新規テキスト文書(2)


夏の残暑がかすかに尾を引く。
そんな蒸し暑い昼下がり・・・。

僕はのらくらと学校からふけて家に帰る道を歩いていた。
「いったいいつまであついんだ?チキショウめ」
悪態が自然に出る程度の暑さの中を学生服を汗でじっとりとさせながら
商店街にさしかかっていく。
店の前を通るたびに冷気が心地よい。
この道も、後四時間もたてば学生であふれてしまうのだが
いまは僕一人だ。
そう思うとずいぶん得をした気分になった。

ゲームセンターで遊んでいると最近見かけるようになった
不良グループに声をかけられた。
「よう、こんな時間からゲーセンなんていいご身分じゃねぇか」
こういう輩はいつの時代にも確実にいるようだ。
頭が悪いと思う。
実に不愉快だ。
「なぁ、実は俺たち」
4人グループが代わる代わる声をかけてくる。
まさにコントのようだ。
「小銭がなくて困ってるんだ」
「よかったら」相手の手が肩に回る。
僕は少し無視を決め込む形で ゲームをプレイしていた。
「少し貸してくれないかなぁ、お金。絶対返すからさぁ」
にやにやといやらしい顔色をニキビ面に浮かべ、彼らは
僕に金銭の要求を始めた。
「ああ、構わないよ。いくらほしい?」余裕がある素振りを見せた。
やや意外だったのか、相手の声が変わった。
「有り金全部でいいよ」
僕は懐に手を差し込み「いいよ、もって行っても」
浅はかな不良軍団ABCDが僕の財布の中をのぞいて歓喜の声を上げている
「ひゃほーやっったぜ!ヒヒヒヒ」「なめんなよボケ!」
意味不明の単語をまき散らしながら遠ざかる彼らの背中が遠ざかっていく。

GAME−OVER
画面に真っ赤な文字で表示が出たときにポケットを探ると
もう小銭、いや財布はなかった。
「そっか、渡しちゃったんだっけな」
ちょうどそのころ。

「さっきのヤツ、どっかでみたことなかったか?」
少年から奪った財布をひらひらさせながら口々に言う。
4人のうち一人が、新しいターゲットを濁った瞳にとらえた。
「おい、あいつ、いいんじゃねぇ?」
「へぇ、いいんじゃない?」
「やっちゃおうか」
「やっちゃおうよ」
「今日は大漁だなぁ、キヒヒ」
四人は相手を逃がさないように円で囲み、
包囲をじわじわと
狭めていく。蹴りや殴打をくりだす内に相手はすっかり
血まみれになってしまった。「う、ぐ・・・お金ならあげますからぁ
もう殴らないでくださぁい。ぐすっ、お願いですぅ」
人相不明の青年は不良グループに懇願した。
青年の差し出した財布を受け取ると、新しい蹴りが与えられた。
「これは、かつ上げ兼いじめだ」
「がっ、私がなにをしたっていうんですかぁ!・・・う、うげっ
助けて、助けてくださいぃぃぃぃ」
少年は青年の髪をつかむとこうささやいた。「なぁ」
「いじめられてるヤツ全部にそうされる理由があると思うか?」
・・・・・見る見るうちに青年の顔色が青ざめていく。
「そんなもんねぇよ・・・・」
四方向から次々に倒れている青年に蹴りが放たれる。
商店街の人間はみて見ぬ振り。黙殺を続けている。

少年はサディスティックな感情におぼれていた。
だから気がつかなかった。
さっき自分たちがゲームセンターで相手にした少年のことを。
不意に肩をつかまれ、少年は強引に反対側を向かされ、仲間たちも
何事かとその方向を振り向いた。
草加部蓮時はホルスターから「さっきはどうも。」45口径の
カスタムガンを抜き出した。
「これは・・・さっきのおまけさ」言い終わる前に拳銃から炎に
つつまれた極上の暴力が紡ぎ出された。
断末魔の悲鳴?そんな陳腐な物は何もない。ただただ轟音と
血煙だけが上がっていく。

その行為が一通り終わると草加部少年は何もなかったかのように
硝煙を引く拳銃を懐深く納めた。
なんだか白けた気分になったのでその日はそのまま家に帰った。

陽はわずかに傾きつつ、強い日差しと蒸し暑さを提供していた。
まだまだ暑い、夏の日の物語。
その一コマ。


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