まず、送付が遅れましたことを、皆様におわび申し上げます。花時計の針が九十度動く間に、

世の中は激動の時を迎えましたね。こんな時でも、私たちのそばに俳句があるということは、

ささやかな救いや慰めになるのではないかと思います。世界中のだれもが平安に暮らせるよう

祈りつつ……いつになく神妙な態度で、披講に入ります。

【 今回の参加者 】 岩瀬須美子さん(須)、桑田国子さん(国)、鶴田梨子さん(梨)、

 中川睦さん(睦)、三島和美さん(和)、吉岡由布子さん(由)、海老沢光世(光)……以上七名

【 披講(番号順)】

1.昼顔の溶けかかりたる萎れやう 光世

2.やすやすと芥超え昼顔咲ける 由布子

3.昼顔やふるさとの家今は無く 睦

4 昼顔や愛せないのに同居せり 国子

表している。(和)

この感覚、言い得て妙です。(光)

5 ひざかりのひかりはじきてひるがほか 由布子

6 昼顔や集団下校見送りて 和美

7 あめんぼの二匹重なる社家の水 由布子

なんか面白い。(和)

8 心字池ちょきちょきと切る水馬 和美

その池が「心」の形をした池それをちょきちょき切る、というのが、おかしみがあります。(睦)

描かれていて楽しい。(由)

9 あめんぼう早起き会の寺の庭 睦

10.あめんぼは戻りつ進む水の道 由布子

11.つぎの角右に曲がるやあめんぼう 光世

感じさせる一句。(由)

  1.  あめんぼに雨の水輪の落ちてくる 由布子

  1. 天牛や土に帰らぬビニル傘 国子

  1. かみきりやひげで探りつ夜の団地 由布子

*(須)

15.天牛の踊り出すよに飛びたてる 和美

16.かみきりは美男におわす髭かざし 由布子

*大仏様も、かみきり虫も 見ようによっては、みな美男ということか。ちょっと悪役っぽい

顔だけれど。(和)

*釈迦牟尼は、でなく「かまきり」が美男、立派な髭からの連想が素敵(睦)

17.天牛や触るればきっと鳴く習性 由布子

18. 白玉や待つといふより待ち伏せす 国子

*恐い!! 恐さの面白さゆえにとった。が、「白玉」が動かないかというとどうだろう。どこかの

甘味処なんだろうか。(和)

19. 白玉も丸め甲斐あり友続々 梨子

*子供の食欲はすごい!夏の元気が湧いてくる句(睦)

20.白玉や破れし恋は美しき 睦

21.白玉ののどごしきのうにおいてくる 須美子

*白玉の食感をとてもうまく表現していると思った。(和)

*中八の字余りはちょっともったいない気もしますが、「白玉ののどごし」がすきです。(光)

22.白玉やご先祖様とわれわれと 光世

*何気ない言葉のつながりだけど、心象が美しい句ですね。私達の母も、そのまたお母さんも、

そのまたお母さんもこうして白玉を丸めていたんですね(睦)

23.不揃ひに白玉続々たなごころ 和美

24.白玉を独りまるめる嫁ぎけり 由布子

*嫁という立場を詠んだものか。大家族の分のたくさんの白玉をせっせと丸めているものと

とりましたが、いかに。(和)

*古風な嫁であるかのような自分に浸っているのでしょうか(国)

25.浮かびくる白玉まろき日暮かな 須美子

26.はたた神兄弟喧嘩しばし止み 和美

*子育てにお疲れのママ。はたた神の不安、恐しさよりも、「やれやれケンカが中断」と、

まさに雷サマは神様、という感じでしょうか。(由)

*日常の一こま。雷でなくて「はたた神」としたところが、兄弟喧嘩と響いてますね。むしろ、

下五で喧嘩しつづけてたほうが、もっと子どもらしくて(?)いいかな。(光)

27.橋に立てばゆりの香昇る紫香楽宮 由布子

28.墓洗ふ水流れざるひとところ 光世

*実感としてわかりました。ひしゃくで万遍なく掛けても、微妙に水の掛からないところって

ありますよね。確かに。

*お墓まいりに行った。そしてお墓を掃除した。どういう訳か水はけが悪い所があって水がたまる

ところがあった……ただそれだけの句ですが、作者の細かい観察眼と落ち着いた気持ちが感じ取れ

ました。お墓参りに行った時の気持ちが良く出ていると思いました。(睦)

*着眼点がそのまま、俳句らしい詩情になっている(国)

*(須)

29.歯磨きの水のつめたさ避暑の宿(睦)

*「冷たくて魚跳ねるごと手を洗う」という国子氏句を思い出しました。あれが冬版なら、これは水の

生活句の夏版という感じで水の感触がよく出ていると思います(由)

*朝、山の宿、共同洗面所などの蛇口をひねる、しびれるほど冷たい水が流れてくる。水のつめたさが

皮膚にまで伝わってくる句です

*何気ない出来事で、山間地に来たなあと実感する(国)

30.花火鳴り了ふお月さままつ白け 光世

*花火のときは主役を譲っていたお月様。その存在に人々が気がつくときには、すっかりけぶっている

というわけですね。花火の興奮だけでは終わらない作者の鑑賞眼がいいと思いました(和)

31.はらり取る紺の前掛君の汗  国子

32.緑陰にタイムカプセル開封す 国子

*ありそうですね。世紀末と新世紀には。おおいに。(和)

*(須)

33.音無くて変る心象遠花火 由布子

34.呉るると剪るきうりの重さ外れけり 由布子

*自然は一つとして同じ物を作らない……私たち人間も、そして人生も一つとして同じではない

……(国)

35.鈍行や近江の青田渡る旅 由布子

*すがすがしくてレトロな趣(国)

36.浴衣帯締めてはほどくうれしさよ 睦

*夏祭りのうきうきとした感じ、日常とちがうハレの日の(浴衣は本来晴れ着じゃないけれど)

楽しみが伝わってきました(和)

【おたより】

吉岡由布子さんより

 本郷で鉱物を見て本郷大地と上野大地の探検をしました。藍染川の上が道になって「へび道」

と呼ばれてるとこが、車の練習に良さそうで感動。ところで、上野東照宮から寛永寺五重塔の真下に

行けたらいいのに……と考えるわけであった。三崎(さんさき)坂で鶴太郎さんの鯛の絵ハガキを

買った。この辺のヒトだそうだ。

▼すっかり時期遅れになってしまいましたが、今年2001年は子規没後100年だそうで、9月の

子規忌前後に、普段は週三回(だったかな)ほどしかあけてくれない根岸の子規庵を連日公開していた

とか(時既に遅し。)寛永寺からは程近いですよね……ということで一言。(光世)

【次回要領】

兼題 竜胆、蓑虫、露、種採り、「ひ」で始まる句、当季雑詠

締切日 2001年10月31日(水)

投句先 桑田国子様あて