ここは大きな森のはずれのある動物たちだけの
場所です。
人間はほとんど、まず滅多に踏み入れることは
ありません。今までは一度も誰も入ってきたことは
ないのです。

川の向こうから橋を渡ってウサギのホモイが帰ってきました。何か大きな物を持って
います。
周りも大騒ぎになりました。
村の連中が少しづつ集まってきました。
ホモイのお父さんもお母さんも、不思議な顔をしています。
「おまえ、一体これをどこで拾ってきたんだい。」
お母さんが驚いた顔をして聞きました。
お父さんも、目を丸くしています。
村の連中もかなり騒がしくなってきました。
「森の奥のほうで遊んでいたら、キラリとしたんだ
行ってみると、ものすごく輝いていてびっくりしたんだ。
他に、ケムラも居たけど逃げちゃったよ。
僕は恐くなかったから近づいて。そして持ち上げたら
軽かったんだ。あまりにキレイなので持ってきたんだ。」
 しばらくしてから長老がやってきました。この村では
一番の物知りです。まず、知らないことはありません。
「なんじゃ、こりゃあ、たまげたなあ」
さすがの長老でも、これが何か、さっぱり分からない様子でした。
大きさは、ホモイたちウサギにとっては結構大きいです。
丁度両手をいっぱいに伸ばしたくらいの直径はあるでしょう。
表明は、すごくピカピカです。
顔もきれいに写ります。単に写るだけでなくて
虹色に輝きます。
村の連中は一通りこれを見ましたが、やはり何度見ても
飽きることはないのです。本当にキレイな薄い円盤です。
ホモイは、ある程度したら家にもって帰りました。
そして、家の中でも一番上等な部屋に飾りました。
せっせと、この円盤を磨くのでした。
「お父さん、ねえ、明日この円盤を置く台を作ってよ。」
ホモイは、あまりおねだりをするような子供ではありませんでしたが
手をもみもみしながらおねだりをしました。
「うん、分かったよ。明日山で木を採っておいで、今夜はもう疲れたろうから
寝なさい。」
お父さんは、やさしくホモイに言いました。
ホモイも素直に言うことを聞いて、自分の部屋に戻って
ぐっすりと寝ました。
「ねえ、お父さん、本当にこれは何でしょう。」
お母さんウサギは本当に不思議そうに覗き込みました。
「そうだねえ、きっと何かいいことがある宝物だよ」
お父さんウサギは、そういってお母さんウサギと話をしていました。
夜もどっぷりとふけていました。

早速、次の朝、村の者が何名かやってきました。
「おはようございます。もう一度昨日のアレを見せてください。」
何人かは、やはり見たくて仕方が無かったようです。
「まあ、どうぞお入りなさい」
お父さんウサギは座敷に通しました。ホモイは
上等の布で、キレイに磨いています。
「やあ、ホモイおはよう。」
「おはようございます。どうぞ見ていってください。」
ホモイは、丁寧に座敷に通しました。
「いつも、御利口だねえ。」
「まだ、きちんとした台が無いので今日お父さんに作ってもらうんです。」
そういって、しばらくして、朝ご飯をたくさん食べてから
ホモイは山に出かけました。
その間にも、ホモイの家にはたくさんの村の方がやってきました。
お父さんも、お母さんも相手をするのにに大忙しでした。
しかし、皆さん、お土産やらを持ってきてくれるので
少しばかし、お父さんとお母さんもいい気分でした。
「ホモイの奴、遅いなあ。」
お父さんウサギは少し心配しました。木を取りに行くくらいなら
そんなに時間はかからないのです。
「きっと立派な木を選んでいるのでしょう」
お母さんウサギは言いました。
それから、しばらくして辺りがうっすらと暗くなる頃に
ホモイが帰ってきました。
何か、持っています。キラキラと光ります。
「ただいま、僕また何かひらったよ。」
長老がやってきました。
「なんじゃ、これは、これも見たことがないぞ」
それは、ホモイが持ってもそれほど大きくありません。
四角い形はしていますが、真四角というわけではありません。
ときおり、自分で緑色にぴかぴかと光るのです。
周りが暗くなれば、それは余計に光り出しました。
昨日の円盤は自分で光ることはないですが、今日の四角いのは
ぴかぴかと光ります。本当にキレイです。
また、ホモイが家に持ち込もうとしてびっくりしました。
座敷には村の方からのいろいろな品物やごちそうがあったのです。
早速、今夜は頂いたごちそうを食べることにします。
「ねえお母さん、僕あれもこれも食べたい。」
「駄目ですよ、こんなにたくさんは食べられないから近所にも配るんですよ」
お母さんがそういうと、ホモイも、それはいいといいました。
「でもなんだか偉くなった気分だね」
お母さんは、そんな事はないですよといいましたが、
ホモイはすっかりいい気分でした。
お父さんウサギも、まあいいじゃないかといった感じでした。
お父さんウサギは頂いたお酒を飲みながらごちそうを食べました。
ホモイも妹と一緒に、ごちそうを食べています。
お母さんも上機嫌です。
晩御飯は楽しく、過ぎていきました。
ホモイが言いました。
「もう食べれない。残してもいい?」
「ほら言ったでしょう。もったいない」
お母さんウサギがそういうと、ホモイは、
「こんなにあるから大丈夫だよ」
「駄目ですよ、食べ物を粗末にするとバチが当たりますよ。」
お母さんウサギがそういうと、お父さんウサギも同じ事を言いました。
本当は、ホモイはすごくいい子供なのですが少し悪ぶってしまいそうです。
ホモイは、結局ごちそうを残して座敷に行きました。
せっせと、上等な布で円盤を磨いています。

次の日に、お母さんウサギに頼まれて買い物に行くことになりました。
その途中で、村の大きな道を歩いているとホモイより小さな子供寄ってきました。
「おはようございます、ホモイさん。昨日お父さんが話しているのを聞きました。
ホモイさんは立派な人だから、ああいう宝物を手にすることが出来るんだ。
いやあ、立派な物だ。と言っていました。ホモイさんは立派なのですね。」
そういうと、子供はお辞儀をして向こうに行きました。
ホモイは、別に何のことだろうと思いながら気にもせずに
歩いていきました。
そうするとまたすぐに女の方にあいました。
「あらホモイさん、おはよう。あなたはすっかり立派になって羨ましい。
どうかうちの子供と仲良くしてやってください。それではそようなら」
そう言い残して行ってしまいました。
ホモイは少しづつ気分が良くなってきました。
だんだんと気分は更に良くなってきて
鼻歌を歌いながらスキップでお店に向かいました。
丁度その時に大きな虫がホモイの前にボタッと木の上から
落ちてきました。
「うわあ」
かなりホモイはびっくりしました。
「びっくりしたなあ、今度そんな事をしたら承知しないぞ!」
虫は、たまたま落ちてしまったのですがホモイの前では
ビクビクしているだけでした。
本当に、びっくりさせやがって!今度そんな事をしたら
死刑だぞ。僕はすっかり偉くなったんだから。
しばらくしてお店につきました。買い物を済ませて
お金を払おうとすると、お店の方は
「いいえ、お代を頂戴したら罰があたります。結構ですよ。」
ホモイはふうん、といった感じで品物だけを受け取りました。
小さな声で
「ありがとう」といって帰りの道につきました。
段々と気分は高まりました。
それにしてもいい気分です。
先ほどの虫が泣いていました。
ホモイは気がつかなかったのですが
虫のほうが声をかけました。
「先程は失礼いたしました。子供がトンでもないことをいたしまして
どうか、お許しください。」
虫のお母さんが誤りました。
「まあ、今度は許してあげるけど、今度したら承知しないからな」
ホモイはややきつい口調で言ってしまいました。

家に着いて、お母さんウサギに品物とお金を渡しました・
「あら、お金が減っていないじゃない」
そういうと、ホモイは
「うん、要らないってお店の人が言ったよ。だって僕偉くなったんだよ」
お母さんウサギはびっくりして言いました。
「何を勘違いしているのです。偉くなったわけではありません。あとでお父さんと一
緒に
お店にお金を払いに行きますよ」
ホモイはすっかり不満な顔をしていました。

お父さんウサギが帰ってから、お母さんウサギと妹と一緒に
お店のほうに行きました。お金のほかに、手土産も持っていきます。
村の方から頂いた中から上等な物をお父さんウサギは選びました。
ホモイは、すっかり不機嫌でした。
先ほどの虫にも会いました。
「これはホモイさん、どうかゆるして下さい。」
それを聞いたお父さんウサギがどうしたのですかと聞きました。
事情を聞いたお父さんが、今度は虫の親子に頭を下げました。
「これは申し訳ないことをしました。息子は別に立派になったわけではありません、
どうか気にしないで下さい。」
そういってその場を離れました。
お店についても、なかなか御主人がお金を受け取ろうとしません。
結局お金は受け取って頂きましたが手土産は受け取りませんでした。
ホモイは手土産を渡さなかったので少し喜びました。
うれしく、家に戻ろうとしました。
その時に先ほどの虫の親子に会いました。
お父さんウサギが、その手土産を渡してしまいました。
虫はなかなか受け取ろうとしませんでしたが、何とか受け取って頂きました。
ホモイはかなり不満足でした。
お父さんウサギは言いました。
「別に偉くなったわけじゃない。もし偉くなったとしても、
偉そうにすることはないんだ。今まで通りの素直なホモイのほうがいいぞ」
お母さんウサギも、同じように言いました。
「私も、今までの素直なホモイが好きですよ」
月がきれいな夜道をゆっくりと歩いて帰りました。
ホモイはすっかり、元の素直なホモイに戻っていました。
久しぶりに、みんなで森の道を歩いて帰りました。
帰ってからは村の皆さんからのいただき物を
食べるのですが、必要以上に手をつけることもなく
食べる分だけきちんときれに食べ終わると
「ごちそうさまでした」
そういうとお父さんウサギとお母さんウサギも
一安心した様子でした。

すっかり元の生活に戻り幾日か過ぎました。
森の外れでホモイが遊んでいるとキツネがやってきました。
「これはこれはホモイさんじゃありませんか、お目にかかれて
光栄です。森の者に聞きました。あなた様はすっかり立派に
なったそうじゃありませんか。」
このキツネは森の外れに住んでいて村の連中からも
嫌われていました。いかにもずる賢い雰囲気です。
しかしホモイにはまだそれは分かりません。
「いや、僕は立派じゃないよ。みんながかってにそう思っただけなんだよ」
ホモイが、まだ、その先をしゃべろうとしましたが
キツネが途中で口を挟みました。
「いや、これはきっと神様があなたを選んだんですよ。
立派な方はもっと立派な方のように堂々と
もう少し、偉そうにしなくてはいけません。
これは、そういう事なのです。もう少し堂々と
偉そうにするのがあなたのおつとめなのですよ。」
ホモイは、困りました。
キツネは、今日のところは帰っていきました。
ホモイは、また森の中を動き回りました。
また、何かいい物は落ちていないだろうか。
そう思いながら森をさまよ居ましたが
何も見つかりませんでした。
家に帰ってから、今日も円盤を磨きました。
本当にピカピカしていてキレイです。
妹も手を出したいようですが
まだ小さいのでホモイは触らせてあげませんでした。
晩御飯の時間になりました。
「今日はキツネさんにあったよ。そうしたらほんとは偉いんだからもっと偉そうに
しないといけませんよ。といってたよ」
お父さんウサギは、すぐに
「あのキツネは悪いキツネなんだ。きっとおまえから何か分け前でも
もらおうとしているんだ。もう会っては行けないよ。」
お母さんウサギも、同じ事を言いました。
ホモイは分かったというような雰囲気でした。

このピカピカ光る薄い円盤の噂はどうやら、遠くはなれた隣の
町にもきこえた様です。そして、今度
そこの偉い方がやって来る事になりました。
村としては大事なお客様なので大切に扱うことにしました。
道をキレイにはいたり、壊れている橋をなおしたり大人たちは大忙しでした。
子供のホモイも少しは手伝いましたが、大人にとってはただの
邪魔でしかありません。大人たちは少しだけ手伝ってもらって
「ありがとう、今日はとっても助かったよ。もういいのでみんなで森にいって
遊んでおいで」といいました。
早速、ホモイたちは仲間と上機嫌で森に遊びに行きました。
町から偉い方がやってくるのうれしいのですが、お手伝いをして誉められるのが
うれしいようです。
ホモイたちはかくれんぼをしました。ホモイは隠れるほうです。
いつも、ホモイはすぐに見つかってしまうので、今日は少しとおくまで
隠れました。
少し窪みを見つけました。そこに体を隠しました。
「何だこれは?」
何かクルマのような物を見つけました。
大きさは今までの物とと比べて割と小さいです。
中が透き通って見えます、
別にピカピカ光ることはありませんでしたが、
面白い形をしています。下には何かまあるい物がついていて
押すとくるくると回ります。
上のほうは押さえると少しだけへこみます。
カチカチっとおともします。長い線もついています。
かくれんぼの途中ですが、ホモイは出てきてみんなにこれを
見せました。
「一体なんだろう?」
「おーい、みんな、出ておいで。ホモイがまた何か見つけたよ。」
中間たちが、ぞろぞろ出てきました。
また、みんな不思議そうに覗き込んでいます、
さすがのホモイも驚いています。
一体、何だろう。そして、どうして僕ばっかりが
こんなに宝物を見つけるのだろう。やっぱり、僕は
みんなとは違うんだ。きっと僕は本当は偉いんだろうか。
今度は、ホモイは自分でその長い線のくっついた、クルマのような形の
物を仲間に持たせて自分は先頭に立って村の広場に帰ってきました。
大人たちが、きれいに掃除をしているところにやってきたのです。
「おや、またホモイが何か見つけたようだ。」
また村の人たちは驚きました。これも、ものすごくきれいなのです。
そして、やはり、本当にホモイは偉いんだと思い込みました。
また、同じように、ホモイの家の座敷に飾られます。
そして、村で一番の大工さんに立派な台をこしらえてもらいました。
後は、もう一度ピカピカに磨いて、明日の町から偉い人がやってくるのを
待つばかりです。
そして、夕ご飯になりました。
「ねえ、お父さん。どうして僕は3つも、あんなにすごいのを見つけたんだろう。
やっぱり
偉くなったのかなあ。」
お父さんも、さすがに、本当にホモイが偉くなったのかなあと思い込むようになりま
した。
「うん、そうかもしれないねえ。しかし、偉いからといって偉そうにするといけない
よ。」
ホモイは、おどろいた感じでお父さんウサギの顔を見ました。
そうすると、お母さんウサギが言いました。
「本当に偉くなったら、困っている方のために、その力を使うのよ」
お母さんウサギもにこにこしながら、本当にホモイが偉くなったんだろうと
思いながらしゃべりました。
妹も、ホモイが偉くなったんだと思いました。
ホモイも素直に、偉そうにするんじゃなく、みんなのためになることを
しようと考えました。

ホモイは床に着きましたが、なかなか眠れません。明日の町から偉い方が
やってくるのが楽しみでわくわくしていて、いつまで経っても眠ることは出来ません
でした。
「ああ、僕は偉くなったんだ。みんなのためにがんばろう。しかし少しくらいの贅沢

いいだろう。みんなが幸せになるんだったら、それくらいの御褒美があってもいいだ
ろう。」
いつのまにか、眠り込んでいました。
そして夢をみました。
神様が出てきました。思っていた通りの神様です。白い服を着ていて
なんか、いい臭いもします。そして暑くもなく寒くもなく、ちょうど
いい気分でした。体もふわふわしています。
「ホモイよ、おまえは偉くなったんだからみんなの幸せになることをしないといけな
い。
そのためには、贅沢はしてはいけない。ちゃんと最後に思いっきり贅沢をさせてあげ
るので
その時までは、みんなの幸せのためにがんばるんだ。
 別に、がんばるといっても、何もあくせく働くことはない、ただ今まで通りの素直

ホモイであれば良い。一体何がみんなの幸せかを考えなさい。」
窓越しの、朝の日の光で目を覚ましました。とても気持ちのいい目覚めでした。
ホモイは、夢の中のお話を全部覚えています。

朝ご飯をしっかり食べていつもよりも丁寧に顔を洗い歯を磨いて
いつもより御上等な服を着ました。
3つのホモイの宝物は、村の広場に移されて、きれいに飾られました。
村の連中もいっぱい、集まってきました。まるでお祭りのようになってきました。
村長さんもうれしそうです。
やがて、村の向こうから、町の偉い方の一行がやってきました。
まずは村長が出迎えて、挨拶をしました。
そして、ホモイも、挨拶をしました。きちんと挨拶が出来たので
村長と町の偉い方から、ものすごく誉められました。
「早速3つの品をご覧ください。」村長が案内します。
「いやはやまあ、これは立派な物だ、たいした物だ。それも3つもあるじゃないです
か。
いやはやホモイさん、あなたは立派ですねえ。ぜひ、皆さんのためにこれからもがん
ばってください。」
宴会が始まり、ホモイは3番目にいい席に座っていました。ものすごくいい気分で
す。
村の方からも、町の方からもものすごく尊敬された目で見られているのが分かりまし
た。