「今度の日曜日晴れたらいいねえ。ママ御弁当作るっていってたよ。」
久しぶりに、親子3人で動物園に行く予定だ。普段は、なかなか面倒くさくって
動物園にはいかない。どうせいくならショッピングとかテーマパークのほうがいいけ
れど
象やキリンのほうが良いのだろう。
実際に、テーマパークは行くまではわくわくして楽しいけど、渋滞や、入場待ちや
戻ってからの体のだるさ、そして、お土産の整理を考えるとぞっとする。
特におみやげなんてそうだ。テーマパークに居る時は欲しいけど、家に帰ってくると
本当に無用の長物でしかない。結局数年経って荒ゴミになってしまう運命だ。
そう考えると、動物園は良いなあ。なんだかわくわくしてきたぞ。3人で手をつない
で
ゲートを抜けると、そこはパラダイス。まるでアフリカに来たような気分だ。
まあ、そこまでは行かないけど、御弁当を食って、適当な時間まで居て後は家に帰っ
て
ビデオでもみながらゆっくりするのも悪くはない。まあ、オレのほうが楽しみに
なったりして。
「雨が心配ねえ。天気予報じゃ40%って言ってたわよ。どうかしら」
心配性のママは、何でも心配したがる。それ位のほうが、客も少なくて
いいんじゃないの。そう言い返した。当日は、抜けんばかりの晴天でどこまでも続く
青空だ。
御弁当作りにも精がでる。
暑くもなく寒くもない、カラっとしている。最高の気持ちだ。車も使わずに
電車で行くことにした。駅まで7分ほど歩き、電車は1分も待たないうちにやってき
た。席も丁度空いている。
うるさいガキも居ないし、全然込んでいない。下を見下ろすと車は長蛇の列だ。
ああ、良かった。なんてラッキーなんだ。ざっまあみろ。と、思わず思ってしまう。
御菓子やジュースを飲み食いしながらあっという間についた。これだけでも十分に楽
しい時間だ。
今日は、ビデオカメラを持ってこなかった。いつもなら、最初から最後まで何一つ逃
さないぞ。
と撮るんだけど、今日は楽しむことにした。でも、一応デジカメだけは持ってきた。
早速、新聞屋からもらったただ券を渡してゲートをくぐると、そこはパラダイスだ。
なんとも、気持ちがいい。ただ、少しどうしても臭いが気になるがすぐになれた。
まあ、動物にもよるが。
ゲートをくぐるとカメラマンが写真を撮っている。3人ともこれ以上無いという表情
で
ピースをした。しかし、買わない。
正面のフラミンゴがきれいだ。思わずラスベガスを思い出す。やっぱ、実物はキレイ
だ。
北極グマはでかいなあ。ペンギンっておいしそうだなあ。とか思いながら結構うろつ
いた。
「パパは、大きなオサルさんで、ママは日本ザルで、私はミーアキャットね。」
なんで、俺がオランウータンなんだ。と思った時に家内がつぶやいた。
「ねえ、どうして人間って、こんなに種類が少ないのかしら?オサルの種類ってこん
なに多いのに!」
「それは、人間って高等動物だからさ」
というだけで、その場は済んでしまった。
さあ、御弁当だ。カニさんウィンナーは娘に全部取られて、一つも食えなかった。
ああ、ブロッコリーがおしかった。少し、ビールも飲んで!
いくら酔っても帰りも電車だ。もう少し飲もう。
それにしても、動物園なんて、ママと付き合ってた頃だから、何年もきてないな。
アレ?、ママときたっけ。前のオンナ?
これ以上考えるのは止めよう。もし口でも滑ったら大変だ。今度はハンドバッグじゃ
すまないだろう。
帰る頃には、すっかり酔いも覚めていたが、電車なので最後にもう1本飲んでしまっ
た。
それにしても、気持ちが良かった。丁度夕焼けが窓越しに見えてだんだんと暗くなっ
てくる。
窓の下の道路は相変わらずひどい渋滞だ。
晩御飯は、駅の前の居酒屋に入った。
「へい、らっしゃい。毎度。今日は家族ずれかい。」
いつも通っている店なので顔が利く。また、ここで飲んでしまった。
さすがに、ママとこうして居酒屋に来るのは久しぶりだ。思わず、
いろいろな店に行った話になってしまった。しかし、深入りは禁物だ。
もし、口が滑れば、今度は腕時計じゃすまないだろう。
さすがに、今日はよく飲んだ。久しぶりに充実した休みだった。
結局、かなり飲んでしまった。何とか家に帰るまでは覚えているが
玄関からベッドまでの記憶がまるでない。それでもちゃんと
パジャマに着替えている。下着もだ。ママかな?
結局、撮ったデジカメの映像は、パソコンにまだ転送していない。
購入した当初はすぐに転送して見た物だ。それが最近はだんだんとその期間が長く
なってきた。
結局3日くらいは過ぎたと思う。
「ねえ、ママ動物園のお写真まだあ。」
ある程度、ママも使えるので、ママが、パソコンにとりこんだ。
「わあ、ゾウさんも、キリンさんも写ってるね。」
「パパ、真っ赤なお顔してるね。オサルさんみたいだね。」
本当に、そうね、マントヒヒみたい。そう言えば、みんなをサルに当てはめていた
ね。
私が、日本ザルか、まあマシね。ワオキツネザルとか、メガネサルとかいわれなくて
よかった。
それにしても、猿の仲間もいっぱいいるのね。
「じゃあ、ママは晩御飯の支度があるのでもうおしまいね」
素直に、電源を落とした。
翌日、また同じように写真を見たいと言い出した。
かってに触るとパパに怒られるので、ママにつけてもらった。
しかし、ママは洗濯とかで忙しくて、なかなかパソコンをつけてくれない。
少しは、触れる。電源を入れるくらいまでは出来る。
マウスをいじっているうちに、だんだんとおかしくなってきた。
どうやら、写真をテキストエディタで開いたようだった。
「わーん、ママ壊れちゃった。」
ベランダからママが、慌てて飛んできた。
「えー、ママも分からない。パパが帰ってきるまでこのままね」
よく、ママも使うが、分からなくなったら、そのままにしておくようにパパに言われ
ていた。
「ただいまー」
パパが帰ってきた。早速、パソコンのことを話すと、
「分かった。後で見るから、先にメシ」
ビールを飲んで、風呂に入り、またビールを飲んでメシを食って夕刊を読んでいる時
に
ママから、パソコンおかしくなったのよ。
と言われて、そうだ、そうだと。見に行った。
「別に大丈夫、写真を見たかったのか。オレも見よう。」
ファイルを閉じようとすると、ママが
「あれ、何かメッセージみたいね!」
「はあ?そういえば、そんな感じに見えるな。まあ、たまたまだよ。」
写真のJPEGファイルもまあ言えば、文字の羅列だ。0から255までの数字が並んで
いるに過ぎない。
まあ、エディタによれば、16ビット単位で扱う物や、漢字コードなども考慮する物が
あるが。
1行毎に飛ばして、読んでいくと、明らかにメッセージだ。
「ジンルイはこれがすべてでナイ」と確かに読める。
まあ、ある程度、無理をすればこう読める。
そう言えば、依然まだITバブルの頃、画像ファイルに暗号を埋め込むというのがあっ
たなあ。
ストックオプションとかでかなり儲けたんだろうか?
それとも、その前にITバブルは崩壊したんだろうか?
「パパかっこいい。ここはこう読めるぞ」
「全然、つながっていないわよ。」
「それじゃ、私は。ママはセカイでいちばんビジン。まあ正直ね」
あきれてしまうぞ。
「まあ、いいじゃん、オレ写真の方が見たいよ。」
こうして見ても、やっぱママはキレイだなあ。昔、初めて会った時も、本当にかわい
いと言うか
そんな感じだったけど、今は、こう、本当にキレイになったなあという感じだなあ。
「ねえ、私の写真も見てよ!」
「うん、かわいいねえ。あれ、こんなに毛深かったっけ?」
「それは、おサルさんでしょ!パパのいじわる!」
とか、言いながら、写真を見ていった。
一巡した頃に、もう少し飲みたくなってしまった。
冷蔵庫からもう一本取り出して、もう一度、動物園の写真をゆっくりと見てみる。
キリンやカバ、ミーアキャット、マングースなど。以前のフィルムならまず撮らない
写真も結構ある。
結局、その日だけで100枚ほど撮っていた。居酒屋の写真もある。
まあ、それでも、テレビ局や新聞社に出せるようなスクープ写真は1枚も無かった
が。
ソファーに寝転んで、ゆっりとテレビをみる。しかし、丁度季節代わりのこの季節
あまり面白い番組はない、ニュースも、既にインターネットで知っている。
夕刊の写真も、どこかで見ているので昨日の新聞かと思ってしまう。
結局テレビはチャンネルをゴニョゴニョいじくりまわし、適当に止めた。
NHK教育なんて久しぶりに見るなあ。と言う感じで軽いノリで見ていたのに
結局、いつのまにかすっかりのめり込んでしまった。
最初の番組は世界各地の映像とそこに住む方々の生活だ。
北半球や南半球、どんなところにも人間は居るんだなあと思いつつ
アジア系も世界各地にいるなあと思いながらエスキモーを見ていた。
そして肌の色も色々とある。よくもまあ、たったこれだけの理由で
紛争とか起きた物だなあ。もっと色々あったらどうだろう。
白、黒、黄色のほかに緑や青、シマウマ色、いっそのことカメレオンや
たこのように背景に合わせるようなことが出来たら面白いだろうな。
番組とはかけ離れて想像は膨らむ。
「パパ何ニヤニヤしているの?」
ママにそう言われて始めて現実に戻った。
今度は歴史の時間だ。結局これも見入ってしまった。
遮光器土偶や銅鐸、これらは発掘はされたが一体何に使われたのか分からない。
宇宙人が飛来してきたのをたまたま見ていた、当時の人間が土偶を作成して
銅鐸は使っていた部族が全滅したので、以来何も残っていない。まあこんなところだ
ろう。
また冷蔵庫から1本取り出した。
そして、次は宇宙の話題だ。
がっかりした無いようだった。昔から宇宙人は絶対に居ると信じていた。
神社にいって拝む時も
「もし宇宙人が攻めてきても私は絶対に連れ去らないで下さい。」
と最後に冗談で加えていた。何を御願いしたかと聞かれても
必ずこう答えるようにしている。
結局、宇宙は広すぎるのでたとえ宇宙人が
どこかに存在したとしても、地球にはこれないだろうという物だった。
ドレイク方程式など出されるとさすがに説得力がある。
その後は、経済の話なので眠ることにした。
数日後、思わず口が滑ってしまった。
部下には、私は卒業以来この会社に居ることになっている。
それが、思わず、前の会社では...と言ってしまった。
しかし、そこで慌てててはいけない。
そう、前の会社ではカッパと一緒に働いていた。
薄暗い工場のラインで一緒の班だった。というとやけに受けて
何とかばれなくて済んだ。ヤレヤレ。
家に帰ると、子供がクイズを出してくれた。
「象はエレファンと、トラはタイガー、ではカッパは?」
阪神タイガースと関係あるのかと聞いてみると全然関係ない。
ママもニヤニヤ笑っている。
「じゃあ、ウサギはなんだ。」
と聞くと、ラビットという答えが返ってくる。
全然分からない。
5分ほどうなった。それでも分からない。
仕方無しに、レインコートと答えると、それが答えだった。
思わず、なんだ。と思ってしまった。しかし早速明日会社で
使ってみようと思った。
その後に、またカッパが出たなあと思いながら飯を食った。
今夜はお寿司で、当然、きゅうりを巻いた物もある。
まあ、同じ日によく重なるなあ。
今夜は、仕事を持ちかえったのでコーヒーを飲むことにした。
食事の終わったテーブルの上で、コーヒーを飲みながら書類を
作成する。
思っていたよりも簡単に済んでしまった。かなり遅くまでなるつもりだった。
特に何もすることはないし、目はさえてしまうし、ママは寝ちゃったし。
起こしてまで遊んでも、楽しめないし。
まあ、仕方がない。寝るとするか!
案の定、寝ることは出来なかった。ヒツジを数えようとするが
いつのまにかカッパに変わってしまった。困った物だ。
うっすらと壁掛け時計が時を刻むが一向に眠くならない。
そう言えば、カッパって、一体、何なんだろう、人間なんだろうか?
そういや、人魚も居るよなあ。かなり昔から各地に伝わっているから
実在したんだろうか。
そうだなあ、確かに、存在するかも知れないよな。
銅鐸を使っていた部族が突然居なくなって、記録が何も残っていない。
やはりカッパっていたんだろうか。
あっ、そう言えば動物園での写真に何かメッセージがあったような。
まあ、偶然だろうが。。。そう考えるのも悪くないな。
なんか、面白くなってきた。
確かに、カッパや人魚は実在した。さらに妖精も添うだろう。
やたらと小さい人間だ。猿だってそうだ。大きいのや小さいのがある。
さすがに、猿魚は居ないだろうが、ひょっとしたら居たかも知れないよな。
そう考えながらも、意識は遠のき、いつのまにか深い睡眠に入った。
まるで、宝石屋が値段が高くなるまでずっとダイヤモンドをため込んでいたものを
一辺にひっくり返したかのような明るさだった。
今まで使ったことのない、脳の一部がみょうに躍動しているのが分かる。
まるで、自分が自分でないかのようだ。幽体離脱とは少し異なる。
しかし、それとは明らかに異なる感覚で自分を見ている。
人類が硫化水素の中で動くシアノバクテリアだった頃や、カンブリア紀のピカイア
だった頃。
ジュラ紀を経て哺乳類全盛の頃を見ている。映画のワンシーンでは無くて、そこに存
在している。
暑くも寒くもなく、痛くもかゆくもない。いい臭いがして、心地よい。かといって
意識もはっきりしている。天国なのかな。そう考えることすらなく、居心地の良い空
間で
時間は流れていく。
生命の進化はドラマのように過ぎていく。海水から淡水への挑戦や魚類が上陸する瞬
間や、
恐竜が鳥類に進化していく様もはっきり見える。もうこの瞬間の出来事がその後の
我々のすべてを
決定していた。面白い出来事もあった。鯨が海に帰る瞬間もあった。最大の哺乳類が
海に戻る。
この瞬間は、ちょっとショッキングだった。
もともと、大型の哺乳類だったが、細工によって鯨が出現した。
今から、その真実を御見せいたします。どこからともなく聞こえてくる声は
聞こえているが、耳からではない。もっと心の奥に響く感じがする。
「ああ、久しぶりだな。人間と話すのは、どうだ。少しはサルよりマシになったか
い。」
失礼な奴だなあ、人間とサルとを比べるなよ。そう思いながら、話を聞いた。
「見たところ、実験は成功したようだねえ。しかしまだ完璧とはいかないようだ。次
は何で試すのだろう。」
一体、どういう事だろう。まさか、人間はサルから進化したんじゃなく、サルを改造
して作ったのか?
「鯨さん、あなたも改造されたのですか?」
「私は、改造というより、少し細工されただけだよ。まあ、君たちへの実験みたいな
ものかなあ。」
大きな鯨が、海に深く深く潜って行った。冷たい冷たい暗いくらい海に潜って行っ
た。
一緒に引き釣りこまれれそうになった。
そこで、目が覚めた。それにしても後味の悪い夢だった。
いつものように、眠気眼で、新聞を読み、トーストを食って
電車で会社に向かう。
一体、何だったんだろう。さすがに、今日は脳裏から消えることはなかった。
駅までの道のりや、改札を過ぎてから電車を待つまで、
そして、電車に乗ってからも、あまりパッとはしなかった。
電車の中には色々と居る。込んでいるのに足を組んでいるおっさんや、
化粧をしているOL、ケータイで話をしているおばはんもいる。
まだ、通学の時間ではないけど、もう少し後の時間だと悲惨らしい。
こういうのを見ていると、本当にヒトが最終的な進化の形なのかなあ
と思ってしまう。
まあ、それでも会社に着いて、同僚や部下、上司と話をしたり
製品の試作品を見に行ったりしているうちに夢は完全に脳裏から消えた。
昼にメシを食いに行っても、ゴルフや野球の話で盛り上がり
午後も製品の検討会でバタバタと過ぎて行った。
ようやく、日もどっぷりと暮れて、そろそろ帰宅することになった。
いつもと同じように電車で帰宅をする。
何気無しに窓の外の景色を見ていると窓ガラス越しに写った
車内の景色の中に見覚えのある顔があった。
中学校の時の同級生だった。
「あの、こんばんは」
不安そうに声を掛けた。もし、間違いだったら恥ずかしい。
「はい、何ですか!」
と、言ったとたんに気がついた。
後は、お決まりのシーンだ。
彼女は、近くに住んでいて、駅も隣で子供の歳も近かった。
結婚しても職場に残り働いている。
まあ、何か良く分からないけど研究所で色々と研究していることは
分かった。今日は、そのまま別れた。
メールアドレスを聞いたのでまた、連絡することにした。
帰ってからは、ちゃんと中学の同級生に会ったことをママに話した。
もし、何度か会っているうちに仲が良くなって、そんな時に
誰かに見られでもしたら大変なので今のうちに話しておこう。
まあ、そんな世間にあるような事にはならないだろうけど。
浮気だと思われたら、指輪なんかじゃすまないだろうなあ。
翌日、またまた偶然同じ電車だった。
今日は少し時間があるようなので、軽く飲み屋に入った。
といっても一杯引っかける。まあ、それにしても要らんことをベラベラとしゃべって
しまう。
「おまえ中学の時ぶさかったのに、すっかりキレイになったな。」
「あなたは、昔からカッコ良かったけど、今も素敵ね。」
さすがに、そんな言葉を耳にすると、胸があつくなる。
もちろん、彼女はただからかっているだけだが。
いつ進学して、どのように結婚してなどの話の後は、
まあ、どうしても結局は、仕事の話になってしまう。
いまだに、良く分からないが、どうもDNAとかなんか
そんな医薬関係の仕事をしているらしい。
全く畑違いのことなのでちんぷんかんぷんだ。
そして、あの質問をしてみた。
「サルとか人間以外の生き物って色々いるけど、なぜ人間は種類が少ないんだ?」
「人間もいろいろ要るじゃない、カッコイイ人、ぶさいくな人とか!」
「いやそうじゃなくて、サルなんて30cmくらいのから2mくらいまで」
「ああ、そういう事」
笑いながら彼女は、ばっかみたいという顔でこちらの顔を見ていた。
その時に、これからはあまり他人にこんな事を話すのは止めようと思った。
友達をなくしたくないから。
「そういわれればそうね。水掻きのついた人間なんてカッパくらいだものね」
また、カッパかよ。と思いつつ、分かってくれてうれしかった。
しかし、この話題は出さなかったほうが良かった。
折角、良いムードでほろ酔い気分で家まで送って行こうか。という
雰囲気になったけど、彼女の勤勉さが災いして
真剣にその事を考え出した。
「うーん」と唸って、あまり会話が弾まない。
しまったな。
それからしばらくは帰りの電車で会うことはなかった。
「ねえ、パパ今度の土曜日何か予定ある?」
「いや、別に!」
「友達が遊びにくるんだけど良いかしら。高校の時の先輩よ」
「オトコか?」
「バーカ、オンナよ、それも飛び切りの上玉よ。楽しみでしょ!」
「別に!」
内心、わくわくした。どんな女性が来るんだろう。たのしみだなあ。
食事の後、ビールを飲みながらふっと、思った。
そうだ、早速メールを打つ。
「今度の土曜日あいていますか?」
すぐに、返事がきた。
「ゴメン!詰まってます」
まあ、良いか。ママの友達がきたら見てからパチンコでもいくか。
ピンポーンとチャイムがなった。
「こんにちはー、おじゃましまーす」
リビングに入ってきた時に、二階から降りてきて挨拶をしようとした。
まあ、驚いた。彼女だった。
ママが驚いた。まさか、中学の時の同級生とは思わなかった。
しかし、一瞬「ヤバイ」と思った。本能的にそう思ってしまったが
冷静に考えてみれば、別に疾しいことは何もしていない。
だから、おとがめなしだ。
結局、話は盛り上がり、彼女の御主人も呼ぶことにした。
1時間ほどで子供も連れて一緒にやってきた。
「どうもすみません、初めてなのにお世話になりまして、これどうぞ」
ビールやら地酒やら色々と持ってきた。
子供も1歳違いなので、仲良く遊んでいる。
彼女の御主人は、同じ会社でやはり、何かを研究している。
研究所では多分、立派な感じだろうけど
お酒を飲んだら、ただのおっさんになった。
まあもちろん、オレもそうだろうけど。
旅行の話など結構盛り上がった。十和田湖や高山など
結構同じところに行っていた。
しかし、彼女の御主人が口を滑らしてしまった。
「奈良は結構楽しかったな」
「私は知らないわよ」
一瞬、空気がとまった。
「修学旅行だったっけ」
とぼけても、バレバレだった。
「まあ、オトコならこういうのは良くありますよ」
といった、オレもバカだった。結局後で
二人とも高い買い物をさせられる羽目になってしまった。
酔いもかなり吹っ飛んだ。
話題も自ずと変わって行く。
「この前のサルとカッパの話ですがね。」
話が、少しずれてんじゃん。
「社内で話すと結構好評でね。いろいろな意見が出ましたよ。」
「いろいろな種族が居たが紛争で絶滅したものや
サルからの突然変異なので、元々種類が少ない。
中には面白おかしく、宇宙人や主の創造節などもね。
しかし、どれも有力ではないし所詮昼の休憩での話題なんで
真面目には取り込んでいないのですが、私は仕事柄
やはり遺伝子にあると思っています。
特に優秀な遺伝子だからこそ種類が少ないんでしょうね。
確かに宇宙人や神様によって創られたのならかなりロマンは
ありますね。しかしあまりにも現実離れしてますよ。」
「夢の中だけど、クジラが話し掛けてきましたよ。」
少しムッとなって言った。
「それは、単に夢なのですよ、まさか神からの預言とでも言うのですか?」
この時、かなりプチって言う感じがした。
折角気分良く喋っているのにぶち壊された。
段々と嫌いになってきた。まあ、それでもママの大事なお客さまなので
平然としておいたが、あまり良い気分ではなかった。
さすがに仕事柄嫌な事があっても顔色一つ変えない自分も凄いと思う。
その後も、結局酒盛りは続いた。
やはり女性が二人も居れば場は盛り上がる。
結局男性二人組みはべろんべろんに酔っ払ってしまった。
彼女の旦那は夢を見ることになる。
まだ硫化水素の中で動くシアノバクテリアだった頃や、カンブリア紀のピカイアだっ
た頃。
ジュラ紀を経て哺乳類全盛の頃を見ている。
「ああ、久しぶりだな。人間と話すのは、どうだ。少しはサルよりマシになったか
い。」
「あなた様は誰ですか?見たところ鯨のようにも見えますが」
オトコがそうしゃべると。
「そう。君たちの先輩だよ。」
まさか、そう思ったとたんに返事が返ってきた。
「いや、君たちの前に、まず私たち鯨が高度な頭脳を持ったんだよ。その時のサルな
んて今と同じように
とてもじゃないさ。まだ、君たちが知らないことが、生命史にはたくさん出てくる
よ。自分たちの知識に
満足してはいけないよ。まだ、ほんの少ししか知らないんだから」