小現実    2006年野の花カレンダー  1〜3 4〜6 7〜9 10〜12                 


 影山一男選 2005/2

・地に垂るるノウゼンカズラ揺らしつつヌーッと伸びる黒猫の胴

・アスファルトに一寸法師跳ねあがり忽ちけむるしろき雨脚 (今月五首 影山一男)

・車いす止めて見上げるクレーンに吊られて高き秋風みたし


 杜沢光一郎選 2005/1

・米櫃に虫湧かしたるわが耳に「もったいない」と亡き祖母の声

・歌詠みつつ漢字かひらがなに迷えども今日の体調はひらがな気分

・夫への感謝の気持歌にして朝餉の卓にさりげなくおく

・朝ドラの「いきちょるだけでまるもうけ」の台詞にふとも涙腺ゆるむ (今月五首 .杜沢光一郎)


 森重香代子選 2004/12

・虹立ちぬ赤橙黄緑青藍紫呟くうちに淡々消えた

・通過してしまえば嵐嘘のよう雲間に開く青き天あり

・地震なり夫は即座に立ち上がり仁王立ちして時計に見入る


 高野公彦選  2004/11

・統廃合されし三駅点検すバリアフリーの駅舎は無人

・なんとまあつぼみ二つが蜜ためて猛暑に伸びるのびるカトレア

・「美(ちゅ)ら海」と題し日本画前にして眼を合わすなり南国の魚と


 小島ゆかり選 COSMOS集 2004/10

・集(あずさ)藍(あい)が語源なるらし紫陽花よ青から今年は紅色となり

・鉢植えの紫陽花の葉を揺らしては青小蛙の二匹来ており

・合言葉じゃらんじゃらんと書き終わり難きメールも和みくるらん

・「ややこしきわが人生」と拉致されし曽我さんの言葉胸つまるなり

・手付かずのテレホンカード九枚はそれぞれ祝いの引き出物なり


 宮里信輝選 2004/9

・芥子粒と見まがいしほどの種なるにベコニア真紅の大輪咲けり

・「呑み込んだもう構わんで」と言いし友われの知らない世界持つらし


 狩野一男選 2004/8

・ねつかれずねがえりできぬわれゆえに夫の寝息はいとにくらしも

・リハビリに「外郎売り」の科白読みリズムに乗るや快弁、快便

・特養に入りし友の電話なりたった一言「桑名へ帰りたい」


 奥村晃作選 2004/7

・花冷えにストーブを点けパソコンに向かいて探すかたくりの花

・「八時だよ全員集合」この時代そうです二度と戻ることなし

・車いす使えるトイレ何処にある有ります桑名に百十五箇所  (今月五首 .奥村晃作)


 木畑紀子選 2004/6

・時折に赤き箱あけつげぐしで夫は黙して髪とかしくれ

・よかったら着てねと義姉はモカ色の手編みのポンチョ羽織らせくれる

・わが介護夫は体力維持せんとアミノ酸など取り寄せて飲む


 影山一男選 2004/5

・障害もつわれの話を聴く小五いっせいに走る鉛筆の音

・寒椿暖房ききし部屋にては蕾のままで終わること知る

・霜に萎え子宝草は色失せて吾の心今「ロトの妻」なる


 岡崎康行選 COSMOS集 2004/4

・子供なきわれら夫婦は新札でお年玉そろえ姪の子を待つ

・年賀状だけのつき合いなどと言ういえいえそれが続きてこそ生
 
・お年賀に「風」の一文字あわあわと今の貴女がそのまま届く

・わが家の一番寒き玄関に頭梅ほころび春を誘(いざな)う

・年始め外出支援を電話して社会参加に一歩踏み出す


 宮里信輝選 2004/3

・横たわるベッドの横で車いすも充電を受けわが心充つ

・甘味噌の味見をと吾にヘルパーはフウフウをして蒟蒻くれぬ

・街路樹は道の左右でそのもみじ赤、黄に緑いろの異なる


 影山一男選 2004/2

・アルバムの整理すすまずぽろぽろと一つ一つに思い出 零る

・夕映えの色調まさにローランサン目を凝らし見る窓の視界に 

・委ねきる赤子のようにのびやかなレーナマリアの賛美歌の声  (今月五首 .影山一男)

・故障せしマウスの替り無きを知り筋ジスわれはおろおろといる 


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