天使の歌声

筆者:sakuU 編集:秋月 優菜 サポート:coffin


【第二部:再会、そして、恋】

家でボーとしている自分。
「はー…もう一度彼女に会ってちゃんとお礼言いたいな。
うーん、考えていてもどうしようもない、何処か走りに行こう」
彼女の事が忘れられないでいる。
居ても立ってもいられずにバイクを走らせる。
「うーんやっぱりバイクは気持ち良いなー」
見晴らしのいい土手でバイクを休ませ草の上に寝転がり空を見ていた。
「ねえ…ねえってば」
何処からか声が聞こえた。
しかし僕は、まさか自分が話しかけられてるなんて思わないまま思い目をつぶり無視していた。
「ねえ」
その時、心地いい風と共に良い香りがしてふと目を開けた。
「うわーーー」
僕は堪らず草の坂道を転げ落ちた。
「だ、大丈夫?」
女の人が近寄って来る。
「いたたたたた」
僕は頭を打ったがそれどころじゃなくて、近寄って来た人の顔を見た。
「あ、あぁ、あ…」
僕は口が開いたままだった。
なんと僕の前に立って居たのは、彼女だった。
「え、なんで、君がここにいるの?」
疑問に思い質問した。
「私、この近くに住んでるの。
あなたこそここで何してんの?」
今度は彼女の方から質問された。
「え、僕はただ暇だったからバイクに乗って着いた所がここだっただけだけど」
自分でも何で今自分がここに居るのかなんて分かるわけもない。
彼女の事が気になって家を飛び出してきた、っていう事ははずかしくて言えない。
理由は何にせよ今ここに僕がいるのは、偶然だ。
「そうなんだ、私も気がついたらここに向かっていたの」
彼女も何故ここに居るのか悩んでいた。
「あ、あのー僕、佐藤慎一っていいます。
もし良かったら名前、教えてくれませんか?」
空を眺めている彼女に話かけた。
「え、あ、ごめん、私は橘 麻衣、マイって読んで」
やっと彼女の名前がわかったこの時、普段とは違う、不思議な嬉しさを感じたのを憶えている。
「マイは、いつも何してんの?」
僕は彼女のことが知りたくて尋ねる。
「ん、私?…私ねーフリータで、暇なときはこうやってバイクで走ってるの。
慎一くんは何してんの?」
「僕も同じような感じ、この前仕事クビになって、今何していいか分からないから、いつも走ってるって感じかな」
ちょっとヘコミながら言った。
「そうなんだ、慎一くんも大変なんだね!
そうだ、これから何処か一緒に走らない?」
彼女からの思いもよらない言葉に僕は驚いた。
「え、うんいいよ一緒に走ろう」
僕が返事をすると彼女は自分のバイクにまたがった。
400ccのレーサーレプリカで、凄く速そうなマシンに思える。
女の子が乗るには少し大きすぎるような気もするけど、彼女の姿はとても格好よく見えた。
「じゃあ、私の後ろ着いてきて、いいところ知ってるから」
僕も、自分のバイクにまたがりバイクを走らせた。
マイのバイクは想像通りとても早かった。
恐れる事など何もない、と言った感じ。
まるで風と一つになっている、みたいな。
僕はその跡を追いかけるで一杯一杯だった。
一時間ぐらい走っただろうか、やっとマイのバイクが止まった。
マイがバイクから降りてボーっと立っている。
僕も、バイクから降りてマイの隣に立ってマイが見ている方向を見た。
そこは、山の崖で雲にも手を伸ばせば届くような感じだった。
「ねえ慎一くん、私ね、ここに来ると空に飛んでるみたいな感じがしてすごく気持ちいいの。
空に吸い込まれて、その向こう側に行けちゃうようで、この場所、好きなの」
マイは目をつぶり両手を広げていた。
僕も、いつのまにか両手を広げていた。
「ごめんね、こんな遠い場所まで一緒に来てもらっちゃって」
「ううん、そんなことないよ、僕もここにこられてとてもよかった。
初めて来たのに前にも来たことがあるような感じがするんだ」
僕も、なんだかマイが何でこの場所が好きなのかなんとなくわかった。
「う〜ん、すっきりした、じゃあ帰ろっか」
そして僕に一言そう告げるとバイクに向かい歩いていった。
「じゃあ、家まで送ろうか?」
「えっ」
「い、いや、別に、やらしいことなんか考えていないよ。
いやー今から向こうに帰ると結構遅くなるからさー、心配だよ」
自分でもなにを言ってるのか分からなくなった、が今の本当の気持ちを言った。
「うん、家まで送って」
マイは、笑顔で応えてくれた。
僕はその笑顔を見てこう思った、もしマイと付き合えるなら、その笑顔を一生守り続けてみせると。
「ねえ、早く帰ろうよーーー」
マイが手を振りながら僕を呼んだ。
「じゃあ、帰ろうか?」
そう言うと二人でバイクにまたがってもと来た道を帰った。
バイクに乗って1時間30分後マイの家に着いた。
そこは、高級な一戸建てだった。
僕の家からバイクで15分ぐらいの所にあった。
「慎一くん、今日は一日ありがとね、最後は家まで送ってもらっちゃって」
ちょっと照れながら僕にお礼を言ってくれた。
「ううん、気にしなくてもいいよ、僕も今日一日とても楽しかったし。
ここなら僕の家あまり遠くないし。
僕の方こそ今日は一日ありがとう」
僕からのお礼を言うとマイは玄関に向かって歩いて行った。
「そうだ慎一くん、明日も空いてる?」
マイは玄関に向かう足を止めて言った。
「うん、明日も空いてるよ!」
そう言うとマイはもう一度僕の所まで走って来た。
「明日、私の家に来て!
待ってるから。
じゃあね」
そしてそう告げて家に入って行った。
僕は、先ほどの彼女の言葉が頭をグルグル回っていた。
僕の頭の中「私の家に来て、待ってるから、待ってるから…」
「やったーーー!!」
僕は、今が夜なんて事も気にせずに叫んでいた。
うれしい気持ちを押さえて僕も家に帰ったが、もちろん一睡も出来なかった。
目をボーっとさせながら朝風呂に入って仕度をして、彼女の家に向かう。

【第三部へ続く…】