ヌルハチの基本戦術


 今回は、清王朝建国の英雄、太祖ヌルハチ(1559〜1626)の慣用した基本戦術を資料より抽出し、紹介致します。
 ヌルハチとは、中国最後の王朝「清」の基礎を築いた一世の英傑であり、当時の大陸の覇者「明」王朝を敵として連戦連勝。正に名将と呼ぶに相応しい人物でした。
彼の輝かしい戦歴には、特筆すべき事柄が幾つもありますが、この節には、その中から、1618年の明に対する宣戦布告の際に諸将に語ったところのものを掲げます。

「太平の道では正直を尊ぶが、戦の道では謀計を用いなければならない。身を労せず、兵を苦しめない賢い巧みな心を尊ぶ。

 敵兵が少なく、わが兵が多ければ、兵を現さず、窪地や隠れたところに隠して、少しだけ出て敵兵を誘い出しに行け。もし敵兵が誘いにのってくれば、これまさに我らの計に陥ったというべきである。

 逆に敵兵が多く、わが方が少ない兵で遭遇した場合には、それ以上接近させるな。まず後退して、わが主力を探し合流しに来なければならぬ。
 またわが方の主力は小勢のわが兵を探し、敵のいる方へ合流しに行け。かように二、三ヶ所の兵が合流して、しかる後に敵を探せ。
 野で遭遇した敵と戦う道はまさにこれである。

 次に城塁などを攻める際には、もし占領可能な場合には兵を接近させ攻撃させよ。もし占領不可能な場合にはそれ以上接近させるな。攻撃して占領できないで帰るようなことになれば名聞が悪いといって、無理な攻撃をすべきではない。

 我らの兵士を労せずして戦に勝ってこそ、智巧の謀計、まことの大将というべきである。わが兵を苦労させて戦に勝ち得たとて、それは一体何の益があろう。
戦の道では、我らのものを失わずして勝つことができれば、それこそ何物よりも尊い。」