真夏の夜。僕は暗闇に静まり返った夜の街を歩いていた。
どうしてかっていうと、長くなるから話さないけど、そんな時、金田一君に出会った。
あれ、金田一君じゃないか。どうしたんだい、こんな真夜中に。
そう聞くと、金田一君はこの辺りに潜んでいる通り魔を追っていると話してくれた。
大変だねえ。金田一君も。まあ、これも運命なのかな、金田一耕助の血を受継いだ君のさ。
なんて、僕も調子のいいことをいう。
「ああ、じっちゃんの事ですか。でも、あの人は苦情も多かったんですよ」
と、金田一君。
へえ、どうしてだい。あんなに事件を解決したのに。
「事件現場にふけをまき散らしていくもんで、警察の人とかから文句いわれるんですよ」
ああ、そういえば、そうだったね。僕も知っているよ。
「そういえば、僕も最近ふけが多くて」
そりゃあ、そうだろうねえ。遺伝もあるだろうけど、なにより大変な仕事だものねえ。
「ええ。でも、やりがいはありますよ」
探偵っていえば、月にどのくらい儲かるの?
「月によってまちまちですが、一番多かった時は、一つの事件で二千万程謝礼金をもらいましたよ」
二千万! そりゃあ、すごいねえ。僕も、探偵やってみようかなあ。
「あはは、でも、そんなのは稀ですけどねえ」
金田一君、笑いながらいった。
「あ、そうそう。さっきいってた、通り魔の事件について、何か知りませんか?」
そ、そんなの知らないよ! 僕が知るわけないじゃないか!
「そうですよねえ。はあ、また手がかりなしか」
捜査は難航してるのかい?
「ええ。分っているのは、犯人の口元にほくろがあるってことくらい」
金田一君は落ち込みながらいった。
「あれ? そういえば、あなたも口元にほくろがありますよね?」
や、やだなあ、なにいっているんだい、金田一君。
「あはは、すいません。変な事いって」
金田一君は笑ってそういった。
僕は、後ろ手に持った血塗れのナイフを隠しながら、ほっと胸をなで下ろす。