ある夜のフンザ
ある夜のフンザ
ある日、旅人のKさんが滞在していた宿で晩御飯を食べた。
その日は昼からその宿に遊びに行っていた。
フンザ地方はすでに冬の気候で、日が落ちるとめちゃくちゃ冷え込む。
おまけにその夜は計画停電の日で、
夜の9時を過ぎないと電気がこない。
そこで宿の主が炭で火をおこしてくれた。
6時。晩御飯を食べはじめる。
少しすると私の手元はかすかに震えはじめた。
食前の一服がきいているのだろうか。
始めはそんなことも考えていたが、震えはおさまるどころが、
だんだんと激しくなってくる。
私はおいしいご飯を食べることができずに
少し椅子にもたれかかって休憩することにした。
体の震えは止まらない。
始めは手元だけが震えていたのだが、
だんだんと全身が震えはじめる。
自分の意志では止めることはできない。
食堂のテーブルを蹴倒す勢いで、震えてきた。
やがて目の前が真っ白になり視界がなくなる。
耳鳴りもひどくなってきた。
後から話を聞いたところによると、tripping844やKさんは
必死に呼びかけていたらしいのだが、私は知らない。
やがて、もう一人いた日本人女性の体にも変化が現れはじめた。
彼女も体が震えてきたのだ。
女二人の様子が激変したのを見た男二人は
私たちのことを『死霊のはらわた』みたいだ、と言う。
その言葉だけは何故か聞こえたから不思議。
その男二人も頭痛がひどくなってきたらしい。
宿の主はようやく理由がわかったのだ。
<一酸化炭素中毒>
シラフの状態ならもう少し徐々に異変を感じるのかも知れないが
その時は皆昼間から一服していたので、
体の反応は敏感になっていたのだろう。
空気を入れ替えてしばらくすると私の体は落ち着いてきた。
tripping844とKさんは体は震えなかったものの、
翌朝まで頭痛が続いていた。
寒いときの換気は本当に大切なことだと、思い知らされた夜だった。
恐るべし、一酸化炭素。
NEEN
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