| MAKOとの別れ |
| MAKOの誕生日の日 オレは手製のMAKOの肖像画を持って荻窪のMAKOのアパートを訪ねる事にした。 MAKOの喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。 MAKOの部屋には、灯かりが付いていた。 MAKOは部屋に居るようだ。 ドアをノックする、中から笑い声がしていたが、・・・・・。 部屋が急に静まり返る、部屋に居るのにMAKOはなかなか出て来ようとしない。 しばらくして、ドアが開きオレは驚いた。 そこには、MAKOでは無く、以前会った事のある、MISUEの兄がMAKOをかばうように、 オレの前に立ちふさがった。 何かとんでもない所に来てしまった感じだ。 ましてMISUEの兄は、オレがMAKOにやったTシャツまで着ているではないか。 体の力が抜けて行くのを感じる、これは悪夢なのか。 MAKOは奥の方から、オレにわびるような目で、悲しそうに「さょうなら」を言うような目で、 ただうつ向いているだけ、 そんなMAKOを見た時、あの眼差しを見た瞬間、MAKOはこの男とオレの全く知らない、 二人だけの世界を作っている事を知る。 この男に立ち向かって行っても、MAKOがオレの所に戻って来ない事を直感した。 オレはMAKOに対しても、この男に対しても、何も言えない。 言えば、ますます自分が惨めになって行くだけだった。 この場からいち早く居なくなる事が、自分に残された、たった一つの取るべき道だった。 MAKOがオレを裏切り、すでに新しいMAKOの人生を始めている。 オレがそこに入る余地は無かった。 信じていたMAKOに裏切られた悲しさと、大好きだったMAKOが他の男へ行った悔しさで、 涙が止まらない。 悲しみが込み上げて、涙が止まらない。、 今までの想い出だけが脳裏に焼き付き、MAKOと過ごした事が激しく崩れ去って行く。 周りが何も見えない、ただ一点を見てぼんやり光るオレの居場所求める。 もおどうでもいいのさ つまらぬ事など考えないで これからの道を歩くんだ それがもっとも肝心さ 変わる変わる目の前が 変わってしまっておしまいさ 長い夜が終わって また明日が来る 果てしない道は続くんだ 何も無かったかのように、時は残酷に刻む。 これからまた振り出しに戻る、あの初めて東京に来た時だって一人だったのだから、 きっと、MAKOが居なくても、やって行けると自分に言い聞かし、・・・・・・・ 新しい社会人の第一歩。 スーツを着て、どこから見てもサラリーマンそんな自分に成って行く。 学生の時には、考えられなかった事だ。 気ままに生きていた自分からは、いつかは、決別しなくては成らなかったが、こんなに早く、 やって来るとは、思わなかった。 通勤電車に揺られて、改札口から吐き出されてくる人込みの中に、いつのまにか自分を見た。 仕事にも慣れ、段段とカメラを持たして貰えるように成り、 今日は、初めてのフライト。 航空写真は、天気が重要で、フライトの前の準備が大変だ。 地図に目的地、ルート、撮影の面積、色んな事をパイロットと打ち合わせして飛び出す。 オレは初めての飛行機に興奮気味。 調布の飛行場には、朝8時頃着いた、天気は快晴で最高の撮影日より、 いよいよ先輩カメラマンと一緒にフライト。 オレ達を乗せたセスナーは、ゆっくりと、滑走路の端に着く、 パイロットが管制塔からフライトの許可を貰う、 セスナーは段段と速度を上げスロットルを全開する、するとオレの体はふわっと体重が無くなったように、 空に浮く、下を見ると、家や車が小さく成って行く、下界の幹線道路は何処も渋滞しているのに、 この広い空は、真っ青に澄み何一つさえぎる物も無い、最高の気分だ。 オレ達は、富士山の麓の撮影現場をめざした。 撮影現場を探すのは、簡単だった。 飛び立って、すぐ富士山は見えたし、方向さえ間違わねば道路とちがって真っ直ぐ飛べるからだ。 空から見る富士山も山頂に少し雪をかぶり綺麗だ。 仕事を忘れて遊覧飛行しているようだ。 そろそろ目的地、地図とにらみっこしながら探す、どうやらあの青い屋根の工場らしい。 工場の広さによって高度が決る、セスナーは旋廻しながらベストポイントまでもっていく。 パイロットとカメラマンの息が合わないとなかなか撮影出来ない。 撮影の瞬間、飛行機をバンクさす。 オレもいちよう撮って見るが、フレームからはみ出すやら、ブレるやらなかなか難しい。 一人でフライトするにはまだまだだ。 経費の関係でフライトする時は、いつも五六箇所の撮影現場を撮って帰る。 この日も厚木、川崎の工場を撮影して帰った。 撮影は月に、二度程しかなくカメラを持っての仕事が無い時は営業もしなくてはならない。 会社四季報や色んな情報をもとに、電話で営業し、反応があり次第、担当者に面会に行き、 詳しい説明をして仕事を取ってくる。 営業専属の人は、毎日のように、仕事を取ってくるが、オレは、営業には向いて無いみたいで、 なかなか仕事が取れないが、初めて仕事が取れた時は何か違った感激が有った。 入社して半年、 今では、一人でフライトも任されるし、そこそこの仕事も取れるようになった。 そんな落ち着いた時、会社の帰り同僚と赤提灯で焼鳥と酒、益々サラリーマン色に染まって行く。 朝は満員電車に乗り、電車の窓に映る自分の姿、このままで良いのだろうか? 写真の仕事には就けたが、何か大切な物を失ってしまった。 仕事をこなし、帰りには、唯一の楽しみに成った酒を飲み。 ほろ酔い気分でアパートに帰っても、虚しく、過去の想い出だけが向えてくれるだけ。 こんな時、彼女でも居れば゜こんな気持ちには、成らないのだろうが。 今もってMAKOの事をひきずって生きている、女々しい自分にいやになる。 MAKOは今頃どこでどうしているだろうか? 元気にしているだろうか? この東京の何処かに居ると思うけど、電車に乗っても、町を歩いても、遭うのは、 すれちがいの風。 オレの心はこのまま沈んだままなのか? そんな時、風の便りで故郷の福山に居るHIROKOが結婚したらしいと聞く、 オレは、これで完全に、恋した全ての女から見放されてしまった。 一人取り残されたような気持ちに成る。 仕事をどんなに頑張っても、何か満たされない。 目的を失ってしまったようだ。 どんどん出口の無い暗闇に入って行く感じだ。 MAKOと付き合っている時は、当たり前の事が、別れて初めて一番大切だった事が分かる。 毎日生活する上で欠かす事の出来ない、 生きる喜びであり、自分一人ではどうにも出来ない気持ち、 これから長い人生で何を支えに、生きていけば良いのか、そんな事を考えると疲れてしまった。 |
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