

君島誠 2006/11
・挿し木せしハートサボテン三週目はや先端の動く気配す
・夢路には蛙の声に送られて朝はみんみん蝉におこさる
・稔田に野球帽子の案山子いて兄弟四人「へのへのもへじ」
・いつになく早口なりし母の声ひ孫の誕生知らせの電話
松田護夫選 2006/10
・うっすらと翠のこせしあじさいが今朝純白の毬となりけり
・紅刷毛のほさき鏡の中に見え梅雨の晴れ間を咲くねむの花
・名阪のガードに垂るる葛のつる簾のごとく夕日さえぎる
蓮本ひろ子 2006/9
・久々に朝霧の湧く橋の上車つぎつぎペールをまとう
・ぽっちりとセントポーリア花芽つくいのち蓄え十年目なり
・つる伸ばし真昼の土手にひるがおがの昼行灯を点していたり
木原昭三選 2006/8
・画面から匂い立つごとき満開の吉野の桜に釘付になる
・さくら咲く色合い微妙に異なりてかすみの空へたつ花吹雪
・朝掘りのたけのこ届くはやすでに湯がきされいてぬくもり残る
人見忠選 2006/7
・二千冊増刷をして五千冊「桑名トイレマップ」町めぐりゆく
・筋ジスのわれを寝返りさせんとし体引き寄する夫ねぼけ顔
・土踏まず走井山(はしりいざん)の花見なり満開の一枝を疾風が折る
山本清選 2006/6
・銀盤をしなやかに反り弧を描き荒川靜香のイナバウワー
・眠剤の力をかりて横たわる気弱となりし筋ジスわれは
・開花予報みやびやかなる仕事なり桜のつぼみ十個の重さ
仰木香織選 2006/5
・蝋細工思わせるかな花びらの黄一色の素心蝋梅
・筋ジスのわれの腫れたる足さする夫の両の手 千手観音 (今月の5首)
・ヘルパーが活けてくれたるひともとの万年青(おもと)の珠実に新ひかり差す
日野原典子選 2006/4
・筋ジスのわれに手足の爪だけが萎えることなくのびのびのびる
・年毎にふるさと遠くなりにけり子無き夫婦の正月しずか
・毎年の賀状は家族写真なる友が今年は犬いぬイヌぞ
・渋み増す人生それもよろしけれされど粉ふく甘柿がよし
岡崎康行選 2006/3
・できあがる自助具を手にした友達はわれの宝と受話器にはずむ
・できあがる自助具はいのちふきこまれ友の手となり夢たぐりよす
・竹群の桑部城址は削られて赤裸なり 消える風の音
宮 英子選 2006/2
・耐震の補強工事がとなり家にトンテンカンとはじまれる朝
・夕暮れの車窓より見る町屋川にアワダチソウのあかりうねうね
・苦手なる蜘蛛が画面を占領しマウスポイントの動きに反応 (今月の5首)
高野公彦選 2006/1
・ぷっくりとつほみ二つのカトレアは9月9日ひとつほころぶ
・カトレアが今年も咲いてくれまして窓辺の空気華やかになる
・ひんがしにサーモンピンクの淡き月時雨あがりぬ今宵十五夜 (今月の5首)
・ストレスを掛ける魔術師われなりとかわされ上手の夫の言うなり
木畑紀子選 2005/12
・のんびりと生活しますこれからは先ずリハビリと友は意欲的
・昼下がり雷雨上がりて風たちぬ汗ばむ肌はスッキリシャキリ
・さわさわと肌を撫でゆく野辺の風きのうの風と異なりて秋
小島ゆかり選 2005/11
・隣人のカサブランカは骨太よ香りゆたかに五輪開花す
・嫋やかにつぼみ膨らむササユリを今年は鹿に摘み取られたり
・ペンキ塗り深き溜息つく夫を網戸越しに見る車いすのわれ
杜沢光一郎選 2005/10
・ユキノシタ白き花弁は二本足空をけりあげ飛びたつごとし
・爪ほどのピーマンの実が七つ八つあれよあれよというまに食べごろとなる
・下向きにハートサボテンの花開き宝石のごとく朝日に光る
森重香代子選COSMOS集 2005/9
・慎ましく花芯覆いし花びらが今朝は全開桃色のバラ
・ルージュひくその瞬間に切り替わる気持はやくも外出モード
・ほんものとなりうる人材みきわめることなどいったい誰に出来るや
・旅に出る妹の留守を任されて母は元気に主婦復活す
・腹ぐあい悪いあんたは無理だねと気遣いながら頬張る夫
・花に水遣れば飛び出す雨蛙ヘルパーさんは黄なる声あぐ
桑原正紀選 2005/8
・ふくふくと赤白黄色のチューリップひらいてとじて今朝で三日目
・トーストにコンデンスミルクたっぷりと付ける夫の朝刊ねっとり
・山歩きの苞(つと)にどうぞと山藤を持って我が家に君は寄りたり
柏崎驍二選 2005/7
・春彼岸過ぎて雨ふるさむき日にやっと芽を出すわがチューリップ
・適当な花器みつからず取りあえず紅茶のポットに沈丁花活く
・臆病なわれの心を知りたるかヘルパーさらりと話題変えたり
影山一男選 COSMOS集 2005/6
・それぞれの家にそれぞれ匂いありヘルパーは知るそれぞれの匂い
・伊勢平野「快速みえ」に揺られつつ朝日に映える白き畝見ゆ
・筋ジスのわれの見る夢歩く夢 くり返し見る同じ夢見る
・ネットにて探すはたのしオウレンに雄花雌花のあるをも知りぬ
・悔やめども及ばぬ言葉多かりき独り歩きて空回りする
狩野一男選 2005/5
・なるほどねいわれてみればそのとおり確認しないわたしがわるい
・今年また隣人(となりびと)より節分の太巻き寿司を賜わりにけり
・生姜湯を啜りつつ湯気のすきまより寒波土産の積雪を見る
・冷たくてごめんなさいとヘルパーは手に息かけて母の眼差し
武田弘之選 2005/4
・背を丸め大根切り干しつくる母今年で最後と言うが口癖
・年の瀬を前に地球を揺するなり「災」一文字が瞼離れず
・暖房のききたる部屋の蝋梅は固き莟をふふみてござる
・忍耐は練達を生み練達は希望を生むとパウロは語る
狩野一男選 2005/3
・油絵を抜け出たようなラ・フランス二つころがるテーブルの上
・花言葉あなたを信じますと言うハイビスカスの一輪が咲く
・葛もみじ桜紅葉に柿もみじ車いすにて通りぬけたり
・雁がねや「く」の字を微妙に変えながら西の空へと吸い込まれゆく