼者の「〇〇したい!」という気持ちを実現し、また障害のある人も単に「作ってもらう人」でなく、一緒になって一つの自助具を作り上げる過程の妙味を、まのあたりにしました。そして、桑名の街にも、「自助具づくり」を通して、障害というものをお互いが認め合い、自立の糸口探しを共有できたら、どんなにいいだろうとの思いがムクムクと沸いてきたのです。
使い勝手がいまひとつ上手くいかない場合もあります。また、需要と供給の関係で仕方のないことかもしれませんが、驚くほど高価であったり、気軽に買って使ってみるという訳にもいかないのが現状です。
 そこで、本当に必用とされる自助具は、各地域で、「使う人のより身近なところで、一人ひとりに合った自助具を作ろう」との思いから、ボランティアグループ「自助具工房くわな」の発足となりました。

笹百合の可憐な甘き香が漂うような写真です

 筋ジスの私は、この頃から電動車いすを使っての生活になり、忘れていた肩で風を切る快感がとっても嬉しく、乗りまわっていたのですが、日常の生活をする中で最も身近な道具は、私の腕や手の役割をしてくれるモノをつかむ道具、リーチャーです。
 病院で「スウェーデン式リーチャー」を買い求めたのですが、握力の萎えた私には、もう少しバネがソフトで、もう少し長かったら使いやすいのにな、との思いがありました。
 それが私にピッタリのリーチャーを製作し手渡してもらえたのです。
 そのリーチャーを使って、台所で落したタマネギの皮が拾えた時は感動でした。自分で落したものを自分で拾える喜びは、本当に嬉しいものです。
 口コミで、リーチャー仲間もできました。そして、握力がかなりある人用のリーチャーBの製作誕生にも繋がっていきました。

発足してから5年目の今、「自助具工房桑名」のメンバーも、リーチャー、スプーン・フォーク・コップフォルダー類、足踏み式爪切りビンオープナー、長柄ブラシ・口紅・顔拭き・ヘアーブラシ・背中薬塗り類、持ちやすい箸、片手用編み機、受話器スタンド、ルームキャスター、サッシ窓開閉具、スプーンリフト、車いす用食事台など、また、他のボランティアグループの取り組みに必用なビーズクッション用足カバーの芯など、70種類ほどの自助具を200点ちかく製作し、メンバーはそれぞれのパートの持ち味をを活かし、自助具を必用としている人と、施行錯誤を重ねながら取り組みをしています。
 制作費は、材料費のみ依頼者から負担していただきます。自助具を必用としている依頼者が、社協まで来られない場合は、メンバーが自宅へ、ヘルパーさんと時間を合わせながら訪問し、障害の状態を把握し、まず依頼者の思いを大切にし、ワーク日、定例会などで話し合い、自発的製作者によって、自助具づくりが始まります。
 メンバーは、プロの集まりではありませんが、いろいろな経験、技術を持ち合わせ、考え方も様々あります。活動する上で衝突もあります。そんな取り組みの中から、共感できる喜びが育まれてきています。

見事な枝垂れ梅は喜びを歌っています


 昨年の5月には、NHK教育TV「ボランティアまっぷ」で、「自助具工房くわな」の活動が約1ヶ月間の取材後、放映されました。
 その中の一人である片麻痺のOさんと、自助具のメンバーとの出会いは、平成10年3月の桑名市総合福祉会館で開催した自助具展示会でした。
 Oさんは、毎日の生活の中で不自由なことが多々あるが、単身赴任ということもあり、特に爪が切れないのに困り、悩んでみえたのでした。展示品の中に卓上型爪切りを見つけ、それを自分が使えるような、足踏み型爪切りに改善してほしいとの相談からお付き合いが始まりました。
 メンバーの一人が廃材を利用し、試作品を作り、使い勝手を試しながらの製作が約1ヶ月ほどありました。親指の爪を切るのに台座に穴を開けるという、チョットしたアイディアで、上手く爪を切る足ふみ式爪切り自助具の完成となりました。
 Oさんからは、その後も背中薬り塗り具や、電話の受話器掛け具などの自助具の依頼があり、メンバーも製作の難しさと喜びと同時に、Oさんが生活の幅を少しずつ広げていく自助具の役割を、共有することがで゛きました。
 Oさんのアイディアを入れながら、会長Eさんのほのぼのとした温かさの中に、手直ししながら「ビンオープナー」の完成にいたるまでの過程、ワーク日、定例会等、メンバーの活動をあるがまま放映していただきました。
 その後、「身障くわな」の発行誌の記事に、「・・・・・多くの自助具を作ってもらい、そのおかげで生活の幅が広がり、自分の身の回りのことは、どんどん出来るようになりました。工房の人と付き合って感じたことは、障害者は一人ひとり障害によって違うのに、少しの不都合でも手直しをお願いしたら気持ち良く直していただけることでした。これからも困ったことは相談し、自分でできるように努力していきたいと思います・・・・・」[抜粋]というOさんからの記事に触れることができました。

 そして、今回グループとして2回目のさんかとなる、滋賀県福祉用具センターで開催された『’99自助具フォーラム』に、「自助具工房くわな」からも4名が参加し、大阪を中心に、広島、兵庫、滋賀、岐阜、愛知、三重と、23グループで134名の参加者の集いであった報告ももらいました。
 今、自助具を使って、メンバーとしてまた一人の利用者として言えることは、作る人と使う人が共に喜びを分かち合い、感動を与え、その人にとっては、なくてはならない道具となり、それが自立に繋がり、社会参加につながると確信しています。
 自助具づくりの輪が、それぞれの地域で、特性を活かしながら、地道に広がっていくことを願い、今後も参画して行きたいと思っております。

透き通るような水色の花菖蒲は貴公子のようです

《編集部注》リレー・車イスから眺めれば
自助具作りと福祉の心
愛知県F氏

 三重県に住むパソコン通信であるM子さんから、
「私たちの記事が雑誌に出たからよんでね。」という
パソコン通信のボードへの書き込みを見たのは2年前の春だったと記憶する。
それは、『 「自助具工房くわな」の活動」 』と題した記事で、平成7年からM子さんを
中心に桑名市で始まった「自助具」作りのボランティア活動に関するものであった。
(以下省略) 「リハビリテーション・1998/2・3月号より」

リハビリテーション・2000/2・3 bS21
特集・障害者の生活に便利なグッズの紹介より
上記抜粋

紅紫色のカタクリの花は風と光を浴び妖精のごとし


愛知県F氏こと常さん
詩を愛し歌を愛し私たち筋ジス仲間を常にやさしく励ましつづけ
2001年5月5日
天に召されましてもうすぐ一年を迎えます。
心からのご冥福をお祈りし、常さんの鼓動がきこえます。


光になりたい

光になりたい たとえ小さくてもいいから 
光になりたい  うち沈むあなたの頬に
微笑みの灯をともす やわらかな光になりたい

光になりたい 朝露のきらめきのような
光になりたい あなたの生命の尊さを
プリズムで見せてあげよう 跳ね躍る光となって

役に立たない私だけれど せめて小さな光となって
ほんの少しでもこの世の中を 明るくできたらいいのです

光になりたい 真冬の陽だまりのような
光になりたい 無表情に人生を
駆け抜けようとするあなたに 生きている温もりを伝えたい

光になりたい ひと粒の星屑のような
光となりたい あなたの心のくらやみに
ぽつんとひとつ輝いて 静かなエールを送りたい

何もできない私だけれど せめてひと条、光となって
ほんの少しでもこの世の中を 明るくできたらいいのです

1991年・常さん作詞冊子より抜粋

平成14年土星食 地球と月 神秘の一瞬


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