日記(6月前半)

6月11日(水)
ここのところいきなりのようにいろんなことが勃発している。
確かにそれはそうだろう。何の不思議もない。いきなり違う世界に飛び込んだも同然なのだ。

前職で取り扱っていたものは機械関係が多かったので、ICや発電機、ハードディスク、ボルト、細かな部分品を毎日のように憶えていった。トラックの吐き出す排気ガスの中を歩き回って、荷物を探し、検査や仕分けをし、事務所に戻る頃には顔に黒い塵がついていた。一応デスクワークだったものの、体力勝負な部分が多々あった。
それが、学校に通っていたのんびり生活を経て、通勤1時間半の世界。激込み電車。怖いくらいに開いている電車とホームの間。
勤務中に飛び込んでくるクラシック音楽、楽団や指揮者の名前、演奏方法、レーベル名称、続々と届くサンプルの山。楽譜を入手するため、海外の財団に文書を送ったり、健在なのかさえも分からない未亡人に手紙をしたためたり。さぁ、交渉がうまく運んだ!と契約書の起こしもする。
確実に、今の職場に移ってから笑顔が増えた。人に恵まれているせいもあるのだろう。業務があまりにもシステム化されていないため苦労することはあるのだが、面倒なだけで、ほかに問題はない。苦あれば楽あり、だが、なんと言っても「楽(たのしい)」が多いと言える。

今日は楽団のマネージャーと営業の人の打ち合わせに同行する。
さすがイタリア人でかなり陽気。肝心の英語はイタリア語なまりに、これまたよく分からない業界用語や楽曲名、作曲家名がどんどん出てきて、理解に困った。
営業の人の方が、音楽に関する英語は詳しいので(当たり前であるが)、今日はほんとにアシスタント状態だった。でも勉強になった。音楽の知識をもっと付けないと、このままでは本当に恥ずかしい。

品川での打ち合わせの後、マネージャーの人と別れ、タクシーを拾って銀座へ。昼食を取りながら営業の人といろんな話をした。
この人には入社前から興味があった。正確にいうと、この人の思考回路に興味があったのだ。
あるCDについてこの人が評論していたが、その文章に私はかなり惹かれた。結構強気の評論なのだ。極端に言うと、“聴いてみてはいかが?”“おすすめだよ”なんてものじゃない。“俺がいいと言っているんだ。買え”みたいな感じ。この評論には“惚れた”と言ってもいいくらい。
面接の後、そのCDをそっこー買いに行ったし。
社内やミーティングで話しているのを聞くと、その彼の興味の対象が幅広いことを感じた。話がとても面白いのだ。まさに営業って感じで、人の心を惹く話ができる。
私より5歳上の人であるが、果たして私が5年後、彼と同じレベルの思考回路に辿り着けるかどうかは疑問である。
彼は結婚しているので好きになることはないが、私が10歳若ければ彼と不倫したいと思ったかもしれない。
私が男の人に対して好意を抱くポイントを、彼はちゃんとクリアしている(生意気な言い方であるが、ほかにしっくり来る表現がないのでご勘弁を)ので、好みには近いと言える。
そのポイントとは…

スーツが似合う (かつて私はスーツフェチと言われたことがある)
タバコを吸う (煙は嫌いだが、タバコを吸っている姿を見るのは好き)
オイルライターを使っている (使い捨ては論外!)
眼鏡をかけている
レディーファースト
気前がいい (らしい)
仕事ができる

こんなところ。

ところで彼が言っていたのだが、私が気を寄せている「彼」、かなりすごい人らしい。
ある道に詳しく、そのうち大家になるくらいの力があるそうだ。本を出している(それもかなり特殊な種類の)のは前に聞いたことがあるが、そうなのか。頭がかなりよくて、たぶん家も裕福らしいのも後で知ったが、やはりそうだったのか。
全然えらぶったところのない人なのに。

なんか、こういう彼の素晴らしい部分を聞くと、自分との隔たりを感じてしまう。まさに別世界の人、って感じがして、急に自分から遠い存在の人になってしまう。
そういえば、この彼は、前出の“私が好意を抱くポイント”を、気付く限りでは2つしかクリアしていない。眼鏡をかけていることと、仕事ができること。
彼はスーツが嫌いだし、鞄も忘れることが多いので、大体リュック。オイルライターどころかタバコを吸うことさえない。

でも好きなのだ。ふかふかして“熊”みたいなので、ぎゅ〜っと抱きしめたいと思うし、くるまれたいと思う。猫になって甘えたいと思う。まるでぬいぐるみみたいな感じ。
彼が7月にここを去ってしまうまで、十分に目の保養をしておこう。

6月5日(木)
今日、とってもショックなことがあった。
昨日書いた、今私がちょっと“いいな”と思っている人、実は会社の人なのだが、その人が7月で辞めてしまうという。
あぁ、もう打ちのめされたようなショック。
せっかく出会えたと思ったのに。これなら、“いいな”なんて感じるんじゃなかった。(なんて感情が聞き分けがいいはずないだろう)
もしかしたら彼女いるかもしれないし、婚約寸前とかもありえないとはいえない。それなりの年齢だし。

でもショック。
彼がいなくなるまでに、一緒にお昼に行きたいな。それくらいだったら誘っても何の罪もないし、機会があったら言ってみよう。
・・・・なんか脱力感。
ちょっと“いいな”どころじゃないじゃん。私、彼のこと“好き”なのかもしれない。

6月4日(水)
以前人から聞かれたことがある。
「誰かを好きになるって、どんな感じ?」

ちょっとびっくりしたけど、こう答えた。
「無意識のうちにその人を目で追っている。すれ違うと意識する。一緒にいたいと思う。話したいと思う。」・・・・
実際、無意識のうちにその人を追っていることはないと思う。意識して、その人を見ているのだと思う。
すれ違うと意識するのは中高生レベルか?でも、そんな意識の積み重ねが“好き”に結びつくのではないかと思う。

今はちょっと“いいな”と思う人がいるが、あまり考えないようにしている。
私はほかのことに対しては行動力の塊のくせに、はた恋愛となると、意気地がないような気がする。
いい顔されなかったらどうしよう、何となく交わされたらどうしよう、私に興味のひとかけらもなかったらどうしよう、なんて、自分が傷つくのを恐れているのだ。

いつからだろう。こうなってしまったのは。
昔はほんとに“当たって砕けろ”状態だった。とにかく好き、という気持ちを伝えたくてたまらなかった。
まさに“恋に恋していた”状態だったのだろう。相手が私のことをどう思っているかなんて、あまり考えなかった。彼女の有無さえも調べてなかったような気がする。

年のせいかな。寂しく思うが、今の気持ちの方が当たり前なのか、昔が元気よすぎたのか…。

6月1日(日)
今日は「ドイツ旅行展」へお出かけ。
このイベントのことは偶然、新聞で知ったのだが、2年に1度開かれている、なかなか好評のイベントのようである。
会社にドイツ好きそうな人がいたので、誘って一緒に行ってみた。
確かに。「旅行展」というネーミングが気になっていたのだが、ほんとにドイツのいろんな都市の観光ブース(というかテーブル?)があり、パンフレットや地図などが置いてある。
人気はなんと言っても、ソーセージとビール。ソーセージはドイツから空輸されているそうで、ビールは生。樽(サーバ)から注いでいた。
私はドイツは主な都市はほとんど回っているので、都市ごとのブースにはあまり興味がなかった。
お目当てはビール!ドイツ滞在時にほんとにおいしいビールにめぐり合っていたので、あの味をまた!と思ったのだった。
日本のラガーみたいな感じのビールは飲みやすいのであるが、私が苦手で滞在中、ずっと避けていたビールがあった。
それはバイツェンという種類のビール。少しにごっていて、ホップが強い。飲むとすぐおなかが痛くなっていたため、1度飲んでもう2度と飲むことはなかった。
しかし。今回、間違って頼んでしまった。
“味覚って変わるのかなぁ。”が正直な感想。少なくとも、私の想像の中にあった、「おなかが痛くなるぬるいビール」ではなかった。これは結構いけるかも。隣に座っていた同僚は半分以上残していたが、私は飲み干してしまった。あの頃、あんなに嫌がっていたのに。こうやって、食べられるものが増え、苦手なものが減っていくのかなぁ。でも私の嫌いなチーズ、これだけは克服できないんじゃないかと思う。
残念なことに、ソーセージは物足りなかったけどね・・・・。

この旅行展、ドイツにあまりなじみのない人や、行きたいと思いながら1度も行ったことのない人には、かなり楽しめるのではないかと思う。クイズや生演奏もあり、その点での興味は惹かれた。東京でしか行っていないみたいだが、日程が合えば皆さんどうぞ。