MAKO
夏も終わろうとする頃MAKOとMISUEとオレの三人でMISUEの父親の住む勝浦に行く事に成った。
オレの愛車Zに乗って、助手席にはもちろんMAKOが乗り、後ろにMISUEを乗せて、走った。
でも、何か変な気持ちだ、少し前までは、MISUEの事も好きだったのに、
今は、MAKOがオレの世界のすべてだ。
MISUEにも新しい彼氏が出来たらしくMISUEは何とも思ってないようだ。
オレは救われたような気がする。
MISUEの父親が経営する旅館の一部屋を借してくれ、三人で一週間位過ごした。
海へ行っては、貝殻を拾ったり、沈む夕日をいつまでも三人で見ていた。
空と海が真っ赤に染まりとてもきれいだ。
心が休まりおだやかな気持ちに成れる。
秋風が吹く頃、
MISUEが津田沼の下宿から恵比寿のアパートに引越するそうだ。
MISUEも下宿では自由が無いみたいで窮屈だったのだろう、
その頃MAKOは、ほとんど渋谷の家には帰らず、オレのアパートで暮らしていた。
学校へ行く時も、帰る時も、いつも一緒だった。
学校の帰り食料を買いこみ、一緒に小さな台所で食事を作る。
MAKOが家から持って来た小さなテーブルの上には、料理が並ぶ。
部屋がMAKO好みのカーテンや物が増えていく、MAKOの家の猫まで連れてきていた。
真っ黒な猫で、名前がBIBI、オレにもすぐ頭をこすりつけてきた。
こんな楽しい生活だったが、オレ達には、お金が無く、でもこの生活は続けたかった。
そこで、
仲間の田坂の紹介で有楽町の交通会館の地下にあるゲームセンターでバイトする事にした。
両替をしたり、コインが詰まった時直したり、仕事そのものは簡単だった。
しばらくして、バイトの欠員が出来、MAKOもこのバイトを始めた。
男五人MAKO一人の中で、バイトする事に少し心配だった。
可愛いMAKOに、言い寄る奴が現れないかと、この頃からMAKOが他の男と話しているだけで、
オレはやきもちをやくようになった。
MAKOが好きなのは「SHIMAだから」と言ってくれるけど、
あんまり親しそうに他の男と話していると信じられなくなる。
オレはだんだんと嫉妬深いいやな男に成って行く。
MAKOは「ちょと一人で考えてくる」と言い残し、飛騨の高山に撮影に出かけた。
オレは心配で夜も眠れない。
学校へ行っても何か元気がない。
そんな自分を見てMISUE達も励ましてくれるが、落ちこむ一方だ。
MAKOの存在が余りにも大きい。
1週間位して、MAKOから手紙が来た。
元気で高山の町や白川郷の合掌造りの民家を撮影しているようだ。
「おみやげを買って帰るから待っててね」と言って来た。
オレにやっと光りが見え始めた。
早く帰ってきて抱きしめたかった。
数日が過ぎ、オレのアパートのドアのノックの音がする。
MAKOが帰って来たのだ。
手には、おみやげの木彫りの杓を持って立っていた。
ちょと会っていなかったのに、オレには何年も会っていないように感じた。
またこれから、MAKOとの生活が始まる。
MAKOを束縛しないでやって行けるだろうか。
でも明日が来て全て変わって行く恐怖感、オレはどおすれば良いのか分からない。
経済力も無いし、MAKOをしっかり受け止める物が何も無い。
早く学校を卒業して、一人前にならなくてはと思う。
その頃、仲間だった黒川が学校を辞めて行った。
オレに、三脚と露出計をくれ「もお写真辞める」と言って田舎に帰って行った。
家の仏壇屋を継ぐらしい。
黒川は同じ広島出身で気が合っていたのに残念だ。
まだ一年も経たないのに、結論を出すなんてと思った。
オレは東京で頑張るカメラマンに成るんだ。
MAKOもそばにいるし、頑張れるような気がする。
二人でバイトをしていたので段段と余裕が出来てくる。
目的を決め貯金もした。
新宿の丸井でベッドも買った。二人で選んだベッド。
MAKOの誕生日には新宿へ行き、茶のチェック模様のロングコートも買った。
MAKOはそのコートがお気に入りでいつも着ている。
冬休みに成り、MAKOと二人で広島まで色んな所を回りながら帰る事にした。
Zに毛布や食料を積み出発、
大阪から西には、まだ行った事が無いので楽しみにしているMAKO。
お金を節約する為、寝る所は決って、ドライブインの駐車場や道路沿いの空き地で寝る。
外は寒そうだったが、Zの中は二人抱き合って寝るので寒くは無かった。
MAKOは以前から京都の町が好きで「住みたい」とよく言ってた。
琵琶湖を回り、京都の町を撮影しながら旅を続ける。
いよいよ広島、オレの両親と初めて会うMAKO。
まだ二十歳にも成っていなかったし、学生の身なので、
口には出さなかったが、オレの気持ちの中で一緒に成りたいと思っていた。
MAKOもまだやりたい事がいっぱいあるし、どんな気持ちで、福山まで来たのか、
分からないが、あの時は今が良ければ良いと思っていた。
ずっと先の事など考えていなかった。
ただ写真が上手に成って、カメラマンに成りたいだけだった。
二日ほど福山にいて、昔一緒に三原山に行った黒川を訪ねる為、Zを走らせる。
そこには、
あんなに情熱的に写真の事を語っていた黒川はいなかった。
毎日朝が来れば起き、仕事をし、また明日が来る、そんな普通の男に成っていた。
大人に成る事は、普通に成る事なのだろうか。
「まあお前達は頑張れよ」と途中まで送ってくれた。
オレ達の撮影旅行は何だか湿っぽく成ったが、
空から降って来る雪がまた二人を夢の世界へ導く。
雪の世界を撮る為、帰りは、長野の方に回る事にした。
東京に来て一年が過ぎ、二年生に成った頃、写真の勉強に成ると思い、
今まで行っていた、ゲームセンターのバイトを辞め、
六本木にあるアートセンタースダジオでバイトしだす。
給料は少なかったが、毎日写真関係の人達と接する事が出来充実していた。
しかし、
撮影が延びると夜遅く成って行く、MAKOと会う時間も少なく成って行く、
このままで良いのだろうか。
ここで働く仲間は、この仕事を踏み台にして、もっと良い条件が有れば辞めて行く。
そんな時、オレにも、大倉舜二の助手に成らないかと言う話が舞い込む。
早速今まで撮った写真を持って、会いに行く事にする。
会って、オレの写真を見るなりいきなり言った、
「お前なんか写真辞めた方が良いんじゃないか」と大倉舜二の目は厳しかった。
オレは打ちのめされた。
こんな挫折は初めてである。
もおアートセンターにも帰れない。
そんな中オレの二十歳の誕生日がやって来た。
MAKOが久しぶりにオレのアパートに来てくれた。

二十歳の誕生日

"酒  タバコ  おんな"  
 解禁おめでとう
もう すでに全てを経験ずみかな・・・・
20才といっても 昨日 今日のちがいだけで、
これといった 特別の感情は ないかも知れないけど、
一つのくぎりとして これからの、
人生計画でも 考えてみれば それだけでも
20才の誕生日というものの 有意義である役目
を はたせるのではないかと思う。
SHIMAには 色々なことを考えてほしい。
たとえばのお話しだけど 失恋をして悩むのは、
たしかに苦しいし こんなに苦しいのなら恋など、
しなければ よかったと思うだろう。
しかし 空白の人生よりは たいくつな人生よりは
自分の生きた 足跡として そのことは深く心に
きざまれるのではないかと思う
言い変えてもうならば それは 一生の宝だと思う
そうゆう 意味での宝を多く残すことを
             SHIMAに期待する
             20才おめでとう
      
               MAKO
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