隙間人(すきまびと)のお話

 

 

 

 ある日のことでした。
 けんたくんは、一人でお留守番をしながら、絵本を読んでいました。
 でも、あまりおもしろくなかったので、本を閉じてしまいました。
 けんたくんは、寝っ転がって、畳の網目を眺めていました。
 すると、ふと、誰かに見られているような気がしました。
(何だろう…?)
 けんたくんは、びっくりして、飛び上がりそうになってしまいました。
 畳と畳の隙間から、小人が顔を出して、こちらを見ていたのです。
「うわっ!」
 けんたくんは、思わず声を上げていました。
 小人は、言いました。
「……やっぱり、僕が見えるんだ!」
 小人の頭は、おまんじゅうのようにまんまるでした。
 タワシのような髪の毛が、頭のてっぺんにだけ、生えています。
 クリクリとしたかわいらしい瞳で、けんたくんを見つめ、にっこりと微笑んでいました。
「こ、小人?」
 けんたくんは、言いました。
「うーん、その呼び方は違うな。ぼくは隙間人!」
 隙間人は、元気に答えました。
「すきまびと……?」
「そうさ、世界の隙間に住んでいるんだ。ヨッ、ヨイショ」
 ぴょこん。
 隙間人が、畳と畳の隙間から、出てきました。
 けんたくんは、笑ってしまいそうになりました。
 隙間人の体は、頭と同じくらいの大きさしかありません。
 とてもかわいらしいのです。
「世界の隙間って、畳の隙間とか、そういう所のことなの?」
 けんたくんは、聞いてみました。
「ははは、違うよ。君も今、世界の隙間にいるんだぜ」
「え?」
「ふふ、世界の隙間は、どこにでもあるのさ」
 隙間人は、にっこりと微笑みました。
 そして、少し寂しそうな顔をして、言いました。
「でも、心がにごってしまった人たちには、ぼくたちの姿が見えないんだ。……隙間は、どこにでもあるのにね」

 

 

 

「おーい、ピックル」
「あっ、ヤマサキさん」
 隙間人は、答えました。
 ピックルという、名前だったのですね。
 けんたくんが、声のしたほうを見ると、畳の隙間から、もう一人、隙間人が顔を出していました。
 あれれ。でも、今度の隙間人は、なんだか、ピックルとは違います。
 おじさんの隙間人です。
「ういー」
 隙間人のヤマサキさんが、よろよろと、畳の隙間から出てきました。
 ステテコ姿で、手には、小さな、お酒の一升瓶を持っています。
 ヤマサキさんは、
「よお!」
 と、手を上げながら、クリクリとしたかわいらしい瞳で、けんたくんを見ています。
「こんにちは」
 けんたくんも、あいさつをしました。
「そうかぁ。君も今、隙間にいるんだなぁ」
 ヤマサキさんは、言いました。
「え、隙間って……?」
 けんたくんには、何のことなのか、よくわかりません。
「おれも、世界の隙間にいる時に、隙間人たちが見えたんだ」
 ヤマサキさんは、遠くのほうを見るような目をして、言いました。そして、
「そのうちに、隙間のほうが楽しくなってきて、とうとう自分も、隙間人になったのさ。ははは」
 と言って笑いました。
「ヤマサキさんは、とても心がきれいな人なんだよ。大人になると、隙間人が見えなくなる人のほうが多いのに」
 ピックルが、言いました。
「はは。気が小さいだけさ」
 ヤマサキさんは、少しさびしそうな顔をして、言いました。
「ねえ。ぼくも、隙間人になれるかな?」
 けんたくんは、聞いてみました。
 ピックルとヤマサキさんは、顔を見あわせました。
「ははは。いつでもなれるさ。いつでもなれるから、今はならなくてもいいんだ」
 ヤマサキさんが、言いました。
 どういうことだろう、とけんたくんは、考えました。
 けんたくんは、いつも幼稚園で、ガキ大将のかんちゃんたちにいじめられています。
 隙間人になって、かんちゃんたちのいない、世界の隙間で暮らしたいのです。
 そんなけんたくんの気持ちが、わかったのでしょうか。ピックルが、
「でも、ちょっとだけ、隙間人になってみるかい?」
 と言いました。
「うん!」
 やった! けんたくんは、大喜びです。
「よーし。じゃあ、目をつぶってごらん」
 ピックルが、言いました。
 けんたくんは、目を閉じました。
「そのままだよー。そのまま、そのまま」
 ピックルの声が、聞こえます。
 けんたくんは、だんだん眠たくなってきました……

 

 

 

「……ここは?」
 けんたくんは、小川にかかる、橋の上にいました。
 川のせせらぎ、小鳥たちのさえずりが聞こえてきます。
「ようこそ、隙間人の世界へ!」
「あっ、ピックル」
 けんたくんの横には、ピックルがいました。
 いつのまにか、けんたくんは、ピックルと同じ背丈になっていました。
「ほら、ぼくたちの村が見えるだろう?」
 ピックルは、橋の向こうを指さしました。
 青い空の下、なだらかな大地に、黄金色に輝く小麦畑が広がっています。
 その向こうに、白い漆喰の壁の家々が、丘の斜面に沿って並んでいました。
 あれ? 一緒にいたはずの、ヤマサキさんがいません。
「ヤマサキさんは?」
 けんたくんは、聞いてみました。
「先に村に行っているよ。きっとみんなで、歓迎会の準備をしているはずさ」
 ピックルは、笑いながら言いました。
「えっ、歓迎会って……」
「さあ、行こう!」
 ピックルは、けんたくんの手を引いて、歩きだしました。
 二人は、小麦畑の中の、村へと続く一本道をのぼっていきました。


 村長さんの家で、けんたくんの歓迎会が開かれました。
 隙間人たちは、みんな、おまんじゅうのようにまんまるな顔をしていて、ぷにぷにしています。
 頬は、ほんのりピンク色に染まっていました。
 やっぱり、頭と体は同じ大きさです。
「みんな、新しい友達を連れてきたよ」
 ピックルが、けんたくんを紹介しました。
「はじめまして。けんたです。よろしくお願いします」
 けんたくんは、少し緊張していましたが、しっかりとあいさつをしました。
「ようこそ!」
「よろしく!」
 隙間人たちは、あたたかい拍手で、けんたくんを迎えてくれました。
 村長さんが言いました。
「けんたくん、よく来たね。さあ、今日は楽しもう! みんなで、歓迎会のごちそうをいただこうじゃないか!」
 いよいよパーティーの始まりです。
「うわあ……」
 けんたくんは、テーブルに並んだごちそうを見て、思わず声を上げてしまいました。
 ふっくらパンケーキ、捧チョコレート、けんたくんの大好きな、アイスクリームもあります。バナナにリンゴも!
 村長さんが言いました。
 ヴァイオリン弾きの演奏に合わせて、隙間人たちのダンスが始まりました。
 トントン、タンタン、トントン、タンタン。
 簡単なステップで、隙間人たちは、楽しそうに踊っています。
 けんたくんも、なんだか楽しくなってきて、捧チョコレートをほおばりながら、曲に合わせて手をたたきました。
 みんなは陽気に踊り続け、ごちそうを食べ、歌を歌い、それはそれはすてきな歓迎会になりました。
「よお! けんた」
 ヤマサキさんです。
 もうまっ赤な顔をして、干した木の皮のようなおつまみを片手に、葡萄酒を飲んでいました。
「みんな、聞いてくれ! けんたが歓迎会のお礼に、歌を歌いたいそうだ」
 ヤマサキさんが、みんなに、大きな声で言いました。
「ヤマサキさん! ぼく、そんなこと言ってません!」
 けんたくんは、驚きました。
 でも、隙間人たちは、拍手をしながら、わくわくした顔でけんたくんを見つめています。
 けんたくんは、少し恥ずかしかったのですが、勇気を出して、幼稚園で習ったばかりの『きらきら星の歌』を歌いました。
 隙間人たちは、静かに、頭を揺らしながら聞いています。
 けんたくんが、歌い終わりました。
「いいぞー!」
「ブラボー!」
 隙間人たちは、拍手をして喜びました。
 けんたくんは、ちょっぴり照れくさくなってしまいました。
 歓迎会は、いつまでも、いつまでも続いていました。

 

 

 

 あくる日、けんたくんは、ピックルの家のベッドの上で、目が覚めました。
「わっ、大変だ!」
 歓迎会で、はしゃぎ過ぎてしまい、疲れていたのでしょう。どうやらいつのまにか、眠ってしまったようです。
 家に帰ったら、きっとお母さんに叱られてしまいます。
「やあ、おはよう」
 ピックルが、部屋に入ってきました。
「ピックル、大変だ。ぼく、家に帰らなきゃ。お母さんに怒られちゃう」
 けんたくんは、心配でいてもたってもいられません。
 でも、ピックルは、にこにこしながら、
「ははは、大丈夫さ。世界の隙間では、時間の流れが遅いんだ。こちらでは、一日が過ぎたけれども、けんたくんの世界では、たぶんまだ五分ぐらいしかたっていないよ」
 と言いました。
「え、五分……」
 けんたくんは、きょとん、としてしまいました。
「そうさ。おいしい朝ごはんを食べてから、ゆっくり帰ればいいよ」
 ピックルが言いました。
 窓からは、朝日が射し込んでいます。
 緑の丘と、青い空が見えました。
 けんたくんにとって、こんなにさわやかな朝は、久しぶりです。
「けんた、起きなさい!」と、お母さんに、叱られなかったし、幼稚園にも、行かなくていいし。
「ねえ、ピックル」
「ん、何だい?」
「ぼく、ずっとここに住みたいよ」
 けんたくんは、ピックルを見つめました。
 きっとピックルは、「いいよ」と、言ってくれると思っていました。
 でも、ピックルは、静かに言いました。
「けんたくん、ここは世界の隙間なんだ。本当の世界とは違う」
「え?」
「君は、家に帰らなきゃ」
 何で?ぼくは、ここが好きになったのに。けんたくんは、悲しくなってしまいました。
「本当の世界じゃなくてもいい! うるさいお母さんもいないし、いじめっ子のかんちゃん達もいない!」
 けんたくんの目には、涙が浮かんできました。
 ピックルは、優しく微笑みながら言いました。
「けんたくん、世界が嫌いなら、自分の力で変えればいいんだよ」
 そして、励ますように、ぽん、と軽く、けんたくんの肩を叩きました。
「さあ、朝ごはんを食べよう。しぼりたてのミルクに、おいしいパンもあるよ」
 ピックルは「行こう!」と、けんたくんの手を引きました。


 お別れの時に、ピックルは言いました。
「世界は、変えることができるんだ。隙間があることに気がつけば、変えるのは簡単さ」

 

 

 

 けんたくんは、公園の砂場で、なかよしのアイコちゃんと遊んでいました。
 けんたくんは、アイコちゃんに、隙間のお話をしてみました。
「へー、私も隙間に行ってみたい」
 アイコちゃんは、言いました。
「隙間は、どこにでもあるんだって。ただ、みんな、気がつかないだけらしいよ」
 けんたくんは、ピックルに聞いたことを、そのまま言いました。
「え、それ、どういうことなの?」
 アイコちゃんが、たずねました。
 けんたくんは、しばらく考えてみましたが、やっぱりわかりません。
「ぼくにも、わかんない」
 けんたくんは、正直に言いました。
「なーんだ」
 アイコちゃんは、そう言うと、また砂のお山にトンネルをほりはじめました。
 けんたくんも、山の反対がわから、トンネルをほっています。
「あ、動いた。アイコちゃんの手が近づいてきている」
「ほんとだ。もうすぐ開通ね」
 いよいよ、トンネルが完成しそうです。
 と、その時、
「よー、よー、お二人さん。仲がいいじゃないの」
 かんちゃんが、手下たちをつれて、砂場に入ってきました。
「へへへ、けんたは、女の子とばっかり遊んでいやがる」
「弱虫なのさ」
「あははは」
 いじめっ子たちは、みんなで、けんたくんを冷やかしました。
 けんたくんは、何も言えずに、ただうつむいています。
「ちょっと、あんたたち。どうして、いつもけんちゃんをいじめるのよ!」
 アイコちゃんが、いじめっ子たちをにらみつけながら、言いました。
「あはは。けんたのやつ、女の子にかばわれてやんの」
「やーい、やーい。弱虫けんたー」
「べー」
 いじめっ子たちは、ますます調子にのって、けんたくんをからかいます。
「えーい!」
 かんちゃんが、せっかくけんたくんとアイコちゃんが作った砂のお山を、ふみつけてしまいました。
「何すんのよ!」
 アイコちゃんが、かんちゃんに飛びかかりました。
 でも、すぐにかんちゃんにつき飛ばされて、砂場にしりもちをついてしまいました。
 アイコちゃんは、まっ赤な顔をしています。
「あはは。そら、泣くぞー」
「泣くぞ、泣くぞー」
 いじめっ子たちは、今度はアイコちゃんをからかいました。
 その時です。
「やめろ!」
 けんたくんが、大きな声で言いました。
 みんなは、びっくりしてしまいました。
 一番びっくりしていたのは、けんたくんのことをよく知っている、アイコちゃんかもしれません。
「おっ、何だ、こいつ。やるのか」
「やるのか、やるのか」
 かんちゃんが、ボクシングのまねをしています。
「わー!」
 けんたくんは、かんちゃんに飛びかかりました。
「うわっ」
 かんちゃんは、けんたくんにのっかられてしまい、砂場にたおれてしまいました。
「わー!」
 けんたくんは、かんちゃんの大きなおなかの上に馬のりになって、ぽかぽかと、かんちゃんの頭をたたきました。
「うわっ、やめろ。やめてくれー」
 かんちゃんは、とうとう泣きだしてしまいました。
「けんちゃん!もうやめて!」
 アイコちゃんに止められて、けんたくんは、ハッ、とおどろいてしまいました。
 いつもかんちゃんにいじめられていたぼくが、反対にかんちゃんをやっつけているなんて。
 ようやく落ちつきをとりもどしたたけんたくんは、
「もう、弱い者いじめはしないか?」
 と、かんちゃんにのっかったまま、言いました。
「ひー、もうしません。しませんからゆるしてー」
 かんちゃんが、泣きながら言いました。
 けんたくんは、かんちゃんのおなかの上から、おりました。
「ひえー」
 かんちゃんは、逃げだしてしまいました。
 かんちゃんの手下たちも、
「うわー」
 と言いながら、かんちゃんのあとを追いかけました。


 けんたくんは、ポーッ、としています。
「けんちゃん!暴力はいけません!」
 アイコちゃんが、少し怒ったように言いました。
「……ごめん」
 けんたくんは、あやまりました。
 けんたくんの顔を見て、アイコちゃんは、にっこりとしました。
「でも、ありがとう」
 アイコちゃんは、けんたくんの服についた、砂をはらってあげました。


 けんたくんは、気がつきませんでしたが、すべり台の上から、ヤマサキさんが、ずっとけんたくんたちを見ていました。
「ふっ、けんたのやつ……」
 ヤマサキさんは、やさしい目をしていました。
 そして、
「おれもそろそろ……」
 とひとりごとを言いながら、立ちあがりました。

 

 

 

 もう、けんたくんの前に、隙間人たちが姿を見せることはありませんでした。
 ときどき、けんたくんは、畳の隙間をのぞいてみるのですが、まっ暗で何も見えません。
「もう隙間には行けないのかなあ」
 けんたくんは、ちょっぴりさびしそうです。
 そんなある日のこと。
「よお、けんた」
 けんたくんは、幼稚園の帰り道で、声をかけられました。
 ふり向くと、幼い女の子を抱っこした、おじさんがいました。
 おじさんは、にこにこしながら、けんたくんを見ています。
「あっ!」
 ヤマサキさんです!
「ははは」
 ヤマサキさんは、照れくさそうに、頭をかきました。
 ヤマサキさんは、隙間にいたときと違い、ちゃんとした洋服を着ていました。
 抱っこされている女の子が、かわいらしい瞳で、けんたくんを見ています。
「紹介するよ。おれの娘だ」
 ヤマサキさんが言いました。
 女の子は、
「きゃ! きゃ!」
 と笑いながら、楽しそうに手をふりました。
 ヤマサキさんに、子供がいるのも驚きでしたが、
「ヤマサキさん、体が大きくなってる……」
 けんたくんは、小人だったときのヤマサキさんしか知らないので、なんだか不思議な感じでした。
「ああ、おれも、もう一度がんばってみようかと思って」
 ヤマサキさんが言いました。
「え?」
「じつは、隙間に行く前の話なんだけど、おれ、リストラにあっちゃってさ」
「……」
 けんたくんには、難しそうな話でしたが、なんとなくはわかります。
「でも、なかなか家族に本当のことが言えなくて。会社に行くふりをして、一人で悩んでいたんだ。そんな時さ、公園のベンチで隙間人に出会ったのは」
 ヤマサキさんは、フッ、と空を見上げました。
「楽しかったなあ……。おれは一年ぐらい隙間にいたような気がするよ。こちらの世界では、二日間しかたっていなかったけど」
 ヤマサキさんは、またけんたくんのほうを見ました。
「けんたに会わなきゃ、まだ隙間にいたかもな。……ありがとよ、けんた」
「……?」
 けんたくんは、ぽかん、としています。
「パパー」
 長い髪を後ろで束ねた、とてもきれいな女の人がやってきました。
「おう」
 ヤマサキさんが返事をしました。
 女の人は、ヤマサキさんの横にならびました。
「ははは。おれの女房だ」
 ヤマサキさんが、けんたくんに、自分の奥さんを紹介しました。
「あら、かわいらしいお友達ね。こんにちは」
 ヤマサキさんの奥さんが、おじぎをしました。
「こ、こんにちは」
 けんたくんは、ちょっぴり緊張してしまいました。
「おっと、そろそろ行かないと。……おれ、女房の実家の、牧場の仕事を手伝う事にしたんだ。じゃあな、けんた」
 ヤマサキさんが手をふって、バイバイ、をしました。
「あ、ヤマサキさん」
 立ち去ろうとするヤマサキさんを、けんたくんは呼びとめました。
「ん?」
 けんたくんは、少しもじもじしながら、言いました。
「また世界の隙間に行けるかな……」
 ヤマサキさんは、にこっ、と笑いました。
「ははは。けんた、隙間への行き方は、じつはおれにもよくわからないんだ。だけどな、……たぶん隙間は、どこにでもあるのさ」
 と言うと、親指を立てながら、けんたくんにウインクをしました。


 けんたくんは、楽しそうに歩いていくヤマサキさんファミリーを見送っていました。
「けんちゃーん!」
 けんたくんの後ろから、アイコちゃんが走ってきました。
 アイコちゃんは、けんたくんの横にならびました。
 ヤマサキさんファミリーの後ろ姿を見ながら、
「だれ、今の人?」
 とけんたくんに聞きました。
 アイコちゃんは、不思議そうな顔をして、けんたくんを見つめています。
「ほら、この間話していた、ヤマサキさんだよ」
「あ、隙間のお話の人ね」
「うん」
 けんたくんは答えました。そして、アイコちゃんの手をしっかりと握り、歩きだしました。

 

 

 

 

 

 

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