my root(book)!
心にとどまった私的名作批評です。
今年初めての雪の日
棒野なな恵
「優しい言葉なんて信じないけれど、優しい陽射しなら信じられる
1秒後に曇ってしまうかもしれないけれど。」
こんな冒頭で始まる短編漫画です。
家庭に問題を持った寮にすむ高校生のある特別な2日間が舞台です。
世間のマイノリティーを主人公にする、棒野作品の中でも、
特に光を放つ珠玉の一作です。
僕がこの作品のいわゆるマイノリティーに属するからかもしれませんが、
この人の作品は、透き通った閑寂から、ふと一瞬の温かさを感じます。私的に。
時折挿入される主人公の閉ざされた感情
そして物語最後のシーン。その一連の流れが心の真相に突き刺さり、
そして心が震えました。
卒業式
棒野なな恵
またまた棒野作品。これもまた短編です。
「たとえばこんな気持ちはどうしよう。
「あいつらに幸せな死に方なんてさせたくない。」
「さあ 逃げようか。ううん逃げない。追いかけるんだ。
きらいなものはぜったい嫌い 夢を見るのも はしりながら
「カメレオンの本当の色は何色だろう」
「きっと冷たい雨がふる これからもずっと ふり続ける
でも私は平気 傘がなくても これは春の雨だ
芽ぶきのための雨だ」
そもそも幸せとは。「嫌いなものはぜったい嫌い」(卒業式より)
棒野作品は世間に言われる「一般的な」幸せに対して
「どうしてそれを受け入れるの?」
と、真っ向から疑問を投げかけます。
自立とは?幸せとは?家庭とは?
感覚的マイノリティを扱った短編集。そんな素朴な疑問を
読んでる人々に真っ向から問いかけます。
個はもはやこの世に問いかけねばならぬくらい
柔らかい耳打ちに埋没してしまったんでしょうか。
自分が自分である意味を読みながら考えてしまいます。
挿入される独特のフレーズが作品をしっかりと完成しています。
オデットオディール(Papa told me16巻より)
棒野なな恵
最後に紹介する棒野作品は、もっとも有名なPapa told meからの一遍です。
「幸せでも不幸でもそんなのどうでもいい。私はバレリーナになりたいの。」
「きれいなものにあこがれてレッスンを続けてきたのに、
今は汚い水の中につかかってるみたいで」
家庭も才能も自分より優れている友達を嫉妬する自分の心を消すために
偶然見かけた「赤いトゥシューズ」にまつわるお話です。
伝説の赤いトゥシューズを履くと一生踊りつづける。
短い話ですが、始まりのフレーズと、最後のフレーズ、
作品としての完成度は計り知れないものがあります。
涙がでました。
Black Jack
手塚治虫
「冷徹な目の中に宿る手塚治虫の熱き心の伝導」(文庫本1巻キャッチコピー)
この作品はあまりにも有名でたくさんの方が知っていると思います。
しかし、あくまで娯楽適要素だった当時の漫画の中でドキュメント的で
世の中の病理に間接的に訴えかけた、命懸けの名作です。
現代の医学界、「誰でも金を払えば医者になれる」(文庫本10巻より)
そんな医学界に真っ向から医者の、そして人の倫理を問う作品です。
僕はあくまで主人公ブラックジャックを善ではなく屈折したマイノリティとして
描かれていることで、逆にこの作品の人間臭さをリアルに醸し出している気がします。
とくに「ふたりのピノコ」と言う話の少女が亡くなる前のせりふ
「こんなにお空はきれいなのに・・・・」
公害で逆に夕焼けがきれいに見えてしまう、
逆に少女は公害病で死ぬ前にその夕
焼けを美しいと思って亡くなっていく・・
この漫画を知って、読めたことが大きな財産になりました。