★タイトル未定★

第壱話 紳士

 「嫌な天気だ・・・・」
部屋の窓から顔を出し、ふっと呟く。
 
いつものように午前中のうちはワイドショーを見て情報収集。
職業柄、世事に疎いでは済まされないのだ。
どんなにくだらない芸能ネタでも仕事のタネだ。見逃すわけにはいかない。
昼にはコンビニへ昼食の買出し兼雑誌の立ち読み旅行。
店員の視線が痛い。でも気にしない。仕事だから。
夜の出勤までの時間は易学の勉強。
とどのつまり、私の職業は占い師なのだ。
一度は普通の就職をした。でも何かが違っていた。
その仕事に何かを望んでいたわけではないが、なぜだか自分が居た堪れなくなって、
「辞めます。」
 
昔から勘は人一倍はたらくほうだった。
だからといって占い師になろうというのはかなり安直な考えではあると思うが、結構この仕事は気にいっている。
そんな私が受けた今朝の第一印象が「嫌な」感じ。
淀んだ雲が空一面に広がっている。
こんな天気生きているうちに何度でも見ることはあるだろう。でも今日は何かが違って思えた。
「雨・・・・降るんだろうな・・・・・・。」
案の定、仕事に出る夜の六時にはかなりの雨が降っていた。
町で行きかう人たちは皆足早に歩いて行く。
「普通はそうだよなぁ・・・・。」
雨の中わざわざ手相を見てもらおうなんて考えるわけがない。
仮に私が皆の立場であっても、こんな日は家路を急ぐに決まっている。
私が仕事場である商店街に着いたころにはもう人影はまばらだった。
二時間待ったが客は来ない。
「今日は早めに切り上げよう。」
そう思った矢先だった。
「蟹沢さん・・・・ですか?」
いつのまにか目の前にはいまどき見慣れない初老の紳士が立っていた。
「ええ、そうですが・・・・?あなたは?」
彼は私の質問に答える前に自分の用件を言ってきた。
「実は占っていただきたい人がおりまして・・・・・。」
雨はまだ変わらぬ様子で降り続いていた・・・・・・。

第弐話 仕事

「えぇ・・・・、それはいいんですがね・・・・。」
私がそう言いかけると彼も自分の非礼に気づいたのか、
それまで私に向けていた視線を急にそらし、
少しうつむきかげんで話しを続けた。
「私は山根羊一と申します。占っていただきたいのはある女性でして・・・・。」
詫びはなかった。だがその程度のことで話の腰を折るのも大の大人のすることではない。
こちらはこちらで気にしていないふりをする。
「その女性はどういう方なのですか?」
「名前は谷川双葉様といいまして、私が仕えております牛島和幸様の婚約者になります。」
ちょっとした疑問が湧いた。
「何でその婚約者を占うんですか?」
「はい。私、牛島家には先代からお仕えしておりまして、先代が亡き後も和幸様に何かあってはならないと今までお世話してまいりました。それが先代の遺志であり私に託した遺言だったからです。」
彼は軽く咳払いをし呼吸を整える。
「結婚といえば人生の大事でございます。それこそ間違いのタネになってはなりません。ですから・・・・、彼女との結婚を和幸様に思いとどめさせてもらいたいのです。」
「?じゃあ、この婚約を破談にしたいからその・・・双葉さん・・・でしたか?その方を占って欲しいと?」
彼は静かにうなずく。
「そんなに変わった方なのですか?」
「いえ、そういうわけではないんですが・・・・・。いろいろと・・・・・。」
わけありのようだ。
本来隠し事する相手の頼みは聞かないのだが、なぜかこの依頼を私は受けてしまった。
それは報酬の良さもあったが、それ以外にその婚約者の女性自体に私自身が興味を持ってしまったせいなのかもしれない。
明日屋敷に伺うと彼に約束すると、住所を書いた紙を私に手渡しそそくさと帰っていった。
 
その後、数時間粘っていたが客はまったくこなかった。
「あの予感はなんだったのだろう?まさかあの依頼が・・・・・・?」
多少の不安を感じつつ、私は帰り支度をはじめた。 

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