パプー・サイン


パプー・サイン




昼近くになって目を覚まし、
部屋のドアを開けると、
三弦楽器の師匠、ゾール・サインが
レセプションで私達が「大将」と呼んでいる
宿のオーナーと話し込んでいた。
私は先日から、
この有名なトラディショナル・フォークシンガーに弟子入りし、
パキスタン、特にパンジャブ州の弦楽器「トゥンバ」を習い始め、
NEENは私の師匠の息子を師匠に
両面手打ちのドラムを習い始めた。
これからスーフィー・ドラム(ドール)を習う上で
基本的なリズムの取り方を認識すると同時に、
他のパキスタン音楽に触れるのを目的に
「大将」がアドバイス、アレンジしてくれたのだ。

遅い朝食の後で約一時間半のレッスンをうけ、
私とNEENと大将はドールの師匠となる
パプー・サイン&ジュラ・サインの二人に会いに出かけた。
私もNEENも最近になってウルドゥ語の勉強を始めたが、
まだまだ会話できる程度にもなっておらず、
大将の助けが必要だったのだ。

パプー・サイン&ジュラ・サイン。
二人はラホールで毎週木曜日に行われるスーフィー・ナイト
(スーフィズムの宗教儀式)のメインフロアでドールを演奏している。
これまでのパキスタン滞在でたくさんの時間を共有した
グンガ・サイン&ミトゥ・サインの兄弟子にあたる二人だ。
スーフィー・ナイトでの演奏はよく見ているが、
実際に話すのは初めての事だった。
彼らの家はラホール中心部より
東に6キロほど行ったシャーリマール庭園より
さらに4キロ先にあった。
海外公演も多数こなしている超一流ドラマーの家は
驚くほど質素だった。

ドールを学びたいという私達にパプー・サインは語った。

「ドールが上達するかどうかは脳味噌次第だ。
脳味噌がよければ、
楽器とコミュニケートできる、音そのものとコミュニケートできる、
その音を耳にしている人の心とコミュニケートできる、
勿論、言葉無しにそれを教える者とのコミュニケートもできる。
コミュニケートできれば自分が何をすればいいか解るし、
自ら音に導かれ必ず音を創り出して行ける」

私達はジュラ・サインの巻いたジョイントの煙の中で
呆然としたまま
その言葉を聞いたのだった。

初めてのレッスンは今週の金曜日から始まる事になっている。



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